仮想現実での展示用に重さ最大30トンの機械類を Artec社製3Dスキャニングによりデジタル化
課題:重さ最大三十トンの機械類の潜在的な顧客に向けた展示を輸送、及び見本市での展示に伴う物流面の負担を軽減する形で行うこと。
ソリューション:Artec Leo、Artec Ray II、Artec Studio、Blender、Unity、Microsoft HoloLens、及びHTC VIVE PRO
結果:電気ボックスや配線のような細かいディテールを含む、驚異的なリアリズムにより原寸大で描写された巨大な機械を多数備えている模擬的なショールーム。HEMO社は既に多くの主要な産業見本市で仮想現実による出展を行っており、更に多くの展示を近日中に行う予定である。
なぜ、Artec 3Dなのか:Leoを利用して各機械を正確にデジタル化する前に、Ray IIによって広範囲の領域のキャプチャを行うことで仮想世界構築の工程は効率化される。Artec Studio上ではスキャンデータはワンクリックで組み合わせることができ、可能な限り最高の解像度を持つデータを利用して完成した3Dモデルの詰まった、驚くほど詳細なシミュレーションの作成の加速化が実現する。
HEMO社の仮想現実シミュレーションで紹介されている機械の3Dモデルの一つ。モデルは、HEMO社のご厚意で掲載
工場勤務の方や生産業に従事されている方、あるいは製造業の展示会に最近参加されただけの方であっても、このような分野に共通するものが、巨大な機械類であるとお気付きになるのではないだろうか。
製作や販売されているものに関わらず、以上のような施設にはベルトコンベアーや発電機、コンプレッサーやその他の嵩張る機器が常に所狭しと並んでいる。しかし、そういった機器は実際にはどうやって運ばれてきたのだろうか。
工場内では、そのような機械類はフォークリフトからクレーンに至るまでのあらゆる手段、もしくは物品を工場の生産現場で移動させるための車輪付きの台車であるマシンスケートによっての移動が可能である。しかし、複数の場所の間での輸送では、巨大な何トンもある重さの機械類には木枠による梱包の上での出荷が必要となることが多い。
HEMO社製工業洗浄システムの稼働中の様子。画像は、HEMO社のご厚意で掲載
皆様のご想像通り、この作業は特に異なる展示会の間を絶えず行き来している機械販売業者にとっては大変なものとなる。その上、輸送には貨物トラックが必要となるが、その金銭的コスト、環境コストはかなりの額となる。
以上のような問題点に対処する目的で、洗浄システムの専門企業であるHEMO社は輸送による資源消費を削減する、独自のソリューションを考案した。それは、代わりに機械類を仮想的に展示することであった。
工業規模のデジタル化
ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州に拠点を置くHEMO社は数十年もの間、大手製造企業にコンサルタントを行い、その経済的でハイブリッドな洗浄システム上のニーズを満たすための支援を行ってきた。
洗浄システムの専門企業であるHEMO本社。画像は、HEMO社のご厚意で掲載
更なる後処理、もしくは出荷に向けての輸送前の金属製のパーツに洗浄を施すために開発されたHEMO社の機械類は過剰な油分や粉塵、削りカスの除去に非常に効果的であるが、それぞれの重さが五トンから三十トンもある巨大なものであるため、移動させることは非常に困難である。
展示を実現するための解決策が必要となったHEMO社はArtec社アンバサダーのAlgona社に連絡を取ったが、その際、デジタル空間で出展できるように機械類をデジタル化することを提案された。
「配線、及び配管の数を考えると、機械類のキャプチャは3Dスキャニング無しではどうしても不可能であっただろう」と、Algona社の専門業者であるRamon Spillerは説明する。「オブジェクトの完全なサイズを干渉の起こっているジオメトリに起因するディテールの欠落も生じさせずにキャプチャし、 手作業によりモデル化するには多大な労力がかかっただろう。こういった機械類には、CADデータは存在しない」
仮想現実で利用する3Dスキャンデータの用意
機械類のデジタル化に際しては、三つの主な課題が生じた。それは、精度、計測、そして速度である。Algona社が極めて携帯性の高いArtec Leo、百三十メートルの距離からのスキャンが可能なArtec Ray II、及びその併用により最大限の効果を発揮させるための講習を提供したおかげで、HEMO社はこの三種の課題すべてを克服することができた。
