Artec 3D社製品を用いたスキャンで21世紀の技術を職人のボート修理に導入

著 Paul Hanaphy

3Dスキャナ

課題：業界の競合よりも速く改修や修理部品をモデル化したり、CNC加工を行ったり、設置するにあたって、それに求められる速度と精度で複雑なボートのジオメトリをキャプチャすること。

ソリューション：Artec Leo、Artec Ray II、Artec Studio、Quicksurface

結果：Blaupause Bootsbau社は、かつてはボートのコックピットとデッキのサイズを測るのに6時間もかかっていましたが、今ではわずか2時間でこのプロセスを完了できるようになりました。デジタルデザインを採用することで、CAD主導の製造を使用してカスタムのインテリアやエクステリアをコスト効率よく作成することも容易になりました。

Artec 3Dを選ぶべき理由： Artec Leoは細部までを正確にキャプチャすることができ、Ray IIはオープンスペースのキャプチャが可能です。Artec Studioはスキャン結果データをシームレスにメッシュ化させ、比類のない効率的なワークフローを実現します。

クライアントのボート上でArtec Ray IIが3Dスキャンを行う様子。画像提供：Blaupause Bootsbau

ひと昔前まで、ボート製造業は工学と職人技の両方がなければなりたたないと言われたり、芸術の一形態と考えられていたこともありましたが、今ではそれは全く変わりました。板の上に建造されたり、スキンオンフレーム技法で縫い合わされたりして、伝統的な金具や仕上げを使用して工芸品が修復される小さな木造船の時代は、もう終わったのです。

競争が激しい現代のメンテナンス、修理、オーバーホール（MRO）の分野では、コストと利益が重要となります。これにより、より強く、より安価なグラスファイバーを使用した遊覧船がますます増え、サービスプロバイダーは効率性を最優先に追求するようになりました。

品質の向上とリードタイムの短縮を図るため、自動化もいまや必須となっています。しかし、リフィットや修理の作業には、複雑でキャプチャしにくい表面の正確な測定が必要であり、それによって交換するか、またはそれに基づいて構築することができます。利益と完璧さのバランスをとることは決して簡単なことではありませんが、Blaupause Bootsbau社はそれを成し遂げたようです。

迅速かつ正確な改修を基本とするArtec LeoとArtec Ray IIを使用したスキャンにより、このMROの比較的新しい参入者はリードタイムを最大3分の2削減し、業界の多くのライバルに先んじることができました。

「ビッグボーイズ」に対抗するためのアップグレード

2021年にCEOのマーティン・ディットマー氏がBlaupause Bootsbauを共同設立して以来、同社の遊覧船の設置、オーバーホール、および天候による損傷の修理サービスは市場を席巻しています。

しかし、この成功を達成させるために準備が常に整っていたわけではありません。彼は最初に会社の本社を取得した際に、本社に存在していた旧式の設備を近代化する必要があることに気が付きました。曲面のキャプチャは、彼の別のビジネスであるSurface & Deck Solutionsでもすでに課題となっていましたが、デジタル製造は論理的でコスト効率の高いソリューションであると考えられていました。

Artec Ray IIで3Dスキャンされているボートのデッキ。画像提供：Blaupause Bootsbau

当初、マーティン氏は単一ポイントのレーザーを使用してヨットの測定を近代化しようとしました。しかし、それにはデータをポイントごとにキャプチャして位置合わせさせる必要があり、時間と労力を要しました。それはひとつのプロジェクトあたり最大6時間のリードタイムに及ぶため、彼はサードパーティのスキャナにアップグレードしました。しかし、これも完全な3Dデータキャプチャのためのスピード、精度、および柔軟性を兼ね備えていませんでした。

適切なツールを見つけるためにリサーチを行った結果、マーティン氏は「大きな会社と競うなら、大きな武器が必要だ」という結論に至ったのでした。そこで、彼はArtecアンバサダーであるKLIBのCEO、Knut Lehmann（クヌート・レーマン）氏に連絡し、Artec LeoとArtec Ray IIのデモを受けた後、そのテクノロジーを最大限に活用するためのトレーニングを受けました。

