CADとは何ですか?
コンピュータ支援設計または「CAD(Computer-aided design)」のプログラムは、2Dまたは3Dで製品を設計・編集・分析できるプラットフォームをユーザーに提供します。多くの業界では、数十年前にCADによって設計プロセスがデジタル化され、手作業による製図はもはや古い歴史となりました。しかし、デジタル化されたデザインは非常に確立されてはいますが、その背後にある基礎が必ずしも十分に固められているとは限りません。3Dスキャンなどの高度なテクノロジーもまた、既存の製品を出発点として使用することでゼロからの設計を回避する方法として普及しています。そういった背景をまず理解するために、コンピューター支援設計システムの基本から学んでいきましょう。CADは一体誰によって発明され、どのように機能し、どういった用途に使用されるのでしょうか?また、CADの新たなトレンドについても見ていきましょう。
CADを発明したのは誰ですか?
Artec 3D社製品を用いたスキャンは、複雑なCAD設計を十分な精度でキャプチャします
コンピュータ支援設計は非常に最先端技術でありながら普及もしている、製品開発における繰り返し作業(イテレーション)を促進させるツールであるため、つい最近発明されたものと思い込んでいる人がいても無理はありません。しかし実際は、パトリック・ハンラッティ(Patrick Hanratty)博士が1957年に最初の商用数値制御システムである「PRONTO」の基礎を築いていました。
その6年後、アイヴァン・サザーランド(Ivan Sutherland)氏は、人間とコンピューターの最初の対話を可能にした画期的なマシンであるSketchPadでその状況をさらに前進させました。サザーランド氏のデバイスは円弧や線分などの基本要素のみをサポートしていましたが、これまでにない方法で機械設計を画面上に描画できるようになり、将来のCADシステムの先駆けとなりました。
その後間もなく、企業らは独自のCADプログラムを立ち上げ始めました。ハンラッティ博士が提供したコードを使用して、マクドネル・ダグラス(McDonnell Douglas)氏は 1967年に部品のレイアウトとジオメトリのためのソフトウェアを導入しました。同社はその後ボーイング社と合併して消滅しましたが、同社のMicroGDS CADプラットフォームの成功ははっきりと証明されており、それは現在でも使用され続けています。
キーポイント
実は数十年前から存在していたにもかかわらず、CADは今現在でも製品設計の中心にあり、高度な3D技術との統合を強化する新しい機能の恩恵を受け続けています。
何十年という年月の間、CADは依然として注目を受ける研究テーマであり続けています。この業界で初期に活躍していたプレーヤーのうちの1社であるComputervision社では、ケン・バースプリル(Ken Versprille)博士が1975年にNURBS (non-uniform rational b-splines) を開発しました。現在では3Dモデリングの主流となっているこの機能により、曲面を含む複雑なCADモデルの作成が可能になったのです。
それ以来、CREOによって初めて商用化されたパラメトリックモデリングのような進歩により、CAD の利用方法が変わり、プリセットのパラメータに基づいてモデルを調整できるようになりました。たとえば、一部のフィーチャを変更する必要がある場合、最初のスケッチでモデルのパラメータを調整するだけで、完全に再計算してモデルの形状を変更することが可能になりました。
最近では、CADのテクノロジーも3Dプリントと3Dスキャンとの融合を続けており、常に新機能がこういったテクノロジーとの融合を促進しています。
CADとは: 重要な原則
CAD の主な機能とその最適な活用方法について説明する前に、まず「CADソフトウェア」が一体何を指すのかを明確にしておく価値があります。要約すると、つまりそれはデザインを作成したり、ドラッグ&ドロップをしたり、編集することを可能にする、デジタルの空白キャンバスを提供するソフトウェアプログラムのことです。
これらは、3Dスキャンのキャプチャやデータ処理用プラットフォームであるArtec StudioなどのスキャンをCADに変換する製品とは動作が異なります。スキャン・トゥ・CADは、要はオブジェクトを3D スキャンしてからそれを他のプラットフォームで使用・編集・改良できるモデルに変換するプロセスのことです。そのワークフローについては後ほど説明しますが、ここではまずデザイナーが何もない段階から作業を開始する必要性を回避できる方法に注目してください。
