Artec 3Dスキャニングにより精鋭揃いのレ-シングチームのためにラップタイムのゲインを追い求めるCatesby Project社
課題:世界で最先端とみなされるモータースポーツシリーズで競うために設計された車両用の空力シミュレーションモデルを作成するための、より効率的な手段の特定。
ソリューション:Artec Leo、Artec Ray II、Artec Studio、Geomagic、及びHyperMesh
結果:バイクやフォーミュラカーの極めて詳細な3Dモデルを作成した上で、数値流体力学(CFD)ソフトウェアへ送信することを可能とする工程。送信が完了すれば、エンジニアが空力抵抗を低減し、ラップタイムを抑える形でダウンフォースに対するセットアップの最適化をより高速で行うために役立つシミュレーションを実行するために利用することができる。
なぜ、Artec 3D社なのか:製造業者からの機密のCADデータを手に入れることができない場合、レースカーやバイクの詳細な3Dモデルの作成は通常は不可能となる。しかし、Catesby Projects社は今ではArtec LeoとRay IIを使用することにより、以上のような車両を極めて優れた精度と速さでキャプチャすることができる。
Artec Leoにより公道車の3Dスキャニングを行うCatesby Projectsのエンジニア
モータースポーツの世界では、微細な差が成功と失敗を分ける違いとなることが多い。十分の数秒は信じられないほど短い時間のようだが、トラック一週毎にこの差を対戦相手に付けられると、自分のチームはフィールドで最後尾を走るような事態になってしまう。
では、そのようなカーレースにおける装備はラップタイムの短縮方法にどのように影響するのだろうか。それは、主に今回言及するシリーズの種類に拠って決まってくる。F1では、それぞれのチームは自身のレーシングカーを最初から設計製造する。この選手権用の競合モデルは、他のチームから閃きを得て製作されるものも確かにあるが、シーズン中はチーム同士が満足のいくラップタイムを得るために競う『開発レース』の中で制作されることになる。
この過程では、実際にはF1コンストラクターがレーシングカーを更に効率よく滑走させることができるよう、フロアやサイドポンツーン、フロントウイング、リアウイングやその他の空力パーツの形状を調整する。
しかし、ワンメイクシリーズの場合の作業は若干異なる。このような選手権は全く同一の形状を持つ車両で競われるため、ゲインを得ることはより難しくなり、チームのエンジニアは開発レースに携わる代わりに、セットアップの最適化に焦点を合わす。
Artec Leoによる3Dスキャニング中のバイク
しかし、シミュレーション作業の問題点は対象となる3Dモデルの精度の高さに依存しているところであり、製造業者はその基となる貴重なCADモデルの配布を渋ることも多い。Catesby Projects社が力になるのは、このような状況である。 このイギリスを拠点とする空力、及びシミュレーションの専門業者は、ワンメイク、マルチメイクシリーズ両方の参加チームのために以上のような種類の車両のスキャンや調査研究に利用できる3Dモデルの作成を行っている。
「シリーズに参入するために車両を購入した人がいると仮定しよう」と説明するのは、Catesby Projects社のプロジェクト・マネージャーであるジョン・パットン(Jon Paton)である。「車両の変更や改良は許されていないが、試行錯誤の上で可能な限り最善のセットアップを得たいと考えるだろう」
「当社では車両をスキャンした上でコンピューターによるシミュレーションを行い、空力上起こり得る変化を確認する。その後、フロントウイングの角度の変更や(フロアの角度の)更なる傾斜の特定のサーキットでの有効性を見極める手助けを行う」
「3Dスキャニングを利用できることにより、実際にモデルを作成するためのCADデータを閲覧することが全くできない場合でも、シミュレーション工程を完全な形で、すべて仮想的に行うことができる」
3Dスキャニングの他に「選択肢はない」
