3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec 3D社製品を用いたスキャンで新たな展望を開拓:8メートルの防潮堤の検査

課題:稼働中の高架下で5 kmの防潮堤の一部を正確にキャプチャすること。猛スピードで通過する車のようにせわしなく突っ走るGoMeasure3Dチームは、この巨大な構造物の損傷を定量的に検査する方法を模索していました。

ソリューション:Artec Leo、Artec Ray II、Artec Studio、SOLIDWORKS、Geomagic Design X、Geomagic Control X

結果:変形の発見や腐食の測定、そして壁のメンテナンスの必要性の評価に最適な、非常に詳細なデジタル化が実現しました。Artec Studioのソフトウェアのおかげで、スキャンから検査可能なメッシュに変換するまでのプロセスは、従来2日間かかっていたところ、わずか90分で完了しました。

Artec 3Dを選ぶべき理由: Artec Ray IIの内蔵ディスプレイとGPSのトラッキングにより、大規模なキャプチャの課題も日常業務となりえます。より細かい詳細を検査するために、0.1mm精度を提供するLeoのスキャンをその後実行することで、複数のデータセットを非常にリアルな3Dビジュアライゼーションに統合することも可能です。

Richmond Floodwall

バージニア州リッチモンド市の防潮堤付近にあるGoMeasure3Dが利用する3D スキャナのRay II。画像提供:GoMeasure3D

1972年6月19日、リッチモンド市のウォーターフロントを永遠に変えた出来事が起こりました。ハリケーン・アグネスが米国沿岸を襲い始めたとき、その近辺のジェームズ川が堤防を決壊し、市内の町や高速道路、そして鉄道沿線に沿って洪水を引き起こしたのです。

バージニア州だけでも、道路の被害は1,480万ドル(現在の貨幣価値で1億1,000万ドル)に上り、住宅や下水道システム、そしてその他のインフラも修復が必要になりました。さらに、4人が洪水に流され、命を落としてしまいました。しかし、1985年に再び大洪水が発生したことで事態が悪化したため、地元当局はようやく方針を変え、新たな予防措置を導入しました。

その後すぐに、ジェームズ川の北岸と南岸の両方を覆う大規模な防潮堤の建設工事が始まりました。10年後、やっとその防潮堤は完成し、1996年の猛吹雪によって川の水位が6.7メートルにまで上昇しても、この防潮堤はしっかりと立ち続け、それ以降も未だにその高さを保っています。

それでも、この地域は依然として深刻なリスクにさらされており、防潮堤自体も完全には使用されたことがまだありません。では、リッチモンドの23万人の工業都市と、その中にあるかけがえのない植民地時代からの歴史的建造物を守るために、この防潮堤が確実に頑丈であることはどうしたら確認できるのでしょうか?

ここで登場するのが、Artec 3Dのゴールド認定パートナーであるGoMeasure3Dです。新品のArtec Ray IIの3Dスキャナを入手したばかりのこのチームは、すぐにそのテストを行い、ワイヤレス型のArtec Leoと併用して、精密検査に必要なすべてのデータを迅速に取得しました。

Ray II: 3Dスキャンの「飛躍的進歩」

GoMeasure3Dの野心的な3Dスキャン事業は、アプリケーションエンジニアでリッチモンド在住のArt Pekun(アート・ぺクン)氏がRay IIを片手にとあるスキャン現場に向かったことから始まりました。しかし、当時新しいLiDARデバイスをその現場でテストすることに興奮していた彼は、取り組んでいる課題の規模をすぐに把握しました。

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GoMeasure3Dが所有するリッチモンド防潮堤のスキャン データ。画像提供:GoMeasure3D

アート氏は歩道から降りる前に、障壁を見下ろす橋とその周囲の通行量が、GPS追跡の妨害とモーション ブラーの原因となる可能性があることを発見しました。しかもその防潮堤のサイズといったら、それはそれは巨大でした。これほど巨大な防潮堤をたった1回のセッションで複数の角度からキャプチャする上で必要なリアルタイムのフィードバックやスキャン範囲、そしてバッテリーの寿命を提供できるデバイスはそう多くはありません。

しかし、Ray IIを軽量三脚にマウントすると、 アート氏はArtec 3Dのスキャン製品一式にこのデバイスが加わったことが、どれほど価値あることなのかをすぐに理解できました。内蔵ディスプレイとターゲットフリーのトラッキング機能により、このスキャナのセットアップは数秒で完了します。また、デバイスの視覚慣性システム (VIS) により、デバイスが常に現在位置を把握できます。

この場合、VISのおかげで、移動中に位置合わせポイントを作成しながら、防潮堤を9つの異なる角度からデジタル化し、損傷の兆候をすばやく簡単にキャプチャできるようになりました。GoMeasure3DのCOOであるPaul Motley(ポール・モトリー)氏によると、Ray IIは20分間の超高精度なデータキャプチャのプロセスを実現しましたが、これは単に驚異的なだけでなく、従来では不可能だったことです。

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完全な3Dスキャンがわずか数秒で完了することを示すRay IIの内蔵ディスプレイ。画像提供:GoMeasure3D

「Ray IIが登場する前は、おそらくこのような課題は存在していたでしょうが、難易度が非常に高かったため、私たちはこれに取り組もうとすらしなかったでしょう」とポール氏は説明します。「位置合わせのトラッキング機能がなければ、データをどのように統合できたでしょうか? 防潮堤の片側から反対側へ移動するという単純な方法だけでも非常に困難だったでしょうね」

