3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec 3Dを用いたベンガルールの古代碑石のデジタル化

課題:あるIT専門業者はインドのベンガルール中に散在する古代碑石の豊かな歴史に巡り合い、碑石についての情報の時代を遡っての調査、及び更なる情報の収集、そして、今日、そして未来のための安全な形でのデジタル化の方法について深く追求することにした。

ソリューションArtec Space Spider、及びArtec Studio

結果:原寸での保存を行う計画や、書籍の出版に加え、歴史的な古代の石のデジタル記録は、破壊や損傷を受けた遺品も発生させない形で、そのサーフェスをすべて高解像度でキャプチャして、その3Dモデルを学生や研究者に利用可能としながら、現在も続いている。

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更に近くで見てみよう:石はそれぞれ、見事にきめ細かい文字で覆われているが、現在ではArtec Space Spiderによりキャプチャ済みである

すべては二〇十七年に、研究施設Mythic Societyの名誉事業総括責任者であるウダヤ・クマール(Udaya Kumar P.L.)が偶然、近所で古い石板を見つけたことから始まった。好奇心をそそられ、ウダヤは更に調べることにしたが、そのことが吉と出た。発見した石板は八世紀に製作された遺品であり、他にもたくさん発見された。ベンガルールの都市の至る所に百七十五もの碑文の入った石があり、その多くは千年以上の古さであった。

「自宅から徒歩圏内に千三百年前の碑文を発見したり、それに触れたりして鳥肌が立った」と、ウダヤは語る。「これ程近くに、このような素晴らしいものが存在するとは思わなかったよ! 私の友達やベンガルールの人々すべてにも、同じ興奮を味わってもらいたい」

歴史的、考古学的団体は文献を基にした研究により重点を置いており、このような碑石の保護は積極的に行っていない状態であることから、ウダヤはこの難題に取り組むことにした。

「石板上の碑文は、発見された場所での当時の重要な出来事の記録された原本である」と、ウダヤは説明する。例を挙げると、村や寺の建設、統治されていた時期、月食の記録などの記念すべき出来事である。このような碑石は元来、千年も前から街々を通して記録され、刻まれた都市の歴史である。

「このような石板は、周辺の住民がその碑文の意味を理解せず、その重要性を把握しなかったため放棄され、置き去りにされた」と、ウダヤは話す。「この嘆かわしい事態を見て、私は進み出て、ベンガルール市の一世紀も前の碑石の保護に一役買うことにした」

「簡単に入手できる正確な情報が無いため、人々に自身の地域、及びこのような場所や石板の保護の重要性について更に詳しくなるよう、学んでもらうことが非常に大事であると考えている。しかも、こういった碑文は何世紀もの間の言語の進化過程についての情報源ともなる」

同じ考えを持つ愛好家同士で組織を設立することにより、成長を続け、未だ活動的な遺産探究者のコミュニティが生まれたが、皆の頭の中には一つの使命があった。それは、都市内に点在する歴史的奇跡の発見、デジタル化、そして保存であった。

目にするものを保存する

Schneider社やGeneral Electric社などの有名企業で三十年もの勤務経験のあるIT専門家のウダヤにとって、趣味で始めたことと自身の職業を繋ぐ橋を掛けることは、それほど難しくはなかった。

「歴史家は過去百五十年もの間、このような碑文の刻まれた石板を探索し、雑誌に記録している」と、ウダヤは語る。「自分の任務は、そのような場所を再訪問し、物理的保護とデジタル的保存を確実に行うことである」

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都市のあらゆる場所での歴史の一部の探索

ウダヤとその仲間の歴史的遺物発掘隊は、明確に設定された目的の下で活動する必要があった。ベンガルール市内で見つかった百七十五の碑文の他にも、その周辺の農村地域で千五百程度の碑文が発見された。ノミと金槌で刻まれたこれらの碑文は、その製作時期が五世紀から十六世紀までに遡る切断されて塗装済みのスラブ、巨礫岩、岩壁や彫刻などのあらゆる石の表面にも見受けられた。続く次の作業は、発見したものをすべてキャプチャすることであった。

ウダヤは、「明確だったことは、石の表面は雨や太陽、腐食などの自然要因により風化するため、物理的に保存するだけでは不十分であるという点だ」と語る。その上、碑文がどれだけ上手く保存されたとしても、事故による損傷の危険性は常に生じる。この段階から、ウダヤとそのチームは古代遺産のデジタル複製を行うことを検討し始めた。

石は通常、気候に耐える中、ひどい状態で発見される。摩滅したものもあれば、取り扱いの良くなかったものもあり、ベンガルール市の急速な都市化の下では、破損される恐れはどうしても避けて通れない。

フォトグラメトリや反射率変換イメージングなどの手法を試してみたが、コストも手頃で利用しやすいものの適切ではなく、ジオメトリ的にも質が悪かった。そこで、業務用の携帯式スキャナを今回の作業に使えるかどうかも試してみた。3Dスキャナはどれも同様な解像度のスキャンデータを提供したが、マーカーの使用が必要であることでリアルな形での保存という目的を果たせなくなった」と語る。

インドのArtec 3D社ゴールド認定パートナーであるAltem Technologies社は、自身の専門知識をウダヤに喜んで提供した。Altem 社販売員のLakshmikantha Sharmaは、「主な目的は、碑文の文字をできるだけ詳細にキャプチャすることであった。例えば、キャプチャすべき外観には、〇.三ミリメートル以下の小さい文字も含まれていた」と話す。

