3Dスキャンの費用はどのくらいかかりますか?
何かを3Dスキャンするためにかかる費用は、沢山の要因に依ります。こちらのガイドでは、3Dスキャンのコストに影響を与える主な要因について説明し、果たして独自のスキャナを入手する方が理にかなっているのか、それとも専門のスキャンサービス業者を利用した方が良いのか検証していきます。
前置き
3Dスキャンのコストは、多くの専門家がスキャンプロジェクトに取り掛かる際に大体考えることです。このコストがいくらになるかという質問への答えは、実は複雑です。他の技術機器と同様に、考慮すべき要因が沢山あるからです。
それでは、それらの要因の中で最も一般的なものを詳しく見てみましょう。
3Dスキャンのコストに影響を与える主な要因
1.オブジェクトまたはパーツのサイズ
スキャンの予算を立てる際に、最初にまず考慮すべき基本的な要素の1つは、被写体となるオブジェクトまたはパーツの全体的なサイズです。通常、大型オブジェクトは小型オブジェクトよりも全体のモデルを取得するためにより多くの時間とスキャンを必要とします。したがって、大型オブジェクトのスキャンは、小型オブジェクトのスキャンよりもコストがかかります。
ハンドヘルド3Dスキャナを用いて工業用の大型オブジェクトにある複雑な詳細をスキャンしている様子
ただし場合によっては、そうとも限りません。小型で複雑なオブジェクトのスキャンは、大型で比較的シンプルなオブジェクトのスキャンよりコストがかかる場合もあります。これについては、ジオメトリに関する次のセクションで詳しく説明します。
スキャナの購入を計画している方は、お選びになるスキャナが被写体となるオブジェクトのサイズをきちんとキャプチャできる仕様があることをあらかじめご確認ください。非常に複雑な大型オブジェクトでは、すべてスキャンするのに複数のスキャナが必要になる場合もあります。例えば、1台のスキャナを使用してオブジェクト全体をキャプチャし、狭くて到達しにくい領域には他のもう1台のスキャナを使用することで、そのオブジェクトのすべてを完全にキャプチャするというようなケースもあります。
2.オブジェクトまたはパーツのサイズ
;
考慮すべき2番目の重要な要素は、オブジェクトのジオメトリがどれほど複雑または単純であるかということです。穴や細い線、鋭いエッジ、オーバーハング、スレッドなどの複雑な特徴を持つサーフェスよりも、そういった複雑な詳細を持たないシンプルなオブジェクトの方が、はるかに簡単で高速なスキャンになります。そのようなシンプルで「特徴のない」表面を持つオブジェクトと比べ、複雑な特徴を持つオブジェクトを取り扱う際には、すべての細かい詳細をスキャンしなければならないため、完全で正確なモデルを得るためにより多くの時間が必要になるからです。
キーポイント:
穴や細い線、鋭いエッジ、オーバーハング、スレッドなどの複雑な特徴を持つサーフェスよりも、複雑な詳細を持たないシンプルなオブジェクトの方が、はるかに簡単で高速なスキャンになります。
上記の2つの要因をより詳しく検証するために、以下の2つのモデルをご覧ください。まず、この最初のモデルである スパナは、比較的小さく(2.5 cm x 16.3 cm)、ジオメトリがシンプルなオブジェクトの例です。スキャンテクニシャンがそれをスキャンするのには、わずか3分しかかからず、その後Artec Studioソフトウェアでデータを処理するのにさらに10分だけかかりました。
シンプルなジオメトリを持つ小型オブジェクトの3Dモデル
シンプルなジオメトリを持つ小型オブジェクトの3Dモデル
次に、2番目のモデルであるデュアルクラッチギアボックスは、細かく繊細なディテールが沢山施された中型オブジェクト(40 cm x 44 cm x 52 cm)の例です。スキャンには22分、処理にはその約2倍の時間がかかりました。
3.プロジェクトで取り扱うパーツまたはオブジェクトの数量
この考慮事項は、論理的に最初の2つの要因に伴います。キャプチャする必要のあるオブジェクトまたはパーツの数が多いほど、それらをスキャンして処理するために必要なリソースが多くなります。それは、スキャンを自分達で行うにしても、専門業者を雇って行ってもらうとしても同じことです。オブジェクトの各部分、または複数のソリッドオブジェクトを、すべてスキャンしなければなりませんし、そのためにスキャンとデータ処理のワークフローがそれぞれ必要になる場合もあります。
キーポイント:
キャプチャする必要のあるオブジェクトまたはパーツの数が多いほど、それらをスキャンして処理するために必要なリソースが多くなります。
例えば、リバースエンジニアリング用に使用できる状態の完全なスキャンが必要な場合、各コンポーネントを個別にスキャンできるように、アイテムを頻繁に分解する必要が出てきます。したがって、これにはスキャンと処理の両方にそれぞれ時間が必要となります。ただし、コンポーネントの形状がプリミティブであった場合など、場合によっては分解する必要はありません。
品質保証についても同じことが言えます。ほとんどの場合、チェックが必要になるコンポーネントは、それぞれのCAD/メッシュモデルと比較しなければならないコンポーネントなので、そういった分解は不要です。
4.最終モデルの精度と解像度
スキャンの費用を予測する際に考慮すべきもう1つの重要な要因は、最終的な3Dモデルで期待する精度と解像度です。それぞれのスキャナには異なる技術仕様がついてくるので、その解像度と精度のパラメーターは、使用するスキャナに付属するテクノロジーによって定義されます。そのスキャナに搭載されているハードウェアとソフトウェアが高度なものであるほど、得られる結果の品質、速