3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

海底のその先に:Artec Eva、及びSpace Spiderが オヨ・ネグロの探索に貢献

課題:ある科学者班が自身の画期的なパレオ・インディアンの研究のため、オヨ・ネグロでの古生物学的発見物である人骨と特殊な生物種双方の高精度の3Dスキャンデータを生成する必要に迫られた。

ソリューション:Artec Space Spider、及びArtec Eva

結果:デジタル博物館の展示目録や研究、及び将来的に行われる発掘地の仮想現実(VR)でのシミュレーションでの利用のためにスキャンされた、オヨ・ネグロからの二百以上の化石。

なぜ、Artecなのか:Artec社製3Dスキャナはその高い精度、携帯性、そしてスキャン速度により、オヨ・ネグロでの調査のような科学的用途において優れた性能を発揮する。その課題の多い空間環境を上手く進みながら繊細なディテールのレンダリングを行うことのできる能力により、植物や骨、地質学的形成やその他の海中の洞窟の特徴となるものの記録や研究に最適な、精度の高い3Dモデルの素早い生成を十分に可能とする。

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メキシコの国立人類学研究所(National Institute of Anthropology)。 堅固な連携の上で稼働中のArtec EvaとSpace Spider。画像提供:Rapid Scan 3D社

ユカタン半島の海中の洞窟には、その仕組みを頭に思い描くだけでも心を奪われる。ご想像いただきたい。上昇する海水面がこの地帯の海中にある入り組んだ通路網を浸水させていく中で、サク・アクトゥンとして知られる巨大な洞窟の迷宮内の深い穴は天然の落とし穴と化す。この注目に値するオヨ・ネグロ(スペイン語で『ブラックホール』の意)と呼ばれる場所には、古代生物の地上性ナマケモノや象に似たゴンフォテリウム、バク、剣歯虎などの素晴らしい生物の死骸が時を経て収集されている。

オヨ・ネグロ:海淵の神秘を明らかに

この地は驚異的な後期更新世の化石を蓄積しており、研究心を刺激する未開地となっている。南北アメリカ大陸において最も完璧な形の古代人であるナイアの人骨が発見されてからは、その傾向は更に深まっている。ナショナルジオグラフィック誌の表紙で『小さな一万二千歳のティーンエージャー』として紹介されたナイアは氷河期時代、まだ乾燥地帯であったオヨ・ネグロに嵌ってしまい、結果的に数千年後に再び姿を現し、パレオ・インディアンの研究分野に革命を引き起こすことになった。

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パレオ・インディアンの研究に革命を呼び起こした、かの有名なオヨ・ネグロでの発見物であるナイア。画像提供:ナショナルジオグラフィック誌

過去一万年の間に圧倒されるような数の保存状態の良い化石が水面下三十メートルを超える深みに沈められている状態のオヨ・ネグロは、実際に行うには課題があるものの、探索せずにはいられない気持ちにさせる場所である。このパレオ・インディアン時代の遺産の世界への接触は、様々な優れた研究施設の協同での力添えにより実現した。この中では、海中の化石の回収、及び研究のための遠征が編成された。

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この深みで発見された化石には、象や剣歯虎のものが含まれる。画像提供:Rapid Scan 3D社

中でも際立った共同研究は、イースト・テネシー州立大学(East Tennessee State University, ETSU)とメキシコの国立人類学歴史研究所(Instituto Nacional de Antropologia e Historia, INAH)による合同事業である。この事業が進む中で、化石を正確に、かつ安全にレンダリングする重要性が強調され、そのデジタル化の必要性が緊急の課題となった。次世代のテクノロジーがオヨ・ネグロの化石の保存、並びに研究のための緻密で非接触的な手段を可能とするフォトグラメトリ及び3Dスキャニング技術の導入により主役の座に就いたのは、この段階である。

適切な人材、適切なツール、適切なワークフロー

この研究過程のデジタル化の局面では、ETSUの古生物学者ブレイン・シューベルト(Blaine Schubert)とクリス・ウェッジャ(Chris Wedga)、考古学者のジム・チャターズ(Jim Chatters)、及びドミニク・リソッロ(Dominique Rissolo)から成る研究班が、カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)でオヨ・ネグロの仮想現実(VR)によるシミュレーションをその他のエキスパートや技術者と共に開発する傍ら、現場より入手された化石のデジタル化を行うべく、メキシコシティに集結した。

