EvaとSpace Spider: 息を飲むビジュアルエフェクト
目的: 軽量、構造化されたストラクチャーライトの3Dスキャナを使用して、アニメーションやその他のVFXで利用するための人や小道具やオブジェクトのリアルな3Dモデルを作成。3Dモデルは映画制作中のあらゆるところで利用でき、続編などその後も利用できるようにアーカイブすることができます。
利用ツール: Artec Eva、 Space Spider
映画のキャラクタがばらばらに砕け散ったり、猛獣になったり、あるいは屋上からジャンプして無傷で着地するのは一体どうやっているのか、不思議に感じたことはありませんか?このようなスタントは、TNG Visual Effectsのような企業がなければ不可能でしょう。TNGはEvaとSpiderを使ってキャラクタや小道具の3Dモデルを作り、映画に取り入れ、爆発させたり、粉々にしたり、変形させたりします。TNGの作品は、『マンオブスティール』、『トワイライト・サーガ』、『ドラゴン・タトゥーの女』、その他多くのハリウッドのトップを行く大ヒット作品で見られます。その舞台裏を覗いてみませんか?
オリジナル写真 / スキンシェーダ・コンポジット処理3Dスキャン
映画産業における3Dスキャン
「3Dスキャンによって、ディレクターは思いどおりのことをする能力を得ました」と、1986年に3Dのコンピュータ・グラフィックスを始めた、 TNG創設者のニック・テシは述べます。「映画製作にとって現代は新しい時代です。ディレクターは、心の中のいかなる思考過程やコンセプトも現実化できる機会を得て、ストーリー・テリングの過程で自分たちのビジョンに忠実に従うことができます」
映画プロデューサーはストーリーテラーであり、シーンの撮影に何を使用するかという決定を下す人は多くはない、とテシは付け加えます。それはほとんどの場合、3Dスキャンを使用するかどうかを決める視覚効果監督の仕事です。プロジェクトの予算も重要な役割を果たします。予算が厳しいようであれば、視覚効果監督は派手でない効果を使うことを選ぶでしょう。その時は、完全にコンピュータによって創作されたシーンは用いず、実際に家や車を吹き飛ばすかもしれません。最初のカットが完璧に撮れるならば、これによってわずかに予算を抑えられる可能性がありますが、もう一度取り直しとなれば無駄遣いに終わります。デジタルで作られた本物そっくりの乗り物、小道具、あるいはキャラクタを使えば、これぞというシーンが撮れるまで何度でも撮影できるため、ディレクターは同じシーンに対してより自由を得ることができます。
どのようにそれを実現するのか
TNGはARTECスキャナを今では5年使い続けていて、自分たちを「新しいもの好き」と呼んでいます。通常TNGは、Evaを頭部と体に使い、Spiderをより繊細さを必要とする小道具や体の細部をスキャンするのに使っています。EvaとSpiderの強みの中でも特に、持ち運びに便利な小ささ、最新のソフトウェアによる優れたデータ、高精度とプリ・キャリブレーションの3つをテシは挙げます。
TNGが手がけてきた仕事の中で最も難しいものの一つは、多くの複雑な鎧を着込んだキャラクタのスキャンです。これに対してTNGは、EvaとSpiderを組み合わせて用い、質の高いデジタル・ダブルを顧客に提供しています。対象の3Dスキャン過程を始めるにあたり、3Dモデラーと3Dテクスチャ・アーティストの仕事に役立つオリジナル写真が最初に撮られ、最後の品質チェックにより、3D対象物が現実の対象とマッチされます。対象物が3Dスキャンされた後、スキャンデータは整えられ合成されます。3Dスキャン技術者が、可能な限り100%近似していると認めると、スキャンは完成し加工されます。
ジオメトリ / レンダリング
