3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec Evaが明らかにする829年前のバイキングを受け継ぐ難破船の秘密

ドイツ、メクレンブルク・ウェスタン・フォアポンメルン州のヴィスマール港の延長の際、考古学者は多くの難破船を発見しました。最後に発見された一隻は、わずか9.8 フィート (3メートル) の深さに沈んでいました。

バルト海の海水と沈泥は、港の海底環境が嫌気性でアルカリ度が非常に低く、バクテリアや腐敗がほとんどない上に木材を喰むシバンムシもいないため、難破船の材木をほぼ完全に保存していました。

約78.7フィート (24メートル)、長さ13フィート (4メートル) の幅を持つ大型のオープンデッキの船の歴史は、1188年頃までさかのぼります。3Dスキャンは後に、それが全てまさかりと手斧で建築されたことを示し、樹木年代学は船のオークと松材が西スウェーデン産であることを明らかにしました。サイズから推定された乗組員の数は8人から12人でした。

「それはヴァイキング船を受け継いでいる」と海洋考古学者でプロジェクトリーダーJens Auer博士は言っています。「何世紀にもわたって砂と沈泥の下に埋もれていたのです。それは北欧の設計で作られた、重量のある、積荷用の貨物船ですが、細心の注意と耐久性で造られています・・・松板を重ね、クリンカー様式で、美しいカーブを描いた構造になっています...比較的平和な時期に作られたようで、木材や石材、大量のビールなどの貨物を輸送していたと考えられます。」

「海から難破船を持ち上げたとき、船の木材がまるでほんの前日に切られたかのように新鮮であったことに驚きました」と、Auer博士。

3隻の沈没船の建築様式と比較すると、第1船と第2船はそれぞれ平坦な船底で尖った先端を持つバイキング様式の船でしたが、3番目の船は、「大きな船」と呼ばれていたことが示すように、非常に強い積荷でしたバルト海地域周辺で重い負荷を運ぶことができるように造られた、正方形の帆が付いている船でした。

考古学者の次のステップは、貴重な文化遺産としてそれを保存するために、また、現代と将来の世代の研究者のためにこの唯一無二の考古学的財宝について可能な限り理解するために、難破船を隅から隅まで調査し、ドキュメント化することでした。

しかし、それは時間との戦いでした。季節は冬になりつつあり、沈泥の下で眠っていた状態から外に出された木材は、どんどん弱くダメージを受けやすくなっていきます。彼らは港の床から難破船を持ち上げ、最高レベルの綿密さでこの木材を調査しドキュメント化するため、迅速に行動する必要がありました。

Auerが過去に3Dスキャンとドキュメント化を行った方法を確認してみると、どのような技術を使用しても、大きな船の228本の材木全てを、たとえ1年という期間でもきれいにし、スキャンし、処理し、説明し、注釈を付け、写真を撮る方法がないことに気が付きました。

Auerは、見つけることが出来た最高の専門家チームを仲間にしました。Ubi3DThomas Van Damme です。彼は、後で説明をしますが、Rhinoで3Dメッシュをスキャンして注釈を付けるためのユニークなワークフローを持ってきました。その他にも、3Dスキャンの担当として海洋考古学者のMassimiliano Ditta 、ベルギーの写真測量と3D記録の専門家 Marie Couwenberg 、そしてデンマークの海洋考古学者Benjamin Halkier のがチームとなりました。

「どのようにスキャンを実行するか、どんなプロセスでどんなやり方で行うのか、正確にどの順序で行うのかについてきちんと決定するのに、1週間かかりました」とAuerは述べています。

彼らは以前はFaro Arm 3Dスキャナとコンタクトスキャナを使用していました。スキャン対象のオブジェクトにスキャナを直接接触させて個々のポイントをスキャンし、それをソリッドに変換、最後に3Dモデルにするというプロセスです。これはスピードが遅く時間がかかり、さらにすべてをスムーズに進めるには、熟練した技術者を必要とします。

過去の経験では、一日中この作業にとりかかっても、スキャンし、完全に注釈をつけられるのはせいぜい一日1.5本程度だと考えられました。スキャンを待っている木材は228本で、プロジェクトを終えるのに1年以上かかってしまいます。明らかに遅すぎることから、別の方法を探さなければなりませんでした。

以前のプロジェクトで生態学的影響評価と難破船の保存作業を行った際、Auerは、Artecゴールド認定代理店 KLIBの知識豊富な専門家からプロフェッショナル3Dスキャナ Artec Evaを導入していました。Evaは、考古学やリバースエンジニアリングなど、さまざまな業界で使用されている軽量のフルカラー3Dスキャナです。Auerは彼が目にしたものに非常に感銘を受けました。最終テストとして、彼はいくつかの湿った木材でEvaを試してみました。彼は、ハンドヘルド構造化ライトスキャナが木材の詳細なスペクトルをキャプチャした速さと精度を見て、すぐに決断を下し、Evaを選ぶことにしました。

アウアーの強い推薦により、チームは「大きな船」で作業を行うためEvaを利用することで前進したのです。

「以前のやり方でこれらすべての木材をスキャンし、注釈を付けるなら通常1年は必要とされるでしょうが、Evaではわずか1ヶ月で全ての作業を行うことが出来ました!」とAuer。

Evaで木材をスキャンするプロセスは、次の通りでした。

スキャンは有名なSchwerin Castleからそう遠くないシュヴェリーンの倉庫で行われました。

「クリーニング、スキャン、注釈付け、説明、写真撮影を行って、一日で木材7本・・・228本の木材で、4人チームで33日かかりました」と、 Massimiliano Ditta。