CADソフトウェアは製品設計や繰り返し行う改良のために様々な業界で利用されています
そして次に知っておくべきは、コンピューター支援製造およびエンジニアリング (CAM/CAE) です。CAMソフトウェアは機械工具のための最適なツールパスを生成するように設計されています。その一方で、CAE は製品のテストとイテレーションのためのシミュレーションに関連しています。どちらも高品質のデジタルモデルに依存していることから、当然CADと関連性があるので覚えておくと良いでしょう。
さて、CADソフトウェアにフォーカスした場合でも、機能のセットはパッケージ間で大幅に異なることがあり、より高度なものもあれば、特定の業界を対象としているものもあります。とはいえ、これらにはすべてCADツールが含まれており、ユーザーは基本的な形状やレイヤー、ブロックを正確な距離で位置合わせや複製、配置することで製品を作成することができます。
キーポイント
すべてのCADソフトウェア は、それが初級向けでも応用向けでも、ユーザーはまったく新しい3D設計を作成したり、既存の3D設計をインポートして編集したりできます。
有料のプラットフォームと比較すると、フリーウェアはより簡素的である傾向があり、ワークスペースでどんな作業が行われていようと、それに応じてインターフェイスが変わることはありません。ただし、すべての無料のCADソフトウェアに機能が少ないわけではありません。たとえば、FreeCADには複雑なブール演算を実行するために必要なツールが搭載されており、他の多くのプロ仕様のプログラムでも無料バージョンが提供されています。
アップグレードを検討したほうが良いケースは、ユーザーがエンジニアの場合です。Autodesk Inventorを例に挙げると、このプログラムのレンダリングやシミュレーション、そして機械設計ツールを使用して、製造情報をモデルに「埋め込む」ことができます。また、特定の条件下で最終製品がどのように機能するかを評価できる有限要素解析 (FEA) 機能も含まれています。
ソリッド、ワイヤーフレーム、サーフェスモデリング
さまざまなタイプのCAD は、大まかにソリッド、ワイヤーフレーム、そしてサーフェスのモデリングに分類できます。他のアプローチについても触れておく必要がありますが、ほとんどのケースはこれら3つのカテゴリに当てはまります。
ソリッドモデリングは、計算可能なオブジェクトの体積を維持しながら、線やアーチ、球、立方体などの幾何形状を複雑なモデルに組み立てるのに最適です。これにより、設計者は出来上がったモデルを常に検証し、実際に製造できるかどうかを確認できます。
それとは対照的に、ワイヤーフレームモデリングではモデルのエッジやコーナーのサーフェスのみが表示されるため、モデルをより繊細に作成できます。技術的な側面について言及すると、これはモデルを「面」でリンクされた頂点として表現することによって実現されます。そしてそれを修正して位置を変更したり、オブジェクトの外側に曲面を作成したりもできます。
CAD技術の進歩により、設計の制限がなくなりつつあります
最後のオプションであるサーフェスモデリングを使用すると、ユーザーはガイドラインもしくは制御点の集まりを介してモデルを構築できます。次にこれらは最もスムーズな方法を計算するCADプラットフォームに接続され、サーフェスを形成します。容易に想像できると思いますが、この方法のシームレスでスムーズなサーフェスフォーカスにより、サーフェスモデリングは気体の流れが重要となる自動車および航空宇宙のモデリングに最適です。
キーポイント
継続的なイノベーションにより、CAD と3Dスキャンは統合されてきているので、「スキャン・トゥ・CAD」の実現が着実に容易になってきています。
ジェネレーティブ デザインなどの他のアプローチでは、人的エラーを完全に排除しつつあります。今の時代、設計者達は重量やコスト、そしてパフォーマンスに関係する設計上の問題を克服するようAIに依頼できるようになり、またAIはその解決策を見つけ出すようになりました。彼らは作業対象のパラメータを入力するだけで、残りはアルゴリズムが実行してくれるのです。
CADで話題を呼んでいる先進テクノロジーは、AIだけではありません。3Dスキャンを使用すると、設計作業を自動化できるだけでなく、既存の製品をデジタル化したり、将来の物理的なプロトタイプの基礎として使用することで、設計そのものを完全に失くすことが可能になります。
3Dスキャンはどこで登場しますか?
