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3Dスキャニング精度、精密度、及び解像度:その違いとは?

2024年 10月 8日
11 分で読めます
概要

精度(Accuracy)、精密度(precision)、及び解像度(resolution)は3Dスキャニングの性能の最も重要な指標のうちの三つです。しかし、この三つは誤解されることが多いのです。本稿では、用途のみを対象とした文脈で各々の特性を定義した上で比較しながら、取得データの出来栄えを最善のものとするためのコツをご紹介します。

精度
個別対応の3Dスキャンデータ、寸法上の偏差の最小化、及び許容誤差の検査
精密度
スキャンの再現性、一貫性の確保、及び標準偏差の最小化
解像度
複雑なディテールのキャプチャ、入り組んだジオメトリ、並びに極めて本物のような3Dモデルの製作に関連

はじめに

Accuracy vs precision vs resolution

3Dスキャナの内部構造について掘り下げていく前に、まず当社における三つの重要な用語の意味を定義しましょう。計測の分野では、精度はキャプチャされたデータの寸法が実際の寸法にどの程度近いかを示します。精密度は寸法の一貫性を表す傍ら、解像度はオブジェクトのサーフェス上のスキャン領域から機器が取得する情報量のことを示しますが、この後者は少なくとも広い意味での定義であり、後ほどご説明するように、解像度には様々な形態があります。

それぞれの用語の詳細な解説のため、the Joint Committee for Guides in Metrology (JCGM、計量学指針のための合同委員会)、及び国際標準化機構(the International Organization for Standardization、ISO)も詳しい資料を作成していますので、本稿の中で関連するページへのリンクをご紹介していきます。

キーポイント

精度、精密度、及び解像度はすべて3Dスキャニングに必須の測定基準ですが、それぞれ完成品の出来栄えに明確に異なる影響を与えます。

ご自身の3Dスキャニング用途により、皆様はこのような仕様をあらゆる異なった重要度でお取り扱いになることになると思いますが、そのそれぞれが成果品に影響を与えます。リバースエンジニアリングや品質検査に携わる方にとっては、測定系の精度、及び精密度は最優先項目となります。これに対し、CGIモデルを製作される方の場合は更なるリアリズムの追求のため、おそらく高い解像度により注目されるでしょう。

そのため、3Dスキャニング性能の三つの測定基準すべてを理解することは、当技術を最大限に活用するには不可欠となります。しかし、精度、解像度、精密度が(業界内でさえも)如何に誤用されることが多いかを考慮すると、それぞれの比較対象に関して未だに多くの混乱が生じているのは明らかです。例えば、精密度と精度はサーフェスのディテールのキャプチャの描写に利用されることもありますが、サーフェスのデータの品質は実際、解像度にかかっているのです。

精度、解像度、精密度は異なるものであり得るけれども、それでもこの三つは互いに影響し合うこともある、という事実によって事態はさらに複雑になります。このすべてを明らかにさせるため、3Dスキャニングの仕様の世界を深く掘り下げてみましょう。これよりお話は技術的になって行きますので、皆様もご準備を!

精度

3Dスキャニングの精度はポイント当たり、もしくは体積測定的に計測が可能です。3Dスキャナの仕様のほとんどには単一スキャン精度(single-scan accuracy)が記載されていますが、これは一回でキャプチャされた画像がどの程度オブジェクトの真の寸法に近いかを表します。3Dスキャニング中にキャプチャされたオブジェクトのあらゆる角度からのスキャンデータを組み合わせた体積の計測により、体積測定上の精度を明らかにすることも可能です。

Accuracy vs precision vs resolution

精度はスキャンデータの体積において(データごとの体積においても)スキャン方向ごとに異なるために参照オブジェクトと照らし合わせて評価され、製造企業は最悪の場合の数値を公表しています。そのため、体積精度を話題にする場合には、これは実際にはキャプチャされた「総測定体積(total measurement volume)」のことを指します。

例えば、コインをスキャンする(他の物が周りに無い)場合、総測定体積はコインそのものの体積となります。これは、スキャンする距離が変数に影響しないという意味で、いずれにしても、製造企業の公表している誤差の最低レベルを満たしています。

