Artec Eva、重度の火傷を負ってしまった子供に向けた最先端の顔面エピテーゼの作成を支援
課題:フランスのとある小児リハビリセンターで、重度の火傷を負った子供を治療するため、迅速・正確・非接触で完全に安全な技術を必要としていました。
ソリューション:Artec Eva、Artec Leo、Artec Studio、Geomagic Freeform、 Formlabs
結果:従来の石膏鋳造技術を使用する代わりに、高精度を提供するArtec Evaを用いた3Dスキャンをもとにして、火傷の治癒に役立つユニークなマスクが3Dプリントされました。
Artecを選ぶ理由 大手3D技術メーカーであるArtec 3Dは、正確な測定を行いオーダーメイドの補綴物や矯正器具を作成するための安全で高速、かつポータブルなソリューションを数多くの医療専門家達に提供してきました。
Romans Ferrariリハビリセンターと大手3D企業のコラボレーションにより、カスタム仕様の圧縮マスクを作成するための革新的なデジタルワークフローが実現しました。
小児の火傷治療における課題
火傷に苦しむ子供たちの苦境を思い浮かべると、肉体的にも精神的にも大きな痛みを伴うことが想像できるため、誰もが深い同情を感じずにはいられません。このような症状から回復するプロセスには長い時間がかかり、その子供たちの家族全員にとって非常に困難となります。回復力と着実な進歩は希望を持ち続けるための重要な要素であり、患者が生活を再建していく上で不可欠です。医療分野におけるイノベーションがそういった状況に希望をもたらしてくれるということは、非常に安心感を与えます。
子どもが負った火傷の種類がどんなものであろうと、すべての火傷はストレスや恐怖、トラウマを引き起こします。したがって、そのような子供たちを助けるには、忍耐とカスタマイズされたケア、そして最先端のテクノロジーが必要となります。そんなテクノロジーの1つである3Dスキャンは、3Dプリントされた補綴物や矯正器具、そしてデジタルの顎顔面外科手術など、さまざまな分野に革命をもたらしてきました。
これを見事に例証しているのが、医療における積層造形の使用を促進する、とあるイタリアとフランスの専門業者による近年のパートナーシップです。Artecのパートナーである3DZとフランスの都市リヨンにある小児リハビリセンター、Romans Ferrariが共同で行っている試験的な取り組みによって、急性期および再建的な火傷治療に完全に新しいスタンダードが構築されました。
ミッションに応えるオールスターチーム
両者は自らが行っている事業において先導者と言えます。長期に渡ってArtec 3Dのパートナーである3DZは、彼らの国際ネットワークを通じて高度な3Dソリューションを提供しています。リヨンのRomans Ferrariリハビリセンター は、医師や看護師、リハビリテーションスタッフから構成される高度な資格を持ったチームが所属し、創傷ケアや瘢痕治療、そして再建手術における先駆的な仕事が行われている施設です。現在、Romans Ferrariで働く専門家らは、重度の火傷を負ったフランスの子供たちの25%を治療しています。Romans Ferrariの専門家は、治癒を促進する即時的な支援に加え、長期にわたって傷跡を最小限に抑えつつ、幼い患者ができる限り少ない制約で日常生活に戻れるように心理的サポートを提供しています。
リヨン近郊のミリベルという町に本拠を置くこのリハビリセンターは、圧縮によって徐々に皮膚組織のより迅速な再生を可能にするデバイスを取り扱っています。この特別なコラボレーションでは、Romans Ferrariの取締役でToulouseの元航空技術者であるジャン・フランソワ・ヴォーヴィル(Jean-François Veauville)氏が、3Dプリントを使用して3Dスキャンから直接マスクを製造できないか検討するために、École centrale de Lyonに研究を依頼しました。6か月にわたる研究の結果、3Dプリントがそのマスクに最適なソリューションであることが判明し、École centrale de Lyonの研究者は、このリハビリセンターは3DZのフランス支店に連絡をして、彼らの用途に3Dテクノロジーを導入する際に必要となる詳細について相談すべきだと推奨しました。
このリハビリセンターはフランス全土から子供や青少年を受け入れています