既存の設計をデジタル化する場合、3Dスキャンは数秒でそれをキャプチャしてイテレーションのベースラインにできるため、理想的です。
柔軟なハンドヘルド型のArtec 3D社製スキャナは、あらゆる形状やサイズのオブジェクトをキャプチャできます
これによって、一から手作業で描画したり、CADを使用してデザインするよりもはるかに速く済みます。もちろん、設計を所有していない場合はそうすることでライセンス関連の問題が出てくる可能性がありますが、ある企業が彼ら独自の製品を改良する場合、このプロセスはプロトタイピングを迅速化し、コストも削減できる方法を提供します。
キーポイント
3Dスキャンを使用すると製品設計を数秒でデジタル化できるため、初期設計の段階が一切不要になります。
同様に、オンデマンド製造に関しても、デジタル化により在庫を仮想的に管理できるようになります。古い部品のCADバージョンのモデルを作成すれば、将来の使用に備えてその設計はデジタルで保存でき、3Dプリントなどの最新テクノロジーの利用でその部品を製造できるため、部品の特性を向上させることができます。
初期の電子ファイルが存在する場合は、それらを多くの3D CADプログラムのモデルと比較できるため、ユーザーはその製品が発売される前に製品の欠陥を特定することさえできます。自由曲面を使用したオブジェクトの作成も、手作業で設計するより3Dスキャンを使用する方が簡単です。これは、カスタム仕様の消費者製品やヘルスケア製品を作成する場合に特に便利です。
スキャンからCADへの変換方法
以上が、3Dスキャンが3D CAD設計に利用される方法の説明でした。しかしここで発生する新たな疑問は、必要なデータをキャプチャしたその後に一体どうするのかという点です。CADソフトウェアでスキャンの編集を開始できるのでしょうか?
残念ながら、すぐにはそうできません。まず、スキャンをソリッドの3Dモデルに変換する必要がありますが、メッシュとモデルの間の橋渡しとして機能する「スキャン ・トゥ・CAD」プログラムの進歩のおかげで、このワークフローはますます容易になっています。
スキャンからCADへ変換させるにはいくつかの手順が必要ですが、その結果がその価値を証明します
Artec Studioは、このワークフローを開始するのに最適なプラットフォームで、スキャンデータのキャプチャと処理を効率化し、ステップのいくらかをワンクリックで簡素化します。ジオメトリおよびテクスチャ追跡アルゴリズムにより、エンジニアは部品を細かくキャプチャできるようになり、このプラットフォームの進化しつつあるブール演算ツールキットを使用することで、壊れやすい表面を厚くするなどしてメッシュの強化ができます。
Artec Studioは、メッシュを準備したり、重要なリバースエンジニアリング作業を実行するために必要なものをすべて提供します。このプラットフォームでは、修正のために面の移動やオフセットができますし、面取りやフィレット用ツールで仕上げをしたり、幾何形状の追加・削除や、他のモデルと交差させて新しい形状を作成することも、すべてこの1か所で行えます。
Geomagic for SOLIDWORKSのようなプログラムは、この非常に洗練されたメッシュをCADモデルに変換させるプロセスを迅速化します。このアドオンをSOLIDWORKSのワークスペースに直接接続すると、スキャンデータからソリッドかつ編集可能なモデルを作成するために必要なフィーチャー抽出ツールが提供されます。馴染みのあるインターフェイスで既存のデザインを迅速に、簡単に、そして正確に修正もしくは編集したい場合には、このプログラムは理想的なArtec Studioのお供となります。
高度なリバースエンジニアリング向けの、最先端のソフトウェアであるGeomagic Design Xには、より包括的なスキャン・トゥ・CAD用ツールセットが付属しています。正確なサーフェスを使用すると、複雑な自由形状を再構築してからプラットフォームのパッチ機能を展開して、オブジェクトの輪郭や曲線に厳密に従うサーフェスボディを即座に追加することが可能になります。
Geomagicは、現在業界をリードしているスキャン・トゥ・CAD対応のプラットフォームをいくつか開発しています
2Dおよび3Dのスケッチに関しては、Design Xは迅速なスキャンをベースにしたエンジニアリングのための完璧な基盤を提供します。その自動スケッチを使用すると、ジオメトリの抽出を高速化することができ、必要なパラメータを満たす方法で形状をポリラインのエンティティに自動的にフィットさせるように構成できます。ロフトやスイープなどの他のツールを使用すると、断面をシームレスなサーフェスに簡単にブレンドできます。