これと比較して、体積精度はより大規模なオブジェクトほど低くなるため、問題となるのはキャプチャされた空間の大きさの方です。このため、この仕様は大規模となるキャプチャのための3D測定システムの性能を評価する尺度として、最も有用となります。

どのような形での計測でも、現在では3Dスキャニングで達成可能な精度のレベルは見事なものです。Artec Micro IIのようなハンドヘルド式の構造化光3Dスキャニングは通常、〇.〇一から一ミリメートルの精度でサーフェスをキャプチャすることが可能ですが、更に実物に近いスキャンデータの取得も可能です。例えば、Artec Micro IIのような卓上型ソリューションは、わずか〇.〇〇五ミリメートル(五ミクロン)の偏差での3Dスキャニングが可能となります。

もちろん、上記すべての事柄には『測定不確実性』の恐れが付きまといます。スキャン精度は、ポイントクラウドとそのサイズに合う幾何形状オブジェクトとの比較により計測されることが多いのです。これは、スキャンデータには本質的に、『真の値』に対して比較できなくなる程度の誤差が生じるからです。しかし、少なくとも誤差の範囲の特定は可能で、参照値を基に測定された精度はその許容値範囲内に納まります。

距離と共に、精度の最適化にはキャプチャ時の条件、及び利用するテクノロジーも重要な基準となります。LiDARスキャナはその計測精度は構造化光よりも劣りますが、広範囲のスキャニングにより適しています。計量学的ではないフォトグラメトリの場合は精度の高いデータキャプチャの信頼度は更に低くなりますが、極めて本物のようなモデルの製作を可能とします。

データキャプチャの最適化に関しては、スキャン技術を磨くこともデータの質の向上に繋がり、スキャン状況を整えることも、過度な光量、及び温度がスキャンデータを変形させる恐れがあるため、同様に有効です。

キーポイント

よく混乱を招きますが、精度と精密度はかなり異なるもので、一方が測定値と参照値の間の偏差を反映しているのに対し、他方は反復性、及び再現性を示します。

精密度

より幅広い分野では、精密度は精度と同様の意味で扱われることが多くなります。その測定不確実性のために、精密度は精度のように数字に置き換えることは難しいですが、3Dスキャニングにおいては、どちらかと言えばキャプチャの一貫性の方を示します。

スキャン精度は測定値がどれほど参照値に近いかにより査定されるのに対し、精密度は繰り返し検査により確定され、測定値間の差が小さいほど優れていることになります。

ここでも、計測時の状況の変化が結果の再現性を左右するため、精密度を最大限に向上させるためにはユーザー、環境、そして3D計測システムの統一性が必要不可欠です。皆様の機器にも拠りますが、要求の多い産業環境であっても、リバースエンジニアリングや品質検査向けにミリメートル単位以下の精密度を得られる場合も多くあります。

Accuracy vs precision vs resolution

精密度に関連するISO標準によると、精密度は反復性だけではなく、再現性にも関係します。前者においては、寸法は同一機器を一人が操作し、一定間隔で計測されると考えられていますが、後者は各箇所の可変性を表します。この二つは共に利用されることで、精密度の二つの極値、すなわち最低、最高の出来を示します。

キーポイント

ミリメートル単位以下の精密度は、リバースエンジニアリング、及び検査に必要となる反復可能な寸法の取得には必要不可欠となります。

精密度が精度のために如何に必要であるかという点にも注目すべきですが、この逆も同様であるというわけではありません。これは、3Dスキャナが同じポイントを毎回キャプチャして正確であったとしても、キャリブレーションに関する問題のために『測定バイアス』を伴った計測結果を示し、不正確な測定値に繋がることがあるからです。 これは、精度、精密度、解像度が互いに関わり合う場合の一例に過ぎません。この点は後ほど、更に追及していきましょう!