このリハビリセンターはすでにArtec 3Dのパートナーと協力して成功した実績を持っていました。彼らはCADVisionからArtec Evaを取得していたので、このプロジェクトに適切な3Dスキャナが準備万端な状態にありました。ここで残された課題は、このプロジェクトの3Dプリントについて理解することでした。このため、リハビリセンターの医療専門家らは 3Dプリント業界において世界的リーダーであるFormlabs に注目しました。そこで浮上した計画は、患者の顔面スキャンを取得するために、Formlabsの「Fuse 1 セレクティブレーザーシンタリング(SLS)」というプリンターを使用し、それを最終段階で使用する圧縮デバイスの熱成形のポジとして使用するというものでした。つまり、このプロセスは患者をスキャンして3Dファイルを取得し、それをCADソフトウェアにシームレスにインポートできるレベルまで処理を行ってからそれをプリンターに送信して、わずか数時間で結果を得るというものでした。
これぞ医療革命: エピテーゼ用の3D
Romans Ferrariの医療スタッフは長年にわたって子供の治療に携わっており、現在は従来の方法に代わる痛みの少ない治療法を見つけることに専念していました。彼らの主な目的は、子供の顔や体の他の部分の火傷を治せる特別なマスクを作成することでした。当然のことながら、特に火傷を負った顔の輪郭を再現する場合、それは非常に繊細なプロジェクトになりました。顔面エピテーゼを成形する前に、まず最高の精度のデジタルレプリカを作成しなければなりませんでしたが、まさにそこがArtec Evaの恰好の出番でした。
Artec Evaを使用して患者の顔を3D スキャンする装具士。
義肢装具士などの多くの医療専門家らは、彼らのワークフローを合理化するために長年にわたって一貫してEvaの使用を選択してきました。もちろん、それには正当な理由があります。この多用途で軽量な3D スキャナは、人体全体や様々な体の部分などあらゆる種類の表面を正確に再構築できる能力を繰り返し実証してきました。Artec Evaは、一貫したレベルの精度に加え、非常に使用方法を習得しやすいおかげで、医療分野で非常に頼りになる3Dスキャンデバイスとなっています。その使いやすさは、初心者と経験豊富な医療専門家達の両方を喜ばせ、インスピレーションを与えます。完全に安全な構造化光テクノロジーに基づいているこのスキャナは完全に非接触かつ迅速・正確で、プロジェクトに必要な条件をすべて満たしています。
今まで火傷を負った患者のマスクを作成する全プロセスには、伝統的な石膏鋳造技術が中心にありました。この従来行われてきた手順には、石膏のストリップを皮膚に直接貼り付けて顔の型を作る過程が含まれていました。言うまでもなく、この方法は特に敏感な子供の肌にとっては非常に苦痛を与えるものでした。すでに脆弱な状態の皮膚にさらに負担をかけてしまう、この非常に痛みを伴い、不快で恐怖心を与える処置を行うことで、子供の患者は結局また別のトラウマを経験することになってしまっていたのが現状でした。
Romans Ferrariの患者であったローラ・ヴァイベル(Laura Weibel)さんにターゲットマークを付けている同センターの医師
3DZとRomans Ferrariが実施したこのプロジェクトにより、子供に優しく、侵襲性がより低く、はるかに効率的な手順にすることで、従来の手順を完全に再構築することが可能になりました。つまり、彼らは石膏ギプスを用いていた従来のプロセスを患者の顔を3Dスキャンすることに変換することができたのです。Artec Evaのおかげで、患者の皮膚に少しも触れずに、細部の特徴まできちんと捉えた患者の顔の完璧なデジタルツインを取得することができました。
それからそのスキャンを基礎にして顔面エピテーゼを作成したことで、プロセスが非接触でより正確になりました。Artec Evaで作成した顔の3DスキャンはArtec Studioで処理され、その後マスクに最適なテンプレートを提供してくれるソフトウェアのGeomagic Freeformにインポートされました。このすべてのプロセスの後に、Formlabs Fuse 1が最終的なマスクをプリントしました。完成品は、患者の顔の輪郭を正確に再現したカスタムメイドのレプリカとなり、顔面エピテーゼの内側にシリコンパッドを配置し、火傷の部分を「マッサージ」させることで、より効率的な治癒を促すことができるようにしました。
3Dプリント可能なモデルを作成する前に3Dデータを処理している様子。