より広範的な視点で言及すると、現時点でCADプログラムとスキャン・トゥ・CADのプログラムの間にはかなりの重複があり、多くの従来の設計プラットフォームには3Dスキャンに適した機能が統合されています。それではここで、それらの中で最も人気のあるもの、それらが提供するもの、そして使用される用途について見てみましょう。
人気のCADソフトウェア
AutoCAD
標準バージョン: 年間 1,955 米ドル
Windows, Mac
- 柔軟性があり、多様な業界に適用可
- 大規模なサポート/ユーザーベース
- UIの操作方法の習得が困難
AutoCADは工業用途に対応できるCADプログラムの中で最も広く導入されており、その理由は十分にあります。AutoCADには、建築家や機械エンジニアがより迅速かつ効率的に設計できるようにする機能が充実しています。例えば、設計図面を比較するプロセスを自動化したり、カスタム仕様のワークスペースを作成したりできる機能などです。
このCADソフトウェアが提供する包括的なサービスには、2Dの製図、描画、注釈用のツールに加え、3Dのソリッド、サーフェス、そしてメッシュモデルの設計用ツールが揃っています。写実的なレンダリングを実現する際にはその機能セットも実に強力で、照明やシェーディングの効果を追加できるツールも備えており、ユーザーはそれらの効果を取り巻くように操作できるため、製品のプレゼンテーションを容易にします。
また、AutoCADにはユーザーがコラボレーションを行うためのクラウドを介した共有機能と、高性能なUI も統合されています。そのUIは特別ユーザーフレンドリーというわけではありませんが、根気よく使い続けるユーザーは、手作業での図面作業や将来の編集作業のための強力なプロ仕様のツールのおかげでその労力は報われます。
SOLIDWORKS
リクエストに応じて提供
Windows
- 工業グレードの機能
- 3Dプリント用にCADファイルを簡単にエクスポート可能
- 競合他社のプラットフォームよりも高価
- CPU使用率が高くなる場合あり
すでに詳しく言及しましたが、SOLIDWORKSには複雑なサーフェスをスケッチするための膨大な量のCADツールが搭載されています。ソフトウェア開発企業のDassault Systèmes社は長年にわたり、クラウド共有システムを導入しながらアドオンの発売や他のプログラムとの統合、設計、シミュレーション、そして製造分析ツールの強化などの機能を拡張してきました。
さらに、CADソフトウェアに組み込まれた3Dプリンタ用データベースによって製造向けのモデルの準備とエクスポートが合理化され、3Dプリントのコミュニティの間で人気の高い選択肢となっています。そんな中、SOLIDWORKSが難航しているのは、個人ユーザーに対する価値提案です。このテクノロジーを単に弄ぶだけであれば、年間数千ドルの出費を正当化するのは難しいでしょう。
しかし、特定のビジネス案件に取り組んでいるプロフェッショナルなユーザーの場合、その広範なメッシュの編集ツールキットは、リバースエンジニアリングやラピッド プロトタイピング、工業デザイン、そして分析等に最適です。
Fusion 360
年間 545 米ドル~
Windows, Mac
- 比較的安価な設計と工業用ツール
- アドオンでアップグレード可能
- 速度はネットワークに依って変動
Fusion 360は、定期的にクラウドに同期可が必要となる点で、他の主なライバル製品とは少しシステムが異なります。したがって、貴重なデザインをインターネットから遠ざけたいという要望がある方にとっては、他の製品を探す方が最善かもしれません。このプラットフォームが優れているのは、使いやすさと手頃な価格のバランスであり、設計と技術図面作成に向けた強力なツール一式を備えています。
この製品以外にも、Autodesk社は非常に多くの設計プラットフォームも販売しているので、この会社の製品の中であなたのモデリングのニーズを満たす製品が必ず見つかるはずです。例えばより高度な設計・分析ツールを備えたAutodesk InventorをはじめとするCADソフトウェアも、Autodesk社は提供しています。
Solid Edge
月額82米ドルから
Windows
- ドラフト版は低価格
- ジェネレーティブデザインの分析
- 使いやすいUI
- 簡素な3Dモデリングツール
より工業用向けのソリューションをお探しですか? Siemens社のSolid Edgeプラットフォームが最適かもしれません。基本的な部品やアセンブリの製図機能に設計、シミュレーション、製造、そしてデータ分析ツール一式を兼ね揃えたSolid Edgeは生産環境に最適です。