毎日、7本の材木をスキャンする準備がされました。内2本は乾かして1本ずつスキャンし、残りの5人は濡れた布の下でスキャンを待ちました。これは、乾燥した空気へ20-30 分以上さらされると、木材がゆがみと破裂する原因となるという理由からでした。

「 26.2フィート (8 meters)の長さで、7-1.1インチ(2-3 cm) の厚さがある板の4つの側面をスキャンするのにたった5分から10分しかかかりませんでした」と、 Massimiliano Dittaは語っています。

「Evaは初めてで、慣れるまでに少し時間を必要としましたが、とても気に入っています・・・Faroコンタクトスキャナと比べたら、Evaは私たちの時間的負荷を節約してくれ、非常に快適に使うことができました。」と Ditta は言っています。

「私たちは材木の側面をスキャンしましたが、床に置くとあまりにも曲がっているため、天井からロープで吊り下げなければならないこともあり、その状態でもスキャンを行いました。」

Van Dammeは、彼が作成した全体のプロセスについて説明しました。このプロセスはその後、AuerやDitta、他の人からのブラッシュアップを経て、 ISBSAコンファレンスで発表されました。

 「まず、各木材の4つの側面をすべてスキャンし、Artec Studioで美しいフルカラーのテクスチャメッシュに変換しました。これは、木材の最も理想的なデジタルレプリカです。そこから、 OBJファイルとして注釈をつけるためにRhino 5へエクスポートされました。」

「その後、Rhino では、PolylineOnMesh機能を介して木材のそれぞれの特性について完全な注釈を付け、木材上で発見されたそれぞれの層の正確な場所に保存しました。これらの注釈には、すべての切り口と切った跡、すべての釘穴、一つ一つの小さな傷、木目自体、どのような釘が使用されたか、鉄の釘や木製の釘であったかどうか、どのツールが建設のために使用されたか、修理をされた兆候があったか、どのような木が使われたのか、木がどこから来ていたのか、幹や枝などの木はどの部分なのか、などについて記されています。」

「この注釈付けプロセスでは、デジタルテクスチャのメッシュがあるだけでなく、実際に目の前にある材木本体を見てもいたので、非常に綿密に調べながら行われました。」

「これらの2つのステップに続いて、すべての材木用に2Dの図面を完全なディテールで1つずつ作成しました。これらの図面は、基本的には3Dモデルから不必要な部分を取り除いたバージョンであり、木材や断面の輪郭を含む、Rhinoで木材に注釈をつけた様々な特性が示す形状や色分けされたポリラインなどそれに関連する研究者用の情報が示されています。木材の2D図面を持つことで、他の研究者も一目で木材を理解することができます」と、Van Dammeは言っています。

「Artec Eva の大きな利点は、写真測量と比較して、非常にユーザーフレンドリーで、3Dスキャンでの作業経験が比較的少ない人でもドキュメント化を実行できるということです。また純粋に、厄介な角度から各木材に 300+ クローズアップした写真を撮るよりも、このように木材をスキャンするほうが『楽しい』ですし、人間工学にもかなっています」とVan Dammeは説明しました。

こういった技術的な図面だけでなく、木材の質感のついたメッシュの2Dビューやそれぞれについての文章による説明も、公開される木材目録に追加され、このおかげで、研究者は詳細に各木材を調べることができました。木材目録には、技術図面上のさまざまな色が何について参照しているかを説明する凡例も含まれています。

「以前は、材木のすべてのエッジは、接触デジタイザ (FaroArm など) を使用してトレースする必要がありましたが、非常に時間のかかる作業でした。今回の我々のアプローチの良いところは、Rhinoに注釈付きスキャン (材木を解釈するために描いたポリラインを含むテクスチャ3Dメッシュ + レイヤー) を図面に自動的に変換するツールがあることです。そのため原則的に2D線画についてはすべての木材の輪郭を追跡する必要はなく、注釈付きスキャンから自動的に生成されます」とVan Dammeは語っています。

引き上げた材木の高解像度メッシュから船全体をデジタルで再構築する際には、ちょっとした問題が発生しました。材木の一部は他のものよりダメージが大きかったのです。Auerが説明してくれた方法は「左舷側はほぼ完全に残っていたので、私たちはEvaでスキャンした部分を反転コピーしたんです。Evaが美しくキャプチャしてくれていた片側から船全体を造ったというわけです。」

Massimiliano Ditta は、船の小さな模型を製作するため、すべての木材を3Dプリントしました。「私は石膏パウダーを使って1/20スケールで難破船を3Dプリントし、難破船を再構築しました。これが、失われていた要素の位置特定に役立ちました。」

この小型模型は、静水圧、CFD (流体力学) などの様々な科学的分析に使用され、かつて船がどのようなものだったのかを、訪れた人だけでなくインターネットを通じて世界中の人々へ公開されました。

AuerとDitta は、新たに購入した非常に高解像度のカラー3Dスキャナ Artec Space Apiderで「大型船」の模型をスキャン。極めて複雑なオブジェクトの完璧なデジタルレプリカの作成も行いました。

プロジェクト全体が非常にうまく行ったことから、AuerとDittaは Mecklenburg-Vorpommern Office of Culture and ConservationでArtecの最新のハンドヘルド3DスキャナであるArtec Leoを購入し、まもなく配達される予定だと語っています。Leo は、受賞歴のある革新的な3Dスキャナで、タッチスクリーンが内蔵されており、完全なワイヤレススキャン体験を提供します。