マーティン氏は最初にそれらを見た瞬間から、これが彼のワークフローを加速させる潜在能力を持っていると確信しました。iPhoneの操作のようにクリックするだけでスキャンができるLeoの機能のおかげで、Leoは明らかに使いやすくなりましたが、Ray IIのシームレスなセットアップと範囲により、高速エリアキャプチャのアイデアが現実のものとなりました。デバイスを取得して以来、これは迅速で非常に正確な結果を伴うプロジェクトで証明されています。

クライアントのボートの内部が3Dスキャンの準備をしている様子(参照球付き)。画像提供：Blaupause Bootsbau

「以前は、デッキや小さなコックピットを測るのに5～ 6時間かかっていました。しかしLeoを使えば、たった10分でスキャンができます」と、これは大きな時間的利点だとマーティン氏は説明します。「デジタルツインを使用すると、非常に精密で正確な技術であるCNC加工もはるかに使いやすくなります」

「その一方で、伝統的な職人技が失われつつあるのは悲しいことです。しかし他方では、コストが上昇しているため、より効率的に取り組む必要があり、そのためには測定が鍵となります」

高速デジタルリノベーション

マーティン氏が必要なデータをすべてキャプチャしたら、次はそれを迅速に詳細な3Dメッシュに変換できるかが重要です。彼はArtec Studioがこの目的を達成するための「非常に直感的な」手段を提供していると言います。

Artec Studioには多くのリバースエンジニアリング用の必須ツールが含まれていますが、マーティン氏はメッシュデータを低コストのスキャンからCADのソフトウェアであるQuicksurfaceにエクスポートすることを好みます。そこでは、プライミティブを抽出することができ、これらはカスタマイズやCNC機械加工のための2Dテンプレートとして使用できます。彼がこのワークフローを導入したのはつい最近の話ですが、すでに彼のビジネスに変革をもたらしていることが実証されていると言います。

たとえば、嵐「バベット」がバルト海の船舶に甚大な被害をもたらしたとき、Blaupause Bootsbauは支援を行うことができました。マーティン氏によると、損傷を受けていない側（左舷でも右舷でも）のArtec 3D社製スキャンを使用することで、欠けている部分を埋めて船体修理の全体像を把握できる「絆創膏」のような役割を果たすテンプレートを作成することができたと言います。

Artec 3D社製スキャナでキャプチャされた、ボートのモデル。画像提供：Blaupause Bootsbau

「ボートの内装は立体的で、鋭い角ではなく、常に曲線や「ボール」の形をしています。「すべてのものに形があるため、測定が難しい場合があります」とマーティン氏は付け加えます。「しかし今では、電気設備からヨットの内装の設置まで、遊覧船の全面改修が可能になりました」

「Artec 3D社製品を使用したスキャンで、何かを作る前に50～100 km離れた場所からデータをキャプチャして確認することができます。これにより、問題を発見し、顧客に当社の信頼性を伝えることができます」

次のトピック：クラシックボートのスキャン？

昨年の冬季在庫で約250隻の小型ボートを保有していたBlaupause Bootsbauのビジネスが活況を呈する中、マーティン氏は現在、さらに高速で高精度の3Dデータキャプチャへの拡張を検討しています。

BlaupauseのMRO施設内でのRay IIを使用した3Dスキャン。画像提供：Blaupause Bootsbau

同社が改修する古いヨットの多くには、小さな製造中止部品が使われています。Leoはこれらをデジタル化できますが、マーティン氏は、リバースエンジニアリング用に0.05mmの精度で細かい部分までキャプチャできる、より適した高精度デバイスのArtec Spider IIを使用してこれらをキャプチャし始めるかもしれないと言います。

とはいえ、一部のプロジェクトによっては多少の誤差が許容されるものもあるため、迅速にデジタル化することが重要なので「測定値が1ミリずれていても気にしません」と彼は言います。この点において、LeoとRay IIは比類のない速度と精度を提供し、ほとんどのMROキャプチャのニーズに対応しています。

「Artec Leoはほぼすべての用途に適していますから、私たちは毎日それを使用しています」とマーティン氏は結論付けました。「これは非常に強力なツールで、デジタルツインの作成という最大の問題を解決する支援をしました。デジタル測定は、これから私たちの日常のルーティンに取り入れられていくにつれて、リバースエンジニアリングにとってますます興味深いものになるでしょう」