データの加工にかかる時間は、必要とされる解析度によります。データが加工されると、3Dモデラーの出番となります。プロフェッショナルな写真撮影により得られた画像を使い、3Dスキャンによる対象物の完璧なシルエットと寸法と組み合わせ、モデラーは多くの要素で3Dモデルを作り、3Dテクスチャ・アーティストのためにジオメトリを展開します。
次にテクスチャ・アーティストは対象物(または投影された画像)に色付けし、UVコーディネートが切れる部分の継ぎ目も彩色します。完成したテクスチャは3Dモデラーに戻され、彫刻によりより細かな部分を施されます。モデルが完成すると、通常の地図と置換地図が生み出され、3Dモデルが複数の角度から見られることを可能にします。
3Dスキャン / リメッシュ / ローポリゴン / ハイポリゴン / テクスチャー
モーションキャプチャ
「人間の体や頭部を主にスキャンする3D企業として、当社がモーションキャプチャにも事業を拡大するのは極めて自然な流れでした」とテシは述べます。この技術により、静的で動かない対象物に命が吹き込まれます。3Dスキャンは人の皮膚や衣服の表面をキャプチャします。「それらが一つになり、UV展開してリメッシュし、テクスチャリングに備えます」とテシは続け、「このステップの後でモデルを表示しますが、次のステップでは関節(骨格)を挿入することでそのキャラクタの皮膚に動きをつけます。このプロセスはリギングと呼ばれます」
コンピュータによって作られたデジタル・ダブルの中に骨格がうまく固定されれば、ウェイティングというプロセスが始まります。これにより、それぞれの特定の関節がどれくらいの皮膚を動かすのかがわかります。調節された重さが生きているかのような動きを視覚的に生み出し、キャラクタは命を持ちます。実際に関節をつかむ事なしにこれらの関節に動きを持たせるためには、GUIが作られ、配向束縛を通して関節に接続されます。これでアニメータは、より簡単で直感的に3Dキャラクタを動かすことができるのです。その後、レンダーファームと呼ばれるコンピュータネットワーク上にフレームごとに動画がレンダリングされます。
デジタルキャラクタの創造と開発
ゼロからモデルされたキャラクタを持つこともできれば、その生み出されたキャラクタのひな形を持つこともでき、スタントやアニマトロニクスを使ったり、人物を3Dスキャンしたりすることもできます。この中で最も速く最も効果的な方法が3Dスキャンです。
特に、シーンの中に有名俳優がいる時には、違和感なく馴染むようオリジナルの俳優とぴったりと調和していることを確認しつつ、キャラクタの顔の表情、サイバーな髪や服を生み出し、ライティングや最終的なサイズに合うようにキャラクタを完全に構築することは、多大な労力を必要とします。例えば、皆様が取り組んでいるデジタルコピーが、メインキャラクタとして長時間スクリーンに登場しなくてはならないときには、デジタルコピーをオリジナルの俳優に合わせることに多くの時間が費やされるでしょう。
カメラから少し離れたところにいたり、スクリーンにほんの僅かな時間しか現れないキャラクタもまた登場します。この場合は、細部を完成させることやぴったりと調和していることにはそれほど多くの時間は必要ではないのですが、完璧な幻影として登場し続けるでしょう。
あるショットが必要だけれども俳優が手配できない場合、保険スキャンというコンセプトがもう一つのアプローチ法です。これは、必要と思われるものすべてを予めスキャンし、必要性が生じる時までアーカイブしておく方法です。このようにすることで、プロジェクトを完成できる方法を常に確保しておきます。アーカイブされた情報は再利用されインタラクティブ・フィールドに移動されるか、または映画をもとにしたビデオゲームの製作に使われたり、あるいはその逆になったりするかもしれません。
3Dスキャン / リトポロジーメッシュ / レンダリング済み
どのようにしてデジタル・ダブルを本物そっくりにするのでしょうか?
