Artec Leoは3Dスキャニングを新たな高みへ導く:サンフランシスコ湾上空一八五フィートへ
課題:数十年もの間、自然環境下に晒されて摩滅し、熱と海という世界で最も有害なものに継続的に近接している、サンフランシスコのリッチモンド・サンラフェルブリッジ(Richmond–San Rafael Bridge)の錆びたパネルの交換の時期がやって来た。橋は一九五〇年代に建設され、パネルの信頼できる図面や計測寸法もないため、その正確な情報を得る必要が生じた。ただ、問題点が一つだけあった。この一連のパネルは、一日推定八万台の車両が行き来する五車線を持つ橋の一部であり、サンフランシスコ湾上空一八五フィート(五十六メートル)に設置されているのだ。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、Geomagic Design X、及びAutodesk
結果:ワイヤレスで内蔵タッチスクリーンを搭載するArtec Leoはこの挑戦を受けて立ち、ケーブルに縛られることなく、コンピューターも必要とせずに八枚のパネルを簡単にスキャンした。入手する必要のあったすべての寸法と情報を得て、取り換え用のパネルが製作された。新たに設置されたパネルは、品質管理及び将来的な参照用にもスキャンされた。
なぜ、Artecなのか:Artec Leoはケーブルやワイヤー、コンピューターやその他の機材も全く必要とせず機能することで、必要なすべてのデータは簡単に、交通への支障も最小限に抑えた上で完璧にキャプチャされた。
一九五〇年代のカリフォルニア、すなわち、ビート・ジェネレーションの詩人が、現在では象徴的となったブックストアでペンを走らせていた中での戦後の急発展や産業化を背景に、リッチモンド・サンラフェルブリッジは誕生した。ただ、このような橋の建設計画は、更に前から始まっていたのだ。早くて一九二〇年代にはサンフランシスコ湾の東側と西側を接続する必要性が生じ、建設案の提案、承認、遅延、修正を経て、その後の数十年の間、何度も延期されてきた。
そして、五十年代に、州の増え続ける人口と同じくらい急速に高まった期待や必要性と共に建設案は承認され、公式名称ジョン・F・マッカーシー記念橋(the John F. McCarthy Memorial Bridge)の建設が始まった。
リッチモンドを東側、サンラフェルを西側として繋ぐフェリー業務に取って代わるよう計画された建設業務は一九五三年三月に開始され、橋は一九五六年に完全に機能する形で、招待客、この場合では、湾を容易に渡る手段を遂に手に入れた数万人もの車両運転者を迎える準備ができた状態で開通した。
この橋はそれ以来、湾の一端からもう一端へ、毎日総計七万人以上のドライバーを運んでいる。橋はもちろん機能しており、絵になる風情だが、その設置場所により、塩水や熱、風、車両の排気という、橋を極度に腐食させる一連の事象の被害に合いやすくなっているのだ。
「橋の建設時、技師が私にこう漏らした。『錆は決して眠らない』、と」こう言うのは、Artec 3D社ゴールド認定パートナーのIndicate Technologies Inc.社のマルシオ・アダミ(Marcio Adamy)である。
橋を最も安全に、かつ機能的とするために、多少の修復が必要となった。橋のある部分の特定の箇所が時間の経過と共に特に腐食して錆び付いており、この箇所こそが取り替えの必要な部分であった。
『取引先はパネルの寸法とリベットの場所を知りたがったが、パネル一枚にはなんと、二百五十ものリベットがあった』
既知の計測方法もなく(有ったとしても、その信頼性は疑問視されていただろう)、新たな課題が生じた。そのようなパネルの正確な寸法を測る、という大変な作業の要望が、鉄鋼業、そして、スタジアムや建物に加え、今回の場合では、橋などの大規模な構造物の製造や維持管理を専門とする企業であるDanny’s Construction社より生じた。
