時代の架け橋:Artec Ray IIとフォトグラメトリによる韓国の涵碧楼のデジタル化
課題:韓国国家遺産庁は涵碧楼(ハンビョンヌ、Hanbyeongnu Pavilion)の保存、より改善された形での一般公開、及び将来的な修復のために、当建造物を3Dでキャプチャする安全で、かつ正確な方法を必要としていた。
ソリューション:Artec Ray II、及びArtec Studio 19
結果:デジタルでの利用、及び将来的に起こり得る修復を可能とする、涵碧楼の正確で水も漏らさぬような3Dモデル。
なぜ、Artecなのか:Artec Ray IIの長距離用スキャニング性能と精度、そしてArtec Studioでの驚異的速さの処理、及びフォトグラメトリとの組み合わせにより、同楼閣の鮮やかなサーフェス及び複雑なディテールは精密に再現され、3Dモデルの写真のように現実感のある色彩での製作が実現した。
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清風(Cheongpung)村で大切にされている歴史的建造物、涵碧楼。画像提供:Hello3D社
朝鮮半島の中ほどに隠れるようにそびえる涵碧楼の弧を描く庇の下で、繊細な細部それぞれが歴史を囁くように物語る。何世紀も残る職人技に捧げられた、この貴重な建築物の将来は現代の技術の達人の手に係っている。この大切な遺産の保存、及びより良いアクセスの提供、そして将来的な修復業務の土台の構築のために、韓国国家遺産庁はあるArtec 3D社アンバサダーに、この崇拝の対象となっている歴史的建造物のデジタル複製を委託した。
七世紀にもわたる歴史
この畏怖の念を起こさせる楼閣は、高麗時代(九一八~一三九二年)に町から郡へ昇格した清風村の地位の向上を記念するため、一三一七年に建立された。韓国の伝統的な芸術の精神を感じることのできる空間として、楼閣は李氏朝鮮時代(一三九二年~一八九七年)の詩人や学者の間でよく知られた会合の場所となった。
階段状になった木製の床を持つ、広く伸びた翼棟を有する本建築美術は、その優美な飾り気の無さ、及び洗練された様式を何世紀にもわたり賛美されてきた。しかし、歴史的建造物の多くのように、この楼閣も時の試練に耐え、自然の無慈悲な力に持ちこたえなければならなかった。というのは、一九七二年の洪水の際に倒壊してしまい、三年後に再建されたのである。更に十年後には忠州ダムの建設のため、清風文化遺産複合施設(Cheongpung Cultural Heritage Complex)へ移設された。
Artec Ray IIによる高度な遺産のスキャン
この楼閣のデジタル化は、韓国国家遺産庁の国家遺産産業振興班(National Heritage Industry Promotion Team)により執り行われたものであるが、数種の目的を遂行しようとしていた。この貴重な文化遺産を保存し、韓国文化の探究に興味のある誰もが新たな方法でこの歴史的建造物に触れることができるようにすることが、不可欠であったのである。このプロジェクトの目標を実現するため、当班は高品質の出来を保証する、高速で安全、かつ信頼のおけるソリューションを必要としていた。
楼閣の3Dデータ及び写真の収集に数年携わっている当機関は、品質や基準における自身の期待を上回る成果を上げるようなソリューションを探していたが、この歴史的財産をキャプチャする繊細な業務をHello3D社に任せることにした。
この任務に対し選ばれたのは、長距離用LiDARスキャナArtec Ray IIであった。これは巨大な彫像から寺院、古代都市までに至る、極めて大型のオブジェクトや場面をスキャンするための究極のソリューションである。大規模なデジタル化の業務向けに設計されたRay IIは最長一三〇メートルの距離からスキャンを行い、複雑なディテールを驚くべき精度でキャプチャすることができる。このプロジェクトでは、デジタル世界において楼閣の生き生きとした要素それぞれに命を吹き込むために必要となる、写真のようにリアルな色彩のキャプチャには、このスキャナの高解像度カメラが特に重要であった。