多くの石には、碑文の他にも細かい描画も彫刻されていた。この戦闘へ突入する男が描かれたものが、その例だ。

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Artec Space Spiderにより、微細なディテールもすべてキャプチャされた

文化遺産保全においては特に、百パーセント非接触の3Dスキャニングが必須となる。博物館と同様に、壊れやすくかけがえのない歴史的遺産は触れられることを避け、鑑賞のみにすることが最も望ましい。同時に、成果品に求める品質にも妥協を許してはならない。このような状況こそが、Artec 3D社製スキャナの機能が期待に沿う場面である。この場合では、作業に最適なツールとして選ばれたのはArtec Space Spiderであった。

前述の遺品に見られるような、特に複雑なジオメトリや細かいエッジをキャプチャするために開発されたArtec Space Spiderのブルーライトテクノロジーなら、極めて精度が高く美しい色彩を持つ、驚くほど正確な3Dモデルの完成につながる。〇.〇五ミリメートルの精度により、この機器が見落とすような箇所はない。

「Space Spiderのスキャンしたデータは非常に鮮明で、彫刻家によるノミの深さ程度の下彫りの跡でさえも、データ上に見つけることもできるんだよ!」と、ウダヤは話す。

過去へと身を投じる

このような魅力的な歴史的芸術品を永遠のものとするために、Artec Space Spiderを用いて迅速に石をキャプチャし、Artec Studioにより処理を行うという作業方法が一旦決まれば、次の工程ははっきりしていた。ウダヤたちが、発見した石を一つ一つスキャンすることだ。

「まず、3Dスキャニングのチームはその実行のために、事前にスキャニングを行う場所を見極め、電力供給源の利用可能性を記録することになった」と、Sharmaは回顧する。

「スキャニングは陰になっている開けた土地から、太陽光の下、小低木があちらこちらに生えている森林地帯などのあらゆる屋外環境で行われた。ほとんどの場合、電力供給が最低限しかないか、全く無い状況であった」

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電力供給源は限られていることが多かったが、必要とされたのは信頼のおけるSpace Spiderのみだったのである!

一般的な電力供給源とはかけ離れた、扱いにくいか、若しくは不安定な状況が多かったにもかかわらず、スキャナの使い易さがチームの進行に役立った。「我々のチーム全員にとってSpace Spiderはとても便利で、非常に使い易い。この使い易さにより、貴重な石のキャプチャ作業も一気に完了した。我々は石の表面を何メーターも、途中で滞ったり中断したりせずに、連続でスキャンすることができた」と、ウダヤは語る。

Artec Studioでの処理も、楽な作業となった。「このソフトウェアは、大規模な点群データを持つプロジェクトを扱う際に非常に効果的だ」と、ウダヤは語る。

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どんな天候であれ、Space Spiderでのスキャニングは続く!

「十五~三十ギガバイトもの非常に大きなデータセットは、Artec Studio上で『位置合わせ』オプションを使用した上で位置合わせされる。Artec Studioは『グローバル位置合わせ』実行中に大規模なデータを完璧な形で取り扱い、スキャンされたデータセットの間に位置的な違いや差異があれば、再位置合わせを行う」と、Sharmaは話す。「そして、デジタル化用に極めて正確なモデルを製作するため、『シャープメッシュ化』を活用して、〇.一~〇.二ミリメートルの解像度を持つ3Dモデルが完成する」

必須課題である保存

これまでで、五百もの石がスキャンされた。この先の計画はどうだろうか? 「ベンガルール市内及び周辺で確認された、最低千五百の碑文と素晴らしい石をスキャンすることだ。その多くが、急速な都市化の影響で危機に直面している」と、ウダヤは説明する。

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3Dモデルは、鑑賞や使用を希望する全ての人々が自由に利用できるようになっている

担当チームは石を保存により適した場所に移動させ、損傷したものを修復する計画も立てているが、まず、デジタル化を行うことが先決である。

モデルが縮小されたサイズで3D印刷され、銅製の鋳物の複製に役立てるよう、ひな型として使用された事例もある。完成したレプリカは、八世紀に製作された最古の碑文を収納する、構造の複雑な石製の保護施設を建立するための資金集めに利用された。

このデータも、研究者やウィキメディア・コモンズ、学校などに無料で共有される。最終的に必要となるのは、情報の利用できる度合い、何世代も先への歴史の保存、そして、容易に利用や参照の可能な、正確な視覚資源である。

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自分たちの都市の歴史を学ぶ生徒。画像は、Altem Tech社より提供。

重要性は明確となり、手法も確立されたが、このような歴史的石板を保護する唯一の方法とは? 「3Dスキャニングによってである」と、Sharmaは語る。「我々のチームの方は、将来の世代のために石板をできる限り詳細にデジタル化する作業を継続していく」

「碑文の刻まれた石の内容は学術論文に掲載されているのかもしれないが、そういった石の存在する場所やその周辺の住民のほとんどが、何が刻まれていたのかも、その価値についても知らなかった」と、ウダヤは語る。

この任務を現在、学校の教室でも実施しているのも、この理由からである。

「我々は、人々にこういった碑石について知ってもらうため、認識を高める催しを学校や大学、地域内の集会で行っている」と、ウダヤは、既に『歴史』は過去から自分たちの手中に取り戻され、今日の教室で広まっていき、未来のために安全に保管されていることを我々に示しながら話す。

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