「取引先はパネルの寸法とリベットの使用箇所を知りたがったが、パネル一枚には二百五十ものリベットがあった」と、アダミは言う。「各パネルには北側と南側があり、内側と外側もあった。そのため、新たにパネルを製作するには、すべての正確な穴が正確な箇所に来るよう、計測によって寸法を得る必要があった」
各パネルには二百五十のリベットがあり、一本一本、正確にキャプチャされる必要がある。
このことにより、二つの課題が生じた。橋の高さ、そして、毎日七万台もの車両が橋を利用している事実だ。そのため、素早く扱うことができ、手間がかからず、自己完結型であると同時に、その最終的な成果が正確で信頼性のあるものであることを保証できるソリューションが必要となった。
ただ一つのソリューション
リッチモンド・サンラフェルブリッジのそのような特定のパネルに近づくことに関しては、考慮すべき点が数点ある。まず、計測の必要なパーツは水面から一八五フィート(五十六メートル)の高さにあること。次に、一日中、一定量の交通量があること。常に湾全域に亘って吹き荒れる猛烈な風や、介入的な行動を最低限に抑える必要性があることも忘れてはいけない。例を挙げると、クジラの発情期には欲情したクジラの気を散らすことの無いように、海に近い場所での活動が制限される。
一言でいえば、交通への干渉も最小限に抑え、作業を行う場所の地上からの高さを頭に入れて、下を見ないようにすることを忘れずに、近づく車両から守られた形で、素早く、安全に橋の外側に面する部分にそっと接近した上で、それぞれのパネルのサーフェスのディテールを逐一キャプチャすることのできる人物が必要であった。
この課題を受けて立てるソリューションは、ただ一つであった。それが、Artec Leoである。
完全にワイヤレスであり、最も扱いにくい部類の隅角部分も容易にキャプチャできるよう設計されているArtec Leoの内蔵スクリーンにより、オブジェクトのサーフェスすべてや内部のすべてのディテールのキャプチャも簡単となる。リッチモンド・サンラフェルブリッジの場合では、今回の業務を遂行できるような機材は、他には見当たらなかった。Leoにより作業を行う場合、携帯するものはその機器のみであるが、この業務の内容を考えれば、これは必須の検討事項である。 今回のような高所の小さなスペースで、業務を遂行するにはわずかな時間しかない状態でコンピューターやケーブル、そして、支援するために待機するもう一人の作業員を扱うような、手間のかかる方法は選択肢とはならなかった。
『ソリューションは、他にはなかった。Artec Leoはまるで、このために設計されたようだ』
他の状況では、異なるスキャナ、若しくは複数のスキャナを使用することで簡単に解決する場合もあるが、今回の事例では、その答えは明らかだった。アダミはこう話す。「縦三フィート、横一フィートほどのバスケットにもう一人と乗っていたことがあって、その際には、『コンピューターやテーブルは何処に置こう?』などと言っていた。そのため、この事例では、他に選べるようなソリューションは無かった。Artec Leoは、このために設計されたようなものだ」
全ての作業は、HDモードで行われた上、記録的な短時間で完了した。「実のところ、今回はそれほどの豊富な情報を持つジオメトリを得る必要はなかったのだが、すべてをHDモードでスキャンすることにした」とアダミは話す。「自分はとっては常に、最高のものを得てから不要なものを削除する方が、十分な情報を得ずに後から追加ができない状態になるよりも好ましい」
それぞれのパネルをスキャンする最善で最も効率の良い方法を習得するために若干の練習をした後、チームはパネルの一面ごとのキャプチャを十分以下で完了した。
海上五十六メートルにて、業務は迅速に、安全に、そしてコンピューターやケーブルなどの邪魔となる追加の携行品もない状態で遂行される必要があった。その解決策が、Artec Leoだったのである。