この業務では、研究班はArtec Eva及びSpace Spiderの両スキャナを採用したが、 この選択には全員がArtec社製テクノロジー機器に馴染みがあったことが影響している。双方のスキャナは、最先端の3Dハードウェアやソフトウェアを3Dスキャニング過程における有益な専門知識と共に提供している、革新的なArtec社アンバサダーであるRapid Scan 3D社より調達された。Rapid Scan社の3Dソリューションスペシャリストであるリック・フェイホ(Rick Feijoo)は化石類の正確なデジタル像のキャプチャのためのスキャナの操作を担当し、この探査において掛け替えのない役割を果たした。

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海中の化石を迅速に、かつ安全にデジタル化する任務を負うリック・フェイホ。画像提供:Rapid Scan 3D社

各日、国立人類学研究所での約八時間にわたる集中的なスキャニング作業でスケジュールの埋まった四日間にわたり、研究班は地上性ナマケモノの死骸やマンモスの臀部の一部などの発見物を含む、二百以上の化石のスキャンを行った。研究班の興奮度を更に少し高めたのは、スキャンされたナマケモノの化石のほとんどが新種であると判明したことである。化石はその大きさや形状が非常に多様であったため、Artec社製スキャナが二台利用可能であったことは研究班の助けになった。入り組んだディテールのキャプチャにおける精度で定評のあるSpace Spiderは小さめのオブジェクトや複雑度のより高いジオメトリのために配備され、Evaは中規模のテクスチャを有するオブジェクトのスキャンの主導権を握った。

リック・フェイホは、Artec社製品でのスキャンは難なく進めることができ、スキャニング、及びデータ処理過程全体もほんの五分から十五分で完了したことに触れた。 この効率性はワークフローを円滑に進めることに繋がっただけでなく、壊れやすい化石から正確なデジタル複製を生成する際のArtec社製スキャナの注目すべき速さを際立たせる結果ともなった。

化石から未来へ:古生物学上の調査の次のステージを形作る3D技術

オヨ・ネグロの研究の今後において、適切なテクノロジーの役割は大きな力として台頭する。海中という条件がもたらす課題を考慮し、科学者やダイバーは当初、高電力のライトやカメラなどの重い機材を水面下に苦労して運びながら、フォトグラメトリ、及び写真撮影に頼っていた。しかし、研究者班全員に既に馴染んでいるテクノロジーであるArtec社製の3Dスキャナの円滑な導入は、形成を本当の意味で一変させた。ワークフローにEva、並びにSpace Spiderを取り入れることにより、化石のデジタル化の精度や速度は格段に改善され、かつてないほどの高解像度で本物のような3Dデータが完成した。そのスキャンデータは今や将来的な研究の方向性に大いに影響を与え、複数のプロジェクトに直ちに役立つ可能性を秘めている。

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Artec Studio上でのスキャンデータの処理作業。画像提供:Rapid Scan 3D社

そういった新たな取り組みの一つが、地上性ナマケモノの研究を率先する施設の一つとして注目を浴びるETSUにおける、充実した化石の展示施設の設立のための骨の目録の作成である。同大学のGray Fossil Site & Museumは先進古生物学研究の最前線に位置し、その意欲的な展望と共に、大学は研究者向けの貴重なリソースとして機能するだけではなく、以上のような興味深い生物についての心を捉えるような学習や知識の共有をも育む総合的なデジタル化石全集を創り上げ、その展示施設を教育、探究、発見の主要な拠点とすることを目的に掲げている。

取得したスキャンデータをカリフォルニア大学サンディエゴ校で開発されたオヨ・ネグロの仮想現実でのシミュレーションに利用することも、心を弾ませるような構想の一つである。この没入型のプロジェクトでは海中の古生物学的遺跡がインタラクティブな3D空間として再現され、ノートパソコン上やウォークイン形式の仮想現実施設など、如何なる場所からも驚くほどの詳細さでの調査を行うことが可能となる。

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ここでは、かつて剣歯虎が歩き回っていたのだ。画像提供:Rapid Scan 3D社

オヨ・ネグロで発見された、名の知れたナイアは我々が草創期のアメリカの祖先、発達、そして発展を理解することに貢献したが、疑問は未だ残る。ナイアや当時の人類が、ユカタン半島の海面下の洞窟の迷宮へ危険を冒して足を踏み入れたのは何故なのか。当時の世界はどのようなものだったのだろうか。オヨ・ネグロの海底で最期を遂げる前には、どのような氷河期時代の生物が当地帯を歩き回っていたのだろうか。

科学者やエンジニア、3Dモデリングの専門業者や仮想現実のスペシャリストによる、このような氷河期時代の断片を安全な形で明らかにしていく過程を高品質の3Dスキャンデータが支援し得る可能性を考えると、驚きを禁じ得ない。かつては想像さえもできなかったオヨ・ネグロの海底への旅は、次々と謎を解き明かしている。

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