彫刻家が、#WOODVETIAキャンペーンで匠の技と3D技術をどのように合体させたかについて話してくれました
造形作家のInigo Gheyselinckさんは、スイスの森林産業がスイス産木材を宣伝するために開催した#WOODVETIAキャンペーンで、3Dスキャンを活用し、驚くほどリアルなスイスの歴史上の人物の木造彫刻を作りました。
歴史上の人物を彫刻するために、Gheyselinckさんはモデルと似たような体型の人物をモデルとして選びました。その一方で、頭部は粘土で彫刻しました。その後、Gheyselinckさんは、Artecの正規代理店3D-MODEL AGから購入したArtec Eva 3Dスキャナを使って体と頭部を3Dスキャンしました。これらの各スキャンには約15分かかりました。頭部と体のスキャンデータはArtec Studio 11ソフトウェアのオートパイロットモードで統合させました。完成した3DモデルをCADと互換性のあるCNC加工機に送信し、そこで自動的に木材彫刻を作りました。各フィギュアが加工されるのに3日かかりました。最後に、特に表情を始めとするいくつかの部分を手で修正しました。この作成方法の詳細は こちらでお読みいただけます。
スイスの政治家で鉄道を同国に導入したアルフレッド・エッシャー(1819~1882年)をCNC加工機で彫刻中。
多くの人がキャンペーンに関心を示し、アーティストがこのキャンペーンに参加したきっかけについて質問しました。Forbes誌は拡張現実と3Dスキャンを用いたアートに関する記事の中で、#WOODVETIAを取り上げました。最近行ったインタービューの中で、Gheyselinckさんは、このプロジェクトに対する動機、葛藤、近代技術の役割について話してくれました。
質問:このキャンペーンに参加したきっかけは何ですか。
伝統的な芸術と近代技術を組み合わせることにより、可能性が大きく膨らむと同時に、アーティストの中では葛藤が生まれています。
答え:伝統的な芸術と近代技術を組み合わせることにより、可能性が大きく膨らむと同時に、アーティストの中では葛藤が生まれています。ですから、僕の芸術能力と技術の可能性の両方を最大限に活かすことを考えてデザインプロセスを決めました。美術学校で技を磨いた芸術家としての自負に疑問が生じたことが特に大きな葛藤でした。そして、この葛藤に自ら飛び込んでいきました。
質問:このキャンペーンで何を実現したかったのですか。
最先端技術を使ったこの方法でこれまで作品を作ったことがありませんでした。まったく経験したことがないことで、最高に興奮しました。
答え:何よりも、誰もやったことがないことをやってみたいと思いました。このため、たくさんの新しい方法と技術を試行錯誤で学んでいきました。最先端技術を使ったこの方法でこれまで作品を作ったことがありませんでした。まったく経験したことがないことで、最高に興奮しました。制作過程から言えば、このプロジェクトは極めて困難で、これまでの僕達の限界を押し広げるものでした。
質問:使用した木材は何ですか。
答え:それぞれの彫刻で、異なる木材を使用しました。#WOODVETIAキャンペーンの目的は、さまざまなスイス産木材を紹介することでした。ですから、それぞれのモデルに合った木材を選びました。
質問:木材を扱う芸術的スキルがありましたか。これにより、作品制作に限界を感じましたか、それともより優れたものとなりましたか。
近代技術は、完成作品のみならず、制作過程に至るまで、未知なる可能性を開いています。
答え:木材を彫刻した経験はありませんでしたが、その必要もありませんでした。通常、僕は粘土を使って、不要な部分を削ったり、必要な部分を足したりします。その点が木材を扱う芸術とは異なっています。芸術的技術的な制作過程の観点からは(粘土を使ったモデル作成、スキャン、3D彫刻)、デザインに集中でき、素材による制限は感じませんでした。素材(木材や大理石)を直接扱う従来の方法とは異なり、もっと余裕を持って作業することができました。これらの技術を使う最大の利点は、ほとんど素材とは関係なく制作過程を進めることができる点です。
質問:先に、この新しい技術は「何百年経った芸術作品を保存することができる」と言われましたが、本当にそう思いますか。
答え:大きく言えば、美術は芸術と工芸で成り立っています。これは技術に代わったり、保存したりすることはできません。今回のケースで言えば、100年前であればより多くの時間とアーティストが必要となるような彫刻を技術により作ることができました。近代技術は、完成作品のみならず、制作過程に至るまで、未知なる可能性を開いています。僕にとっては、これは美術と簡単に比較できないレベルにあります。