「橋において作業が出来るのは、少しの間の時間だけだった」とアダミは語る。続けて、「朝の五時半か六時に現場について、作業の計画を練る。その後、装具、ヘルメット、及び安全装置を装着し、九時半か十時迄スキャニングのために現場に留まった後、オフィスへ車で戻り、ファイルのアップロードを開始する」と話す。
各スキャニング過程で利用できる短い時間枠、必要なスキャニング量、現場での環境的制約、及び予測の出来ない気候条件の下で、プロジェクト全体の完了には数カ月かかった。
八回現場へ赴き、六フィートのパネルをすべての角度から一枚当たり三十分以下でスキャンした後に、業務の第一段階は完了した。すべてのパネルはスキャンされ、キャプチャされたデータは次の段階で使用されるべく、転送される準備が整っていた。
全てを一日の業務として
遂行すべきすべての計画、待機する保安職人及び警察官、対向交通との衝突を防ぐための空港用消防車、そして、安全ベルトを装着し、サンフランシスコ湾上空に吊り下げられる一人の人員を必要としたものの、業務そのものは難しいものではなかった。すべての課題や難点にも拘らず、Artec Leoによるスキャニングは容易であった。
データの処理も同様であった。
アダミは、こう説明する。「ファイルをアップロードし、すべての工程を実行した。その後、グローバル位置合わせを実施して不要となる余分な情報を削除した上で、シャープメッシュ化を利用して、そのすべてをメッシュへと変換した。そして、そのメッシュをSTLファイルとしてエクスポートした」
この一連のかなり単刀直入な工程の段階を経てエクスポートされたSTLファイルは、更なる処理のためにGeomagic Design Xへアップロードされた後、PTSフォーマットでエクスポートされた。このファイルはSBUドローイング、及び情報収集のためにAutodesk上で使用された。場合によっては、スキャニングから処理、後処理、最終成果物の完成までのすべての工程は、一日以内で完了した。
『唯一の困難な点は、風や寒さ、日光にさらされた環境で恐怖に耐えながら、現場に留まっていることだった』
現場でのスキャニングの最難関は、なんと現場の高さだったのだ!
「前述のように、この部分の工程はとても単純だった。ファイルをアップロードし、グローバル位置合わせを行い、メッシュファイルを編集して作成し、シャープメッシュ化を行う… 頭を使わなくてもできることだ」と、アダミは話す。「唯一の困難な点は、空港用消防車の上空で、風や寒さ、日光などにさらされた環境で恐怖に耐えながら、現場に留まっていることだった。それこそが、最も過酷な点だった」
時間とコストの削減
そして、八か月後、八枚のすべてのパネルは組み立てられた上で、控えめに見積もっても所要時間が七十五から九十パーセント短縮された形で、堂々と設置された。3Dテクノロジー、特に、Artec Leoを選んで使用したことで、実現性や利便性以上の利点がもたらされた。コストも、大幅に削減された。
節約できた時間を例に取ろう。例えば、手書きで記録され、新しいパネルの製作者に伝達されるような骨の折れる計測過程により、パネルそれぞれを巻き尺や定規を使用して、手作業で計測する必要がある場合を考えてみて欲しい。
完成する成果品の正確さから、現場に必要な従業員の数の削減は言うまでもなく、新たなパネルの製作時間も短縮される。このことで、労働コストの削減にもつながる。
最後のもう一段階として、もちろん、新規パネルのスキャニング工程がある。今日では、数十年前に建設された建物や構造物の信頼できる情報を得ることに困難を来す場合も生じるが、プロフェッショナルたちは将来的に、そのような問題からは解放されるだろう。
リッチモンド・サンラフェルブリッジの事例では、各パネルに対し、完全な3Dスキャンデータ、計測、設計、及び〇.一ミリもの細かい精度を持つファイルが、技師や建設業者、建築家や工事監督者に遂に利用可能となった。
ストーリーの背景で活躍するスキャナ
世界最高峰のポータブル3Dスキャナをお試しください。