「3Dテクノロジーはこの私たちの新しいワークフローにおいて重要な要素であり、おかげで1年間で100枚以上のマスクを生産できるようになりました。従来の方法では、このレベルの生産を達成することはできませんでした」とRomans Ferrariのマネージング・ディレクターを勤めるクリストフ・デバット(Christophe Debat)氏は言います。
新しい手法が探求と進歩の新たなる機会を提供
その後間もなく、この新しい手法はカンファレンスや技術展示会、特に 2023年版のGlobal Industrie Lyonで大反響を呼びました。Romans Ferrariのチームが達成した革新的な結果に触発され、Artec 3Dと3DZの2社はRomans FerrariがArtecの次世代3Dスキャナをテストできるよう、Artec LeoをRomans Ferrariに提供しました。 このスキャナは、Artecの過去の製品と同様に医療分野で大きな成功を収めています。この実験的な試みの背後にあった目的は、LeoがはたしてRomans Ferrariでのワークフローを向上させ、火傷患者用に3Dプリントされたマスクをさらに迅速かつコスト効率よく作成できるかどうかを確認することでした。
3Dプリントされたシリコン型は、透明プラスチックを使用して最終的なマスクを熱成形するためのポジとして機能します。
Romans Ferrariのスペシャリストらは、Artecの先駆的なワイヤレススキャナをさまざまな条件下で試すことができ、その結果は非常に感動的なものでした。このチームはAIが導入されたこの3Dスキャナの可能性を試し始めたばかりでしたが、スキャナの配線が邪魔になることなく、3DレプリカがHD画面上にリアルタイムで構築されるため、高速で直感的に使用でき、非常に便利であることがわかりました。 さらに、 Leoの独自の処理能力により、彼らは完全に患者に集中することができました。「Evaで子供たちをスキャンする際には、まず最初のベースとなるスキャンを取得して、それを残りのスキャンと結合させます。Leoでは、被写体の患者が動いてしまう場合に停止しますが、Leoが自動的に画像を結合してくれるため、問題ありません。そのスキャンをそのまま続行し、完了することができるのです。これは非常に価値のある機能です」と、このプロジェクトに関与した医療スペシャリストの一人は言います。
Artec Leo
また別の利点は、Leoの点滅するLEDライトがオフになったときに発見されました。「Evaでフラッシュをオフにすると、(スキャナからの)光は一切消えます」とRomans Ferrariの専門家は言います。「Leoにとっての大きな利点は、ちょうど今朝、小さな女の子をスキャンしたときに分かったことです。フラッシュがオフになっているときでも、いくらかの光は残り、彼女はそれらの光に焦点を合わせ続けて目でレンズを追ってくれたのです。このため、Leoは子供たちをスキャンする場合に特に便利だと感じます」
物理的な回復以上の癒し
火傷というものは、間違いなく人の精神的な健康と身体的な健康両方に深刻で長期的な影響を及ぼします。言うまでもなく、重度の火傷を負った子供であれば、その痛みは深刻です。そういった場合、このようなタイムリーに利用できる最先端の治療は、痛みを軽減し治癒を促進するだけでなく、子供たちの感情的なエネルギーをも回復させて通常の生活に戻してあげることができます。
新しい圧迫装置は傷跡の治癒を助け、合併症を防ぎ、皮膚をより柔軟にします。
「医療従事者として、私たちは患者のために日々自分自身を改革していかねばなりません。3Dスキャンは、患者の身体の回復に貢献するだけでなく、彼らの生活の質を向上させ、患者の子供達ひとりひとりの回復に必要となる強さと自信を与えることにも貢献してくれるので、真の医療革命であると言えます」とRomans Ferrariのディレクターであるジョエル・レルメノー(Joël Lhermenault)氏は言います。
Artec 3D社製のスキャナは、先進的な小児医療の分野において初めて登場した製品ではありません。幼い微耳症患者のための耳インプラントの設計をはじめ、神経疾患を持つ子供に向けたヘルメットの作成、カスタム仕様で3Dプリントされた義肢の製造、そして最高品質の呼吸器マスクの開発において、Artec 3D社製のスキャナは常に正確性と速度、そして快適性を提供してきました。
これらすべてのプロジェクトに共通するものは一体何でしょうか? それは、3Dテクノロジーがすべての子供たちに必要なサポート、変化、そして希望をもたらすであろうというアイディアです。
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