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現物の装飾のディテールの度合いを忠実に表現するソリューションを要求される3Dデジタル化プロジェクト。画像提供:韓国国家遺産庁
「我々は毎年、三十~五十の大規模の建築遺産のスキャニング及びフォトグラメトリの業務を行っている」と話すのは、Hello3D社のCEO、クリス・パーク(Chris Park)である。「工程は非常に単純明快で、優れたスキャニングの成果を挙げている」。
当楼閣のデジタル化のため、Hello3D社のスキャニング専門業者はこのスキャナの性能を最大限に活用し、更には次のようなプロフェッショナル向けのコツも数種編み出した。まず、キャプチャはスキャンデータの円滑な位置合わせを確実とする方法で行われた。比較的視界に入らない箇所や形状の入り組んだディテールについては、更に接近してのスキャン、及び予備のキャプチャが行われた。Ray IIでより高所のサーフェスをスキャンする際には、担当班は三脚を使うか、もしくは高くなっている箇所からキャプチャを行うことによって更なる高品質のデータの入手を実現した。取得可能なすべてのディテールがキャプチャされた後には、データの取得しにくい箇所にカメラを使用し、フォトグラメトリを統合して業務を完了した。
適切なソフトウェアの威力
この時点においては、プロジェクトのまたと無いタイミングの良さに恵まれた。処理工程はArtec Studio 19の発売により、容易いものとなったのである。「特に便利なコマンドには、精密位置合わせ機能(precise alignment and registration features)がある。この過程は他のプログラムに比べて遥かに速く、より正確である上、何より、驚くほど利用しやすい。併用したソフトウェアは、RealityCaptureである。Artec Studio 19に新しい機能が統合されたため、今後、当社のニーズに対しては、同ソフトに主に頼ることになるだろう」と、パークは語る。
一般に、処理工程にはメッシュ結合、特に課題となる箇所の製錬化、及び色付けの適用が含まれる。「データ処理速度に、明らかな違いがあった。このスキャナは非常に高速にデータを処理するため、大規模な元データの取り扱いも簡単となり、メッシュ化の作業も迅速で効率的に完了した。この水準の速さと利便性は、高応答性のArtec Studioの導入により実現したようだ」と、国家遺産産業振興班の一員は語る。
過去を保存することで未来を形作る
結果として信頼性のある、ディテールそれぞれに至るまで本物のような、色彩に満ちた楼閣のデジタル複製が完成した。3Dモデルは、保存、仮想現実、もしくは教育や研究などのいずれの領域であっても、様々なプロジェクトに利用可能である。韓国国家遺産庁は明るい未来、そしてこのようなデジタル複製の意義のある用途の双方に思いを巡らせている。
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涵碧楼の3Dモデル。画像提供:Hello3D社
「高度なスキャニング技術の活用により、簡単に、そして安全な形で文化遺産のデータを収集できる。正確で保存状態の良いデジタルの文化遺産は家庭や学校、教育施設や企業から自由にアクセスでき、自身の机上からの閲覧、プリントアウトが可能で、自ら現地に足を運ぶよう好奇心をそそられたりすることにもつながり、その結果、観光産業にも大いに貢献することになる」と、同庁代表は締めくくる。
韓国の文化遺産への関心が引き続き高まる中、3Dテクノロジーは涵碧楼のような遺産地への我々の理解を深めるだけでなく、その重要性や価値への意識を向上させる。文化的建造物の唯一無二の豊かな歴史と財産を誇る韓国は以上のような遺産の保存、及び更なる促進のため、デジタル変革の真っただ中にある。同国の建築遺跡の魅了させるような美しさは見事な3Dで更なる人々の下へ届けられ、地域的発展、及び経済成長を継続的に推進させていくであろう。Artec 3D社は、このテクノロジーがその保護の中心的な役割をも果たしていくことを誇りに感じている。
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