これは絶対的に求められるポイントではありませんが、Artec Studioにはメッシュを整理する包括的なCADツールが備わっているように、Solid Edgeにもトポロジー最適化が行えるエリアを特定できるジェネレーティブデザイン分析などのドラフトに関する独自のイノベーションを備えています。その他にもSolid Edgeは3D プリントとの優れた統合システムも備えており、ラピッドプロトタイピングに簡単に利用ができます。
また、Siemens社は設計および製図を目的としたユーザー向けのエントリーレベルのバージョンを提供しているため、ユーザーは決して使用しない機能に対して料金を支払うことはありません。ただし、このバージョンでネックとなるポイントは、Siemens社の他のNX CAD/CAM/CAEソフトウェア製品と比較するとプラットフォームが少々簡素である点です。
キーポイント
AIやクラウドコンピューティング、そして3Dスキャンとの統合により、現在多くのCAD プラットフォームでの製品設計が加速しています。
ここでご紹介したほんの一握りのポピュラーなプログラム以外にも、もちろんオプションは沢山ありますし、プラットフォームはプロシューマー向けエンジニアリングに限られてはいません。FreeCADやTinkerCADなどのCADソフトウェアは、趣味でデザインやものづくりを楽しむユーザーに向けて3Dプリント用のモデリングに必要なすべてのツールを提供しますが、その一方でSketchUp や Blenderはスケッチやレンダリングに特化しています。
詳細については、 最高のCAD&スキャン・トゥ・CADソフトウェアの記事をご覧ください。
業界特有のCAD用途
製品デザイン
さまざまな業界で製品の品質を確保するにはイテレーションがどうしても必要となりますが、多くの用途はCADに依存しているという共通点があります。一部の分野では、初期デザインが未だに従来の製図によって作成されているところもあるかもしれませんが、過去に製品のローンチを遅らせる原因となった長く延々と繰り返されるスケッチプロセスは今ではほとんど見られません。
CAD設計は、従来スケッチが主流であった自動車業界でも盛んに利用されるようになりました
プロトタイピングの速度の観点以上に、CADの導入は、縮尺図の誤解や共有に関する問題を克服させるのにも役立ちました。設計のデジタル化とCADの普及により、以前では考えられなかったレベルの自動化とコラボレーションも可能になりました。
CADの登場は、製品の設計方法を変えただけでなく、今までになかった全く新しい道を切り開きました。それまでは、初期のデザインをプレビューするには模型を作成してそれを出荷する必要がありました。しかし現在では、高級家具を取り扱うSherrill Furniture社のような企業はたった数分で3Dスキャンを活用して家具をデジタル化し、そのデータを使用して毎週カスタマイズプロジェクトや3Dビジュアライゼーション用に数十単位のCGIラウンジアイテムを作成します。
これはArtec Leoによる、3,500万ポイント/秒という超高速のスピードによって可能になりました。 クリックでスキャンができる機能に加え、サブミリメートルレベルの3Dスキャン機能も備えたLeoを使用すると、混雑したショールームにある家具などの複雑でテクスチャーが豊富なアイテムをすばやく簡単にキャプチャできます。また、次に説明するように、Leoは他の用途でも活躍します。
エンジニアリング
CAEは、機械エンジニアにとってCAD が非常に役立つ分野であり、製品が生産段階に入る前に機械部品やアセンブリのパフォーマンスを分析できる手段として活用されます。製品のプロトタイピングと同様に、メーカーは無駄な模型を作成する必要がなく、代わりにどのように動作するかをシミュレーションできるようになります。
ただし、エンジニアリングにはそれとはまったく異なるシミュレーションツールセットが必要となります。Autodesk社は、Inventorでこれを認識しました。Inventorとは、製品が設定荷重に耐えられるかをテストするための、手動でドラフトする際の必須ツールと静的および固有応力の解析ツールを組み合わせたプラットフォームです。
キーポイント
CADの活用で、エンジニアは部品やアセンブリが生産段階に入る前にアプリケーション要件を満たしていることを確認できます。
他にもSiemens社はSimcenter FLOEFDと呼ばれるCADが組み込まれた数値流体力学 (CFD)のソフトウェアを提供しています。CFDのシミュレーションを使用すると、空気や水などの流体がモデルの周囲をどのように流れるか、ひいては空気力学を高めるために流体をどう流すかを予測することができます。これは、空気抵抗を最小限に抑えることが首位でゴールするための鍵となる、競技サイクリングなどの分野では特に重要となります。
