仮想現実(VR)と拡張現実(AR)対応の精巧な3Dモデルをたった数分で。Artec Evaを使用した、Pikcells社の方法
何かを購入するとき、それは洋服や新しい車でも、家具一式だとしても、従来のショッピング体験は時にして退屈で、面倒なことがあります。
町中のさまざまな場所にある、複数の店舗やショールームへあちこち行くために、まず渋滞に巻き込まれるかもしれませんし、やっと到着しても、必ずしも探していたものを入手できるわけではありません。
しかも、そんなショッピング体験でさえも、コロナ対策のロックダウンによって何ヶ月も不可能となってしまいました。
Pikcells社のデジタルアーティストであるジェーン・カーバー(Jane Carver)氏がArtec Evaでソファをスキャンしている様子
それからというもの、以前はVR(仮想現実)とAR(拡張現実)をさほど重視していなかった多くの企業が、新たな関心を持つようになりました。実際に現実的なソリューションを開発するために必要な投資はやたら難しい上に、さほど価値もないと以前はバッサリ言われてしまっていたVRとARは、今になって特に小売市場で復活しています。
その参入コストは業界の大手プレーヤー以外にとってはありえない額と思われるかもしれませんが、まるで写真のようにリアルな3Dコンテンツの作成やデザイン、またオンライン・インタラクティビティを専門とする独立した専門家達が素晴らしいアウトプットを提供してくれるため、予算が低めの小規模の会社でさえ、この市場のリーダー達と競争できるようになりました。
そんな専門会社のひとつである Pikcells社は、過去に受賞歴を持ち、英国を拠点とするコンテンツ作成のエージェンシーです。インタラクティブなコンテンツと、コンピュータグラフィックスの環境を非常にリアルなものにし、専門家達さえも騙すことができます。彼らのクライアントには、Wren kitchensやGE、SubZero / Wolf、Kronospan、Masterbrand Cabinets、LG、またはSamsungなどが含まれます。
Pikcells社がコンピュータ生成イメージ(CGI)の詳細を担当した、キッチンの食べ物
2003年以降、大小にかかわらず様々な企業が現実世界の中に存在する彼らの企業製品にそっくりな3DモデルをPikcells社に求めるようになりました。 それらには、オーダーメードの家具や、キッチン全体とそこにあったインテリア、そしてテーラード服などがありました。
Pikcells社に属するインテリアデザイナー、CGアーティスト、そしてソフトウェア開発者達から構成されるベテランチームは、コンピュータ生成イメージ(CGI)の高度な天才集団であり、高機能なインタラクティブソリューションを提供するとして、複数の業界で名を馳せてきました。
Pikcells社が制作した非常に現実味のあるキッチンのCGI
ほんの数週間もあれば、同社で働くスキャンと3Dモデリングのスペシャリスト達は、倉庫一杯にある製品を、VR/AR環境やインタラクティブアプリに対応できる見事な3Dモデルに変換させることができます。
そんな魔法を成し遂げるために、彼らは写真測量や3Dモデリング、そしてハンドヘルドの3Dスキャニングなどの手段を使用します。
ソファ用クッションのリアルな3Dモデルを作成するPikcells社のデジタルアーティスト
写真測量は、特にテクスチャに関しては、実世界のオブジェクトをキャプチャするためのソリューションとして実証されています。3Dモデリングは、ビデオゲームから映画のCGIなど、すべてのデジタルモデルを作成するための比類のない方法であるとして、世界中で知られています。
しかし、どちらのツールにも欠点がないわけではありません。最大の欠点と言えば、長い時間がかかってしまうだけでなく、有機的で複雑な表面をキャプチャしたりモデリングしようとするときに伴うトラブルです。
一方、3Dスキャンは、そのような点で両方のツールをはるかに上回っています。しかもそれは大げさではなく、むしろ控え目に表現しています。Pikcells社が彼ら独自の3Dスキャンテクノロジーとアプローチを採用する前に、彼らはまず市場で当時最高と呼ばれていたソリューションを注意深く調査しました。