Leoのワイヤレスの機能性により、担当班はスキャナの届きにくい箇所を詳細にキャプチャすることができ、大規模なデジタル化工程はRay IIの視覚慣性システム(VIS, visual inertial system)によって素早く、簡単なものとなった。
Artec Ray IIによりスキャンを施されるHEMO社製洗浄機械。画像はHEMO社のご厚意で掲載
メッシュをMicrosoft HoloLensやHTC VIVE PROのヘッドセットで利用できる程に微細にし、かつ仮想世界への備え付けに対して十分詳細なものとするため、HEMO社はArtec Studioで自身のデータの処理を行った。この高度なデータキャプチャ・処理用ソフトウェアによりスキャンデータは組み合わされ、最高の解像度を持つデータを利用して生成された、極めて実物のようなメッシュが完成した。
Artec Studioは高性能なアルゴリズム、及びメッシュ編集に必須の機能も多種装備しており、Leo、及びRay IIによるスキャンデータの円滑なメッシュ化と同様に、テクスチャの適用、メッシュの最適化工程は確実な形で行われ、OBJ形式のファイルへのエクスポートもシームレスに行われた。
「(あらゆるスキャンデータの概略的な位置合わせを行う)VISのお陰で、Ray IIは自身の役割が既に『分かっている』状態となり、準備の必要はほぼ無かった」 と、Spillerは語る。「もし、ケーブルを利用する通常のハンドヘルド機器を使用していたなら、必要な領域すべてのスキャンも上手くいかなかっただろうし、Artec Studioはスキャンデータ処理においての我々の大事な道標となっている」
その後、業務班はBlenderを利用することにより、出展用の『仮想プレゼンテーションルーム』の作成前にシャッタードアのようなキャプチャの困難な領域周りのテクスチャやジオメトリの微調整を実現した。
この空間はHEMO社の"Technikum"(テクニカルセンター)に少し似ている形で設計され、設置されている機械類に常に注目が行くよう、他の物品はまばらにのみ置かれた。準備が完了すると、洗浄設備のモデル、及び仮想空間環境はUnityへと転送され、業務班は同ソフトウェアで仮想現実アプリケーションを作成した。
展示会で検討が行われているHEMO仮想現実シミュレーション。画像はHEMO社のご厚意で掲載
その結果、完成したのは、展示機械へ『歩み寄り』、近くでよく吟味し、実物を全く見なくても自身の工場に適合するかを検討できるリアルな仮想世界である。システムも覆いの有無にかかわらず3Dスキャンされており、ボタンをワンクリックするだけでの稼働・停止も可能で、アプリにインタラクティブな次元を追加している。
「今では、展示会への機械類の輸送は不要となり、ヘッドセットを準備し、顧客に仮想空間の中でご覧に入れるだけで良い」と話すのは、HEMO社3Dモデリング専門業者のクリスチャン・コッホ(Christian Koch)だ。「今年は初めての試みであったが、人々は通りがかりに『何が見えるのですか?』、『試してみて良いですか?』などと話しかけてきた。この催しは、本当に人目を引いていた」
仮想現実の未来を予測する
ドイツ、米国、メキシコで機械類を展示して高い評価を得たHEMO社は現在、自社製品の更なるデジタル化、並びに他の仮想現実アプリケーションの試験的運用を計画中である。
コッホによると、HEMO社はゴーグルを装着した顧客の『視点を通した』リモートによる維持管理、及び問題の診断に3Dスキャニング主導の手法を適用することも考慮中とのことである。その一方で、コッホはシミュレーションの実行方法の追求を続けていく。
更なる開発による仮想現実の適用の未来の形を示す、レンダリング済画像。画像はHEMO社のご厚意で掲載
Apple Vision Proのようなハードウェアの比較評価を行うと同時に、当企業はアプリ統合の質の向上のため、Microsoft社のスペシャリストにも連絡を取っている。同企業の仮想現実における能力が促進される中、コッホはHEMO社による仮想展示に明るい未来を見出しており、最へき地も含めた世界中の顧客に、同社のすべての提供品・サービスをいつか利用可能としたい、と考えている。
「当社にはあらゆるパーツや異なるサイズの機械類があり、それぞれの用途も異なるため、そのすべてを3Dモデルで入手可能な状態としたい」と、コッホは締めくくる。「タブレット上の製品をワンクリックで選ぶことのできる、一つのショールームが欲しい。それが、私の3Dスキャニングと仮想現実に対する展望だ」
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