Leoで取得したデータと超高精度スキャナのArtec Space Spiderを使用したことで、英国のシム企業のVorteq社はこのアプローチを磨き上げ、 世界最速のレーシングバイク(自転車)の開発に至りました。Leoのスピードとワイヤレスの持ち運びやすさにより、比較分析のためのキャプチャが加速されましたが、0.1mmレベルの解像度を持つSpace Spiderでキャプチャされた極めて詳細な情報により、レーシングバイクのフレームを通過する力を CFDを使用してモデル化することができました。
接続されたボディがどのように動作するかを調べるために行う、マルチボディ動的解析などの他の機能も多くのプラットフォームに導入されつつあり、詳細なエンジニアリングはやはりCAD設計において最もエキサイティングな領域の1つであることは明らかです。
自動車
自動車業界では、手描きで行う自動車デザインがもたらす芸術性が未だに根強く重視されており、CADモデリングだけが唯一21世紀らしい技術となっています。そのプロセスは今でもスケッチから始まる傾向がありますが、エンジニアはCADプラットフォーム上でデジタル製図を行い、その結果から得られたモデルを使用してテスト用の等身大模型を作成することで、スケッチ作業を徐々に仮想設計に変換しつつあります。
チューニング会社の多くは既存のモデルをキャプチャし、必要なアップグレードをデジタルで設計します
概念設計をデジタル化することでプロセスの精度が向上し、ユーザーが意図したとおりにモデルが適合し、動作することを確認できるようになります。また、部品やアセンブリが負荷の下でどのように動作するかを特定するためにシミュレーションに使用できるモデルも生成できます。その負荷が空気力学的なものであっても物理的なものであっても、その結果を利用して設計の安全性とパフォーマンスを分析できます。
3Dスキャンを使用することで、現実世界のオブジェクトからそういったモデルを非常に高速かつ正確にリバースエンジニアリングできるようになったおかげで、製品のイテレーションに使用できるようになりました。過去に、自動車レースチームであるSNAG Racing Rallyeは、非常に柔軟性の高いArtec Evaを使用したことがありますが、その理由はEvaが中型サイズのテクスチャつきの部品をデジタル化するにあたって実績のあるソリューションだったからです。
ペーパーモデリングからラリーカーのアップグレードをデザインするのための3Dスキャンに変えたことで、生産コストとリードタイムの削減を達成しながらも、強度・速度・操作性もまた向上させることができました。
建築
CADはあらゆる形状やサイズを伴う建築の設計に利用されますが、通常、それらは主流のソフトウェアではなく建築設計専用のソフトウェアで行われます。製品スケッチの場合と同様に、建築設計とプロジェクト管理をデジタル化することにより、土木技術者は1から始めなくても、それらの変更をクライアントからフィードバックを受ける度に繰り返し行っていくことができるようになりました。
CADよりもビルディング・インフォメーション・モデリング (BIM) と呼ばれることが多いこのプロセスでは、建築家が建築計画の達成後に結果がどのように見えるかをプレビューすることもできます。ArchiCADなどの人気のソフトウェアパッケージを使用すると、ショベルカーが地面を掘り起こす前の段階で写実的なビジュアルを生成したり、インテリアデザイナーを支援したり、不動産のマーケティングを事前に開始することもできます。
長距離用の3Dスキャンにより、施設をデジタル化したり現場の効率を向上させることができます
建設現場には非常に多くの関係者が存在するため、BIMも重要な現場計画ツールです。おおまかに説明すると、BIMモデリングには7つのコラボレーションのレベルがあり、1番最初のレベルは2D図面の作成で、最後のレベルではこれらが3Dモデルに変換されてプロジェクトの関係者全員と共有されます。後者は効率的な用地計画とコスト計算を容易にし、最先端とみなされています。
歯科と医療
CADは歯科分野でも盛んに使用されていますが、純粋に設計ツールとしてよりもカスタムメイドのインプラント製造に使用されることが多くなっています。歯科業界で使用されるCAM(コンピュータ支援製造)では、患者の口のインプレッションまたはスキャンによって歯の3Dモデルが表示され、歯の修復・復元を提供するための基礎として使用されます。
