Artec StudioのAIフォトグラメトリ機能を用いてたった数分で修理を行う方法
課題:3Dスキャナに投資することなく、狭くてフリーフォームのジオメトリを持つサーフボードをデジタル化し、ボードの保護力を高めるカスタム仕様のノーズガードを作成すること。
ソリューション:AIフォトグラメトリ機能付きのArtec Studio、Autodesk Fusion 360
結果:改造や修理を行うための画期的なAIを活用したワークフローが出来上がりました。1時間も経たないうちに、完璧にフィットしたノーズガードが装着されたサーフボードは再び波に乗る準備が整いました。
Artec 3Dを選ぶべき理由: Artec Studio 19に新しく搭載されたAIフォトグラメトリ機能は、あらゆる形状やサイズ、または複雑な部分を持つオブジェクトを非常に詳細なモデルに変換し、迅速な設計の反復や3Dプリントを可能にします。
AIフォトグラメトリ機能を使用してキャプチャされ、カスタム仕様で3Dプリントされたサーフボード用ノーズガード
サーフィンは、たとえ困難な実際の海ではなく人工の波に乗る場合でも、非常に過酷なスポーツになり得ます。それは、Artec 3Dの専門家であるミハイル・シュミキン氏が最近得た自らの体験を通して分かったことです。実は彼は、人工的にシミュレートされた激しい波でサーフボードが障壁に放り投げられたことがあります。
この事故のおかげで、彼の大切なボードの上部には大きなへこみができてしまいました。これはサーフィンの世界では特に珍しいことではありませんが、この種の損傷を予防したり修理するのは依然として困難なことです。
汎用タイプのノーズガードを購入することもできますが、それらは必ずしも特定のボードにフィットするとは限りません。修理を行うために、多くのサーファーはエポキシ樹脂を使用して損傷した表面を滑らかにします。しかし、これでは雑な仕上がりになってしまうため、自分のスポーツ用品を大事にしている人々にとっては不快な手法です。
これにより、シュミキン氏は製品ユーザーとして私たち全員が日々直面している問題に直面したのでした。3Dモデルを再設計せずに修正や改善を行うには一体どうすればいいのかという問題です。
その状況で、彼はAIフォトグラメトリならその用途には最適だと気がつきました。Artec Studioの3Dスキャンデータ用ソフトウェアに新しく搭載されたこの画期的な機能を利用すると、スマートフォンなどのあらゆるデバイスで撮影した写真や動画を、驚異的にリアルな3Dモデルに変換できるようになります。
修理のために1分未満でデジタル化
シュミキン氏は自分のサーフボードを修理するために、まずへこんだ先端を360度の角度からiPhoneで動画撮影しましたが、この一連の作業は1分未満で完了しました。そこから3Dモデルを生成するには、このクリップをArtec Studioに送信するだけの簡単な作業でした。
Artec Studioは単なる3Dスキャンのキャプチャや処理用のソフトウェアなだけではなく、強力なアルゴリズム2つを搭載しています。そのひとつは、リアルなオブジェクトの3Dモデリングに向けてAIを活用したもので、もうひとつは広範囲のデジタル化に向けたものです。そのいずれかのアルゴリズムを使用して3Dモデルを作成するには、まず「スパース再構築」を実行して、作業に必要な初期データセットを得る必要があります。
それから「クロッピングボックス」を調整して、必要なデータのみを操作できるようにします。最後に、「高密度再構築」をクリックすると、完全な機能を備えた3Dモデルが生成されます。
高密度再構成を行った後のシュミキン氏のAIフォトグラメトリ機能を適用したモデル
「私のプロジェクトでは、フォトグラメトリ機能によって修理に必要な十分な寸法データが得られました」とシュミキン氏は説明します。「動画の使用は写真を撮るよりはるかに便利でした。動画ならいちいち撮影のためにカメラを持つ手を止めたりする必要がありませんし、対象オブジェクトの周りをただ歩きながら位置を変えるだけで済むからです」
設計の反復のためのフォトグラメトリ
シュミキン氏は3Dモデルの仕上げ作業を終えると、Artec Studioの測定パネルを使用して個々のフィーチャーに寸法値を割り当て、精密に修理を行うことができました。
従来、フォトグラメトリモデルではスケールが把握できないため、それをリバースエンジニアリングなどの分野に適用するのは困難です。しかし、Artec Studioに組み込まれたスケールバーと実際の寸法を併用することで、シュミキン氏はフィーチャーに実際の値を与えることが可能であることを発見しました。
Artec Studioに内臓されている測定ツールがサーフボードの修理に必要なサイズを測るのに使用されている様子
Artec Spider IIのようなハンドヘルド型3Dスキャナを使用すると、最大0.05mmという非常に高い精度でキャプチャができ、真の1対1の3Dモデルを実現できます。しかし、このような使用例では、シュミキン氏は「0.5ミリの誤差など大したことはない」と言います。というのも、彼は「ほぼ正確な」結果を得るために十分な技術的詳細をキャプチャできたからです。
キャプチャしたデータを使用して、彼は現在話題になっている機械工学ソフトウェアのFusion 360を利用し、サーフボードに簡単に取り付けられるカスタム仕様の保護用ノーズガードを設計することができました。
まだまだ可能性を秘めているAIフォトグラメトリ
このデザインを物理的な製品に変えるのは、STLをシュミキン氏が所有するCrealityのデスクトップ型3Dプリンターにエクスポートするのと同じくらい簡単でした。
わずか45分で、彼はボードに完璧にフィットしてボードの保護を支援する物理的なプロトタイプを完成させました。その後、Artec Studio内でさらにアクセサリを追加し、プラットフォームの組み込みツールでプロテクターの外観を変更することができました。
シュミキン氏のお手製ノーズガードで修理されたサーフボード(左)と、従来のエポキシ素材で補修された別のサーフボード(右)
見た目を向上させるための僅かな調整を覗けば、このサーフボード自体はすぐに使用できる状態でした。大切なサーフボードを修理できたシュミキン氏は、AIフォトグラメトリが直感的に使用できるキャプチャ用ソフトウェアの機能のひとつとしてだけでなく、迅速な修理や3Dモデリング、そしてクリエイティブデザインを行えるツールとしても将来性が非常に高いと確信しています。
「AIフォトグラメトリは、修理だけでなくカスタマイズにおいても大きな可能性を秘めています」とシュミキン氏は付け加えます。「これは、自動車のダッシュボードや自転車の改造、あるいはカスタム仕様のスポーツ用具のデザインに関わることができます。最近では、生活のあらゆる分野で正確な3Dモデルの応用が実際に存在します。それは非常に簡単で、プロ仕様のカメラも必要ありません。スマートフォンをお持ちの方なら誰でも試すことができます!」