Accuracy vs precision vs resolution

解像度

通常は最高の成果を挙げるために機器のスキャン範囲の端部で測定される解像度は、キャプチャされた3Dデータポイントクラウドの二点間の最小増分としてとして定義されます。解像度は三角メッシュの一つ一つの大きさをも決定し、より小さいものがよりディテールに重きを置いたモデルを生成します。

しかし、新たに3Dスキャナを購入した場合は、常にその製造元による解像度の定義をご確認された方が良いでしょう。解像度の種類には、メッシュ解像度(完成モデルの最高の解像度)、3D空間解像度(space resolution、特定の空間での3Dポイントクラウド密度)、及び単一フレーム解像度(single-frame resolution、位置合わせ前の各フレーム内の3Dポイント密度)などがあります。

ご利用の用途によっては、構造的解像度(structural resolution、個別に計測可能な最小構造のサイズ)、並びに計量的解像度(metrological resolution、既知の体積と計測された量の間の識別可能な最小の変化)をご存じの方もいらっしゃると思います。

それぞれの用語には、注意すべき点が数点あります。メッシュ解像度はユーザーの方によるメッシュ化過程における設定が可能ですが、ミリメートル単位以下のレベルへ達することも可能です。しかし、これはスキャンの軌跡やノイズ、その他の数々の要素に拠るため、常に『最大』の形で表現されます。

Accuracy vs precision vs resolution

同様に、3D空間解像度は特定の奥行部分での一平方センチメートル当たりのデータポイントの数で計測されます。そのため、計測対象の物量が機器から遠いほど、そのサーフェス上に投影するポイント数も少なくなり、スキャンデータは低解像度となります。

キーポイント

解像度を高品質のスキャンデータで向上させることも可能ですが、最高の成果を挙げるためにはハイエンドのハードウェアが必要となります。

前述のすべての仕様が、ハードウェアに依存しているわけではありません。お持ちのスキャナが低価格のものであれば、いつでも補間(interpolation、二点間への算定済みポイントの挿入)等の技術を利用していただけます。このことで構造的解像度が劇的に向上するわけではありませんので、以前よりも小さな要素へ分解することはできませんが、メッシュ解像度は改善されます。したがって、高解像度カメラ内蔵の3Dスキャナへの投資は、最高のテクスチャのディテールを毎回キャプチャするためには最善策であると言えます。

精度と精密度の違い

スキャン精度と精密度はどちらも観測誤差の測定には重要ですが、全く異なった基準に対して評価されます。前者は参照値、すなわち対象オブジェクトの寸法と比較され、結果として獲得される数値が参照値にどれだけ近づけるかを反映することになります。後者は、同状況下で事前にスキャンされたデータに対して測定されます。

この二つの指標の間には、相関関係が欠けているのです。以下の図表でご覧のように、いずれの指標も利用可能となる3Dデータのキャプチャには必要となるものの、そのような関係が成り立つ保証はありません。精度と精密度が実際に重なり合う場合、それは双方の向上のさせ方にかかっており、両方の面でデータキャプチャを最適化するには、スキャン中の光散乱を防止することが必須となります。

Accuracy vs precision vs resolution

精度と解像度の違い

精度は3Dスキャンされたオブジェクトの寸法に非常に近い3Dポイントクラウドの生成にかかっていますが、解像度はそのキャプチャされたポイントの数を指し、そのそれぞれの間隔の近さを表します。

そのため、精度と解像度を比較することは不可能なのです。しかし、メッシュ化後にスキャンデータの詳細度が低いほどデータの三角の数は少なくなることを考慮すると、解像度が精度に影響することはあり得ます。ディテールの質を落とすこと自体は精度が劣ることに繋がるわけではないため、この二つの評価基準は密接に関わっているわけではありませんが、精度が複数の領域の総和であることは特筆すべき点です。

このことは3Dスキャンデータキャプチャ、及び処理用ソフトウェアであるArtec Studioでも確認できますが、同機器はサーフェス上のノイズを減少させ、更なる数のポイントを生成し、効果的に精度を劇的に向上させる高解像度HDモードを搭載しています。斜面上や小規模のオブジェクトのサーフェス再現能力により、Artec StudioはCAD幾何形状のフィットにも役立ち、精度を更に向上させます。

解像度と精密度の違い

解像度と精密度は混乱を招くことは比較的少ないですが、それでもその違いを強調しておいた方が良いでしょう。一方は3Dスキャニングで取得されたデータポイントの数に関連し、もう一方はキャプチャの一貫性の程度を表します。

しかし、業界によっては、解像度と精密度は良い成果を挙げるために同等に重要となる場合もあります。例えば、複雑なジオメトリ、及び入り組んだサーフェスを有する製品を繰り返し検査する必要がある場合は、精密で詳細なデータを取得することが不可欠となります。