1980年代に歯科用CAD/CAM がきちんと定着するまでは、カスタムメイドのクラウンやインプラント、または義歯を作成するには歯科医院へ数回通わなければならず、その後模型は製造業者に送られていました。現在、歯科医は3Dスキャンを使用して、完璧にフィットする歯科用インプラントの開発に十分な精度で患者が歯を見せる笑顔をキャプチャすることができるようになったので、それぞれの歯科クリニックでの製造が実現しました。
キーポイント
現在では、歯科医がCAD/CAM設計をクリニックで使用し、カスタムメイドのインプラントを作成するのが一般的です。
そのような実践を行うインプラント専門の歯科センターでは、Space Spiderでキャプチャした超高精度でフルカラーのスキャンと口腔内のスキャンを組み合わせて、非常に現実的な歯のモデルを作成する方法を発見することができました。これによってインプラントの設計プロセスが加速されただけでなく、患者がそのインプラント治療後の新しい自分の笑顔をプレビューできるようになったので、それ以来クリニックの承認率が急上昇しました。
当然のことながら、CADの出力をSTLファイルに変換するのがいかに簡単かを考慮すると、3Dプリントもアウトソーシングに代わる人気の選択肢となりつつあり、歯科分野でより高精度の結果を達成するためにこれら2つのテクノロジーを併用することには大きな可能性があります。
3Dプリントは医療分野でも普及し始めており、CADを標準的な「DICOM」の臨床データ形式に統合する取り組みが行われてきています。そこにCADがさらに導入されることで、ギプスや補綴物のカスタマイズが容易になるだけでなく、生物学的モデリングを通じて手術計画や薬剤設計が前進することが期待されています。
CADにおいて今後見られる進歩はありますか?
自動化や機能性、使いやすさなど、どの点からでもCADのアウトプットは大きな進歩を遂げており、イノベーションの肥沃な土壌であり続けています。これは多くの他の分野でも言えることですが、AIの活用で3Dモデリングプロセスのより多くのステップが加速されるようになりました。
プラットフォームは依然として飛躍的に進歩しており、CAD設計には多大なる可能性があります
Dream CatcherのようなプラットフォームはAIを活用した提案を提供しており、この機能はエラーを予測したり、反復的な設計タスクを自動化できる手段として今後ますます一般的になるでしょう。他の分野では、AR/VR製品や3Dの視覚化機能により、あたかもユーザーが目の前に立っているかのように設計を表示できるようになり、カスタマイズツールの継続的な展開によって3Dプリンターの ユーザーの間でCADの人気が高まりつつあります。
クラウドベースのプラットフォームを提供する企業もあれば、同様の機能を追加し始めている企業もあるという、ハイブリッドなこの業界の性質を考慮すると、クラウド共有に対するデマンドも無視できません。より多くのプラットフォームがクラウドに移行するにつれて、互換性は以前より問題ではなくなりつつあり、Google Docsスタイルで3Dモデリングがいつか共有できる日がくる可能性に現実味がでてきました。
結局のところ、CADは製品を繰り返し市場に投入するための、より迅速でデジタル化された方法として様々な業界で製品設計の中心であることは明らかです。CADとAI、クラウドコンピューティング、そして3Dスキャンの統合が強化されることで、これらのメリットはさらに増加し、ユーザーのワークフローをさらに自動化・高速化・合理化していくことでしょう。
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皆様の企業や取引先の製造設計のニーズに応えるために、CADシステムの導入が必要かどうかをお考えであれば、このまま続けてお読みください。目のくらむほどの数の選択肢の中では相当の額の投資と思われたものが、計り知れないほどの時間、労力や出費の節約に結果的に繋がり、最善の決断であったことに後から気付くこともあるのです。この記事では、品質検査、リバースエンジニアリングやその他の用途における現時点でのCADシステムについて、また、その導入がどのような課題の解決に役立つのか、もしくは、3DスキャニングがCADワークフローの質をいかに力強く向上させるかについて概説しています。
コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアは、異なる分野の様々な種類の工程で設計者やエンジニアに利用されており、設計、シミュレーション、製造、その他のあらゆる領域で業務を行っている方々の頼みの綱となっています。CADソフトウェアは、設計構想や草案の視覚化のみでなく記録にも役立ち、特許出願や設計の法的保護、適合性の検査を行うことが可能となります。