「過去には、私たちはこんなことを試みることなど考えもしなかったでしょう。しかし、Ray IIのすべての高度な機能により、大きな進歩を遂げてきました」

防潮堤の扉の検査では、錆の兆候が明らかな複雑な部分を含んでいたので、アート氏はArtec Leoを導入しました。「ループ」スキャンは両端を合わせるのが困難な場合がありますが、デバイスのテクスチャトラッキング機能が非常に高度であるため、これはまったく問題になりませんでした。

アート氏によると、この高精度のLeoのスキャンをRay IIのデータと統合することで、最も細かいフィーチャーをキャプチャして詳細な分析を行うためのマルチ解像度メッシュを実現できるそうです。たとえば、ドアの密閉性を評価する必要がある場合、これは壁が効果的に機能するか漏れるかの違いになる可能性があるので、詳細なデータが必要になります。

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Artec Studioで初期分析中の防潮堤のドア。画像提供:GoMeasure3D

「Ray II は位置と測定値を取得するのに最適ですが、Leoを使用するとより詳細に検査をして、より詳細な参照フレームを得ることができます」とアート氏は言います。「誰もが、1台のスキャナですべてを実行できることを望んでいます。そんなスキャナは実際には存在しませんがArtec Studioのスマートメッシュ化機能でデータを組み合わせる方法は、他のソフトウェアでは見たことがありません」

リッチモンドの防潮堤の検査

Artec Studioを使用したデータ処理では、まずチームはデータの三角測量から始め、ワンクリックのグローバル位置合わせのアルゴリズムを使用してすべてのスキャンを位置合わせさせました。メッシュを簡素化してサイズを縮小するために、不要なフレームを削除し、メッシュを橋や道路、そして防潮堤自体の3つの層に分割しました。

最適化された後、このメッシュはArtec Studioの品質検査用ツールセットで分析されました。距離マッピングにより、それぞれのフィーチャーを比較して偏差を見つけることが可能になり、平面のフィッティングは平坦度を測定し、表面が密封性を持てるかどうかを分析するのに理想的であることが証明されました。

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Artec Studioで表示されている完全な防潮堤の 3D スキャン。画像提供:GoMeasure3D

それからさらに詳しく調べるために、彼らはそれをGeomagic Design Xに送信しました。このソフトウェアは、スキャンデータからフィーチャベースのCAD モデルを作成するためのツールが豊富に揃ったリバースエンジニアリングソフトウェアです。ポール氏は、そのセグメント化ツールが「複雑な部分を基本的な形状に分解」することで「大幅に時間を節約」できるため、特に便利であることをすぐに発見できたと述べています。

そこから、Design X SOLIDWORKS LiveTransferを使用してSOLIDWORKS にエクスポートすることで、これらすべての形状を使用可能なCADオブジェクトに変換することができました。これにより、すべての作業が転送されるだけでなく、すべてのパラメトリック関係が保持され、元のデータに忠実であることが保証されます。

このメッシュをより詳細に検査または構築できるキャッチ構造に分解した後、Geomagic Control Xに送信しました。そこで、有機的な表面フィッティングなどの偏差分析機能により、GoMeasure3Dチームは、深さや体積、そして材料損失を分析する前に、潜在的な問題となる変形を迅速に特定することができました。

「コンクリート構造の場合、CAD図面とぴったり一致するかどうかは確認できないんです。私たちは侵食や穴あけ、変形などの物理的な損傷を探します」とポール氏は付け加えます。「Control Xに非常にユニークな有機表面フィッティングにより、欠陥の量を見つけ、それを構造的に健全であるかどうかを確認するための基準として使用することができます」

「欠陥の場所を特定したら、特定の領域にクラスターが集中しているかどうかを確認して、必要に応じて「修理が必要です!」と言うだけです」

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Geomagic Control Xで実行されているリッチモンドの防潮堤の偏差解析。画像提供: GoMeasure3D

「非常に簡単」なワークフローの採用

GoMeasure3Dのスキャンから検査までのワークフローにはいくつかのステップが必要ですが、直感的な位置合わせとスキャンからCADへの変換ツール (使い慣れるまで少々練習が必要ですが) を使用すれば、ワークフローは「非常に簡単」になる可能性があるとポール氏は言います。

結局、彼と彼の同僚は、危険なレベルの防潮堤の偏差を発見することはありませんでしたが、それが他の場所でどのように使用できるかを実証しました。実際、彼らのワークフローは、検査や 品質管理およびメンテナンスのための正確で詳細なデータをキャプチャするのに理想的であると考えられています。これには、産業製造、鉱業、航空宇宙などのさまざまな用途が含まれます。

「このワークフローではCADデータは必要ないので、他の多くの土木工学のアプリケーションと相関関係があります」とポール氏は結論付けました。「原子力分野や、コンクリート構造物の健全性をチェックし、長期にわたって監視する必要があるその他の分野では、この技術に対する需要が非常に高まっています。したがって、これらの一見単純なようですが実は非常に複雑な検査には巨大な市場があるのです」

「10~20ミクロンレベルの精度を求める方もいれば、1インチ未満であれば気にしない方もいますが、タービンブレードから防潮堤まで、あらゆるものの検査にはそれと同じ原則が当てはまります」

アート氏は、最終的にこのプロジェクトは、メンテナンスの安全性と効率性を高めるツールとしての最新スキャンの「驚異的能力」を実証していると述べています。また、彼はリッチモンドの防潮堤の維持管理におけるこの技術の重要性を強調するだけでなく、このプロジェクトは複数の業界に応用できるツールとしての可能性を浮き彫りにしていると言います。

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