精度、精密度、及び解像度が極めて重要となる状況とは

医療から教育、航空宇宙や防衛の分野に至るまで、何処を見渡しても、3Dスキャニングは高精度、高精密度、高解像度でのデータキャプチャに活用されています。しかし、このような観点の一部が比較的、他のものよりも重要となる分野もあります。

例えば、リバースエンジニアリング向けにオブジェクトをキャプチャする場合、3Dモデリングのために元となる物品に充分近いメッシュを生成する際には、ミリメートル単位以下の精度は不可欠となります。3DMakerWorld社により3DスキャンされたSadler Vampire社製航空機を例に取りましょう。Artec Leoによりキャプチャされた〇.一ミリメートルの精度のデータ抜きでは、取引先の求めるようなスペア機をリバースエンジニアリングすることは不可能でしょう。

キーポイント

ご所属の分野によって優先順位がある場合もありますが、精度、精密度、及び解像度はあらゆる業界で重要となります。

できる限り偏差の少ない形でジオメトリを繰り返しキャプチャする必要がある状況では、精密度を伴う3Dスキャニングは同様に重要となります。GoMeasure3D社はこのことを線路全体のキャプチャ、及び検査のためにLeoを利用することで立証していますが、これは3Dスキャニングによる列車事故の防止策としての偏差の事前の発見は可能である、というの考えに基づいています。

Train derailments

一方、解像度は極めて本物のようなデジタル複製を作成する3Dモデル製作者の方には必須となります。これは遺産保全、法科学、及びCGIなどの領域でも同様です。CGI分野における3Dスキャニングの更に素晴らしい利用例としては、著名な特殊効果メイクアップアーティストであるカズ・ヒロが、Leo、並びにArtec Space Spiderを利用して驚くべき詳細さで俳優の顔面をキャプチャしたことが挙げられます。

もちろん、以上はプロフェッショナル級の3Dスキャニングによりもたらされた可能性の数例に過ぎず、高精度、高精密度、及び高解像度でのキャプチャは更なる可能性を解き放つことに繋がります。

3Dスキャニングで最高の成果を挙げるには

お持ちの3Dスキャナで時と共に精度、及び精密度が劣化することを考慮すると、定期的に微調整することが重要となります。この作業には、ご利用されている機器によっては、電源を入れる度にキャリブレーションボードやターゲットキャリブレーションを使用することも含まれます。

Accuracy vs precision vs resolution

キーポイント

使用技術の高さ、キャリブレーション、スキャン状況はすべて成果に影響を与えますが、プロフェッショナル向け3Dスキャニングのみが最高の成果をもたらすのです。

これまでご紹介した使用事例からお分かりのように、3Dスキャニングは今では数多くの異なる業界で活用されているため、すべてに対応できるようなソリューションを見出すことは不可能です。そのため、事前にご自身の用途の必要性を特定しておくことは不可欠で、このことにより精度、精密度、又は解像度(もしくはその三つすべて)を優先させることができるようになります。必要とされるすべてのものをキャプチャできない計測システムへの投資は、高くつく過ちにも繋がります。

この他、スキャン環境や距離などの要因も成果に影響し、精度、並びに解像度は遠くからのスキャン時には共に低くなります。幸運にも、今では多目的な3Dスキャナが市場に多く出回っており、百四十メートル以上のスキャン範囲、及び一.九ミリメートルの精度を誇るArtec Ray IIのような三脚取り付け式機器もございますので、皆様の必要に応じた機器が間違いなくあるはずです。

最後になりますが、3Dモデリング、リバースエンジニアリング、並びに品質管理のようなプロフェッショナル向けの用途に対しては、精度、精密度、及び解像度はすべて重要となります。このそれぞれがどのように機能するかについて、皆様には今回把握していただきましたので、以上の領域各々で成果を最適なものへと高めていただくことが可能となります。そして、ソフトウェア、ハードウェアが進歩する中で、本テクノロジーは三つの側面すべてにおいて、間違いなく改善の一途をたどることでしょう。

目次
著:
Paul Hanaphy

Paul Hanaphy

テクニカルリポーター