その検索を支援するため、Artecよりゴールド認定を得た販売代理店であるEuropac 3D社の3Dスキャン専門家に連絡しました 。
Europac 3D社のマーク・ベケット(Mark Beckett)氏は、次のように述べています。「私達がPickcells社にハンドへルドの3DスキャナであるArtec Evaを勧めたのは、私達が彼らと初めて会議をしたときでした」彼らが私たちにワークフローを見せ、そしてどんな結果を求めているのか説明してくれたとき、Evaが理想的なツールであることは明らかでした」
Artec Evaでキャプチャされた、ソファを含む3Dインテリア
Artec Evaは軽量の カラー3Dスキャナで、 数百万のデータポイントを毎秒キャプチャします。このスキャナの使い方は簡単に習得でき、操作も簡単です。Pikcells社のEvaは、ソファやあらゆるサイズの家具、バスルームユニット、アパレルなど、何百ものオブジェクトをスキャンしてきました。
毎週のように、彼らはEvaを使用してプロジェクトに費やす時間を数時間から数日の単位で短縮しつつも、前例のないレベルの素晴らしいクオリティを得てきました。
Artec Evaで手作りの敷石をスキャンしている様子
Pikcells社のクリエイティブディレクターであるリチャード・ベンソン(Richard Benson)氏は、Evaがもたらしてくれたことについて、このように説明しました。「Artec Evaを導入する前は、特定のオブジェクトのデジタル化には長いプロセスが必要でした。私達は従来の測定ツールを使用してデータを収集し、それを3Dモデリングのソフトウェアに転送して、時間をかけてジオメトリとして解釈していました」
Artec Evaスキャンからできた敷石の3Dモデル
そしてベンソン氏はこう続けました。 「Evaは私たちのワークフローにおいて不可欠な部分で、Evaのおかげで文字通り数秒で速く、そして正確なメッシュを作成することができます」
Threadmark社のアプリでオーダーメイドのシャツをデザインしている様子
Evaが携わったことのある、もう1つの注目すべきプロジェクトには、WebGLによって作られたアプリ用に使用されるマネキンのスキャンがありました。スタートアップ企業のThreadmark社は、顧客が望み通りのオーダーメイドシャツを簡単にデザインできるようにする、オンラインアプリを必要としていました。そのアプリ自体は、10億種類を超えるさまざまなスタイルと布製品の組み合わせを処理できるように設計されています。
Threadmark社のオーダーメイドシャツ制作アプリを作成するためにマネキンをスキャンしている様子
あらゆる角度からシャツを表示したり、ズームインをしたり、検査まですることができるので、顧客は思い通りのシャツをカスタマイズできる、ユニークな能力を得ることができるのです。それはまた、オンライン製品の明瞭性も向上させます。そのため、最終的に顧客が新しいシャツを受け取ったとき、製品の満足度はこれまでになく高くなるのです。
Threadmark社のオーダーメイドシャツをデザイナするアプリ
その詳細についてはこちらをご覧ください。アプリをトライすることもできます。
「これは、WebGLとフォーカスされたデザインスキルの相乗効果によって、3Dスキャンが実現できることの画期的な例です。このアプリケーションはオーダーメイドシャツ用ですが、あらゆる種類の衣類や家庭にあるインテリア、またはオフィスや自動車のインテリアにも最適です。私達はクライアントと共同で、プロジェクトの技術的要件はもちろん、もっと深いソリューションまで計画します」とベンソン氏は言います。
Artec Evaがスキャンした革のソファと椅子の3Dモデル
軽量なEvaの持ち運びやすさのおかげで、Pikcells社のスキャンの専門家達はクライアントの現場にそれを持ち込み、たった数時間で家具や他の製品が置かれているショールーム全体をデジタルでキャプチャできるのです。
Artec Evaでスキャンされた、Pikcells社がデザインした3Dリビングルームとソファセット
Pikcells社は、携帯電話やタブレットで利用できる、オンラインのARウェブストアの実演も手掛けました。これは、顧客がどこからでも買い物をすることや、会社の製品のリアルな3Dモデルを、まるですぐ目の前にあるかのように自由自在に重ね合わせたり、位置を変えたりすることを可能にしたということです。