3D キャラクタを作るには3つの要素がある、とテシはいいます。第一にキャラクタのデザインが確実に実物の人間らしく見えるようにすることです。体の全体構造と皮膚の見え方はすべて実物の人のようでなければなりません。髪からサイバー衣服にいたるまで、あらゆる部分が自然な動きを求められます。実物のキャラクタとヴァーチャルなキャラクタは、見る人が、どちらがどちらかわからなくなるようにしなければなりません。あるいは、そもそもそんな疑問も持たないように。
第二の要素は、フルボディ・アニメーションです。すなわち、硬いにせよ、ぎくしゃくしているにせよ、あるいは月にいる宇宙飛行士のようにスムーズすぎるにせよ、体がどう動くのか、ということです。
オリジナル写真 / スキンシェーダ・コンポジット処理3Dスキャン
そしてなんといっても、顔の表情は本当に真に迫っていなければなりません。顔というのは、毎日誰かと会うたびに見ているのですから、それがどういう動きをするのか誰でも知っています。顔を見ることでその人の感情を理解するのはたやすいことですが、3Dにおいてはそれを作り出さなければなりません。正確に作られなければ、顔の上半分、とくに、数千キロ先をじっとにらんでいるような、死んだように無表情な目や額はすべてを台無しにしてしまうかもしれません。目は均衡がとれていて、とりわけ隅の方こそ可能な限り細部が必要とされます。そして、鼻の大きさと形は、左右対称ではない鼻孔の適切な位置を考慮に入れなければなりません。
オリジナル写真 / スキンシェーダ・コンポジット処理3Dスキャン
ビジュアル効果の将来
3Dスキャンと3Dモデル技術が発達するにつれ、どのキャラクタがコンピュータによって作られ、どれが本物なのかを見分けるのはほとんど不可能になり、私たちに非常に個人的でリアルな経験をもたらすでしょう。背景、前景、キャラクタなどのすべてがデジタル化され、私たちはビデオゲームのように映画やテレビをみることになり、あらゆるメディアが完全なデジタルエンターテイメントを提供する日はいつ起こるともわからないでしょう。「3Dスキャン、モーションキャプチャ、他の視覚効果を通じてより多くの視覚効果が使われるようになれば、より多くの人がそれに追随するでしょう」とテシは言います。
リトポロジー、テクスチャ、レンダリング処理済みスキャンデータ
3Dスキャンサービスのコストと所要時間、そして製品がより小型化している(それでいて高品質の製品を提供している)ことを考えるならば、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカなどハリウッド以外の米国外フィルムメーカが、映画の視覚効果の製作のために3Dスキャンを用いる流れに乗って追いつくことは十分にあり得えます。価格低下、レンタル代理店、サービス部門、そして3Dモデルを作るあらゆる知識を知っている3Dスキャン技術者なしにこの技術が使えるようになれば、もっとアクセスしやすくなるでしょう。「映画産業に比べると、テレビでは昔はとてもビジュアル効果が少なかったのですが、時間が経つにつれ、テレビのエピソードやコマーシャルでさえもビジュアル効果を使うようになりました」とテシは言います。「最新技術を使うためより大きな予算が割かれ、この市場を面白いものにし続けているのです」
コンピュータ生成スキャンデータ – リメッシュとテクスチャ処理
オリジナル写真
コンピュータ生成スキャンデータ – リメッシュ処理
3Dスキャンデータが自動的にフルカラーとセットになり、プロダクションにおいて有益な高品質のデジタル資産を提供できれば、非常に画期的なことになります。配信時間がもはや障壁でなくなるのですから、コンピュータによって生まれる資産の可能性は尽きることがありません。
近い将来、映画、コマーシャル、テレビ番組は90〜100%デジタル化され、視聴者が自らのエンディングを作り上げることになる、とテシは信じています。「あっという間に、ヴァーチャルリアリティを通じてデジタル画像の世界がすべての産業にとってアクセス可能になります」と彼は言います。「キャラクタから武器、ロケーションに至るまで、ショーやプロジェクトは完全にコンピュータによって作られるでしょう。人間的な要素と言えば、モーションキャブチャや人の声だけになるでしょう。ストーリージェネレータは現在も存在しますが、数十年後にはそのようなプログラムが大ヒットする台本を書き上げるでしょう」
今日、3Dスキャンはデジタル資産を生み出すためのスタート地点として使われています。しかし、このようなテシの予測が現実化するとしたら、皆様は完全にデジタル化された世界へのご用意はできていますか?
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