更に大規模のエンジニアリングコンサルタントグループ企業であるTotalSim社の一部として機能するCatesby社は、空力開発や検証に役立つ物理的試験やコンピューターによる試験のサービスを提供している。今では、その多くはArtec社による3Dスキャニングにより可能となっているが、このことが全てに当てはまるわけではなかった。
内蔵ディスプレイにキャプチャされたデータが表示される、Artec Leoによる3Dスキャニング
ワンメイク選手権レース用車両の製造業者がCADデータの共有に難色を示すため、パットンはエンジニアには「実質的に選択肢は無く、3Dスキャニングが必要となる」と語る。
実際、パットンの企業の当初の試みは、フォトグラメトリ用キットの使用により全般的な正確さを得た上で、Artec Evaにより細かいディテールを取得するという考えを中心に展開していた。 その後、企業は使用機器を更に高度なArtec LeoやRayへ切り替えるためにArtec社アンバサダーのCentral Scanningと協力し、精度や工程の進行速度を更に向上させた。
「以上の機器一式を利用して、レースカーのスキャンは通常、現地で二、三日の内に完了することができる。車両を分解して、Rayによりおよそ四時間以内ですべての部品をスキャンする」と、パットンは話す。「その後、ダクトをすべてスキャンできるように更に少しずつ分解していき、ホイールを外し、測径器やパッド、その他すべてのものをLeoでスキャンし、最後にすべてを再び組み合わせる」
当初、RayによってCatesby社は長距離において更に精度を上げることに成功し、同社の向上心の拡大に繋がった。同社担当班のヘリコプター全体のスキャンの実現の後押しとなったこともある。しかし、 Rayのより速く、より視野の広い後継機種であるArtec Ray IIを入手してからは、そのワークフローは全く違う次元へと高められた。
自動車のスキャンにおいて残り時間を表示するArtec Ray IIの内蔵ディスプレイ
Catesby社においては、今ではRay IIの利用により更なる速さで車両をスキャンし、続いて多用途でワイヤレスのLeoにより設計上不可欠な箇所のデジタル化を行った上で、互いのスキャナから最高の解像度を持つデータを利用してモデルを構築することができるようになっている。Leoでの3Dスキャニングを同企業に入社した六ヶ月前に初めて体験した準設計エンジニアのトム・パリッシュ(Tom Parrish)によると、機器の使用は非常に簡単であったらしい。
「スキャン当初、とても使いやすく感じたことを覚えている」と、パリッシュは説明する。「非常に利用しやすく、インターフェイスもとても優れている上、失敗する要因も限られている。手始めにソファや椅子を練習でスキャンしてみたが、その内蔵ディスプレイに3Dモデルがリアルタイムで現れるのを最初に見たときは『本当にすごい!』と思った」
Catesby社はアメリカに拠点を置く事務所では比較的安価でコードの必要なスキャナも使用している、とパットンは付け加えるが、Artec Leoはケーブルの不要な柔軟性をもたらすと同時に前者よりも高速に作業ができる、とも語る。
Artec Leoでの非常に詳細なキャプチャを可能とするよう、若干の傾斜を付けて設置されたバイク
「ブラジルやフランス、ドイツへも旅行をするが、その場合はLeoを持って飛行機に乗り、二日間現地でスキャンした後に飛行機で戻るだけで良い」
スキャンデータを基にしたCFDシミュレーション工程
Artec Studioも同じく、Catesby社の3Dスキャニングワークフローの中心を担う。企業はキャプチャ過程が完了すれば、この業界を牽引するソフトウェアを使用してメッシュの位置合わせや修正を行う。パリッシュが特に気に入っているのは付属の位置合わせツールで、『それぞれのデータを一纏めに』できることにより、『ある特定のスキャンデータの一部が欠如していても、他のデータと位置合わせすることによって全てを網羅したモデルを入手できる』。
スキャンデータ処理を自動化したい方向けに、Artec Studioは対象となるデータセットの取り扱いに最適なアルゴリズムを選択することのできる、独自のオートパイロット機能も用意している。ただ、必要であれば設定上で個々に処理することも可能である。