リチャード・ベンソン(Richard Benson)氏は、次のように述べています。「オンラインの実演では、3Dスキャンやモデル化された家庭用家具が例として示されていますが、これらの製品は企業が提供するものであれば何でも構いません」
彼は続けます。「それは棚に並ぶ小売製品であろうと、フォーマル又はカジュアルな服飾であろうと、さくらんぼのサイズのものから、あなたの自宅前にある新しいフェラーリのサイズのものまで、いかなるものでも私達はそれをはっきりとした誇張現実として実現させ、顧客が簡単に触れることを可能にします」
Pikcells社により拡張現実で表示された敷石
Pikcells社のデジタルアーティストであるジェーン・カーバー(Jane Carver)氏は、遠隔地でのスキャンプロジェクトのために、Artec Evaを持ち運んで行けることについて、次のように説明しています。 「Evaをクライアントの現場に持って行くと、必ずと言っていいほどクライアントは私達がスキャンする様子を見たがりますね」
そして彼女はこう続けます。「クライアントはその様子に魅了され、目の前にある彼らの製品のリアルな3Dモデルがすばやく、いとも簡単に作成されているのを見ると、これなら間違いないという自信が得られます。3Dモデルを上手くキャプチャするための秘訣は、事前に計画をきちんと立てて、下面を含むオブジェクトのすべての部分を確実にスキャンできるようにすることです」
Pikcells社の誇張現実ウェブストア: https://www.pikcells.com/lab/augmented-reality-webstore
すべてがキャプチャされたら、Artec Studioソフトウェアで、グローバル位置合わせを行います 。その後、必要に応じてスキャンの調整をして、スキャンプラットフォームやその他の不要なオブジェクトを削除します。その次に、自動位置合わせを使用してスキャンを結合させます。
カーバー氏によると、 「自動位置合わせは、通常、ただオブジェクトを元のスキャンの位置に戻すだけで、魔法のように機能してくれます」
この手順の後には、「通常はシャープメッシュ化を使用して、折り目や木目を正確に、約0.5の解像度に保ちます。数値が小さいほど、詳細ははっきりしますが、処理時間は長くなります」この時点から、不要な背景部分がある場合に備えて、必要ならば外れ値の除去やスモールオブジェクトフィルターを使用します。
オーダーメイド家具を選ぶためのPikcells社のインストア・コンフィギュレーター
最終的な3Dモデルの準備が整ったら、「すべてメッシュ化して綺麗に」元のテクスチャを取り戻します。カーバー氏によると、「テクスチャタブに戻って、テクスチャをつけたい3Dモデルの作成に最初に使用したスキャンを選択します。初期設定では「テクスチャの正規化を有効」がオンになっており、出力テクスチャのサイズは可能な限り大きくなっていますが、これは場合により調整できます」
その後、Artec StudioからOBJファイルをエクスポートします。これは、3ds Maxなどの別のアプリケーションに直接取り込むこともできます。もし最高の結果が求められる場合には、スキャンデータの量が最適化されるよう、スキャンされたモデルは再スキャンか、調整がされます。
Artec Evaによってスキャンされた、ソファセットの3Dモデルを備えたPikcells社のインストア・コンフィギュレーター
これから数か月、数年後のVRとARの将来について、Pikcells社はどのようにみているかについて、リチャード・ベンソン氏はこう言います。「現在起きていることは、将来さまざまな業界で起こることの、ほんの始まりに過ぎないと信じています」
彼はさらに詳しく、このように言及しました。「速くて簡単なオンラインショッピングの需要は今、非常に高まってきています。そして多くの製品には、リアルでインタラクティブな3Dコンテンツが必要なのです。オンラインエクスペリエンスが従来のお店での買い物を超えたものになって欲しいのなら、顧客は購入品の正確で現実的なデジタルバージョンを見る必要があります。Pikcells社は、それが実現できるのです」