Catesby社の事例においては、その業務には後者のワークフローがより適合することが明らかになった。実際、パリッシュは『異なった設定を試す』ことが可能なことで、『比較的小さめのオブジェクトを正確に位置合わせし、メッシュ化する』方法を特定できると同時に、エクスポートされるファイルのサイズを最小化するために『メッシュのポリゴン数を減少させる』こともできる、と話す。
Artec Studioにより、Catesby社はメッシュを GeomagicやHypermeshのような高度なエンジニアリングプログラムへと転送し、穴埋めなどの更なる洗練のための作業を行った上でCFDに利用可能な3Dモデルを作成する。Patonは業務仲間と共に、CFDシミュレーションを通してチームがレーシングカーの空力抵抗、及びダウンフォースに対処する性能を最適化する支援を行うことができる。
「すべては、レースのエンジニアがレーシングカーの性能を発揮させるためのセットアップを高速化する手助けを行うためだ」と、パットンは説明する。「トラック内で十分な時間があれば実際に試すことができるだろうが、練習用のセッションは限られているため、エンジニアたちはトラックに到着する際には良いスタートを切れる状態にしておきたい、と考えている」
「各々のサーキットは異なるが、当社ではその対処への支援も可能である。ダウンフォースの多いサーキットに対し抵抗の低いサーキットの場合は、シミュレーションツールはセットアップに最適な組み合わせを選択する際に役立つ」
「洗車型スキャニング」の構築
Catesby社は選手権制覇歴のあるレーシングチームと業務を行った経験があるため、同社にはこの先の展望について聞いておいた方が良いだろう。自動車産業においては、パットンは更に効率化された「洗車型スキャニング」ワークフローの作成に的を絞っている。このワークフローでは、単一パスでの車両全体のキャプチャが可能である。
既に、Ray IIへのアップグレードにより、外観部分のデジタル化のリードタイムは半分に低減され、車台やホイールアーチなどの隠れた場所のディテールがより優れた形でキャプチャされた、更に高品質の成果を挙げることが実現しており、その後のLeoによってスキャンされるデータ量もより少なく済んでいる。Ray IIのデータ処理及びメッシュ化は格段に速いため、担当班は今では二日以内にCADモデルを一から仕上げることを目指している。これは、シングルシーターの設置状態の変化をテストの合間に分析するためには十分な速さである。
しかし、企業の興味の対象は車両のみではなく、人体の3Dモデルも作成したいようだ。姉妹企業のVorteq社は以前、レース用バイクの開発に3Dスキャニングを利用していたが、Catesby社の方は現在、地下二.七キロメートルにある試験施設を運営しており、そこで設営されたトンネル内を通過する車両を一台ずつキャプチャするために3Dスキャニングを利用する、という野望を持っている。
Catesby Projects社の試験用トンネル施設を3Dスキャニング中のArtec Ray
その他では、同企業はスポーツ選手をスキャニングする独自の業務も行っており、その中ではオリンピック出場選手と提携し、できる限り体にぴったり合い、かつ空気力学の原理を最大限応用した製品の作成を支援している。その歩みを進めるに当たり、パットンはスキャニングによりモータースポーツでの競合者の分析の可能性への扉が開かれ、自転車競走の世界も『真の意味で速度が増し』ていく中で、Catesby社はこの双方の適用に明るい見通しを持っている、と話す。
パットンは、「自転車競走の世界はスキンスーツであれバイクであれ、ピッタリ合うように仕立てる方向へどんどん動いている。そのため、ジオメトリをできる限り早くキャプチャできるようになれば完璧である」と締めくくる。
「Artec Leoはおそらく、スポーツ選手の備品を個別製作するために我々が発見したソリューションの中で、群を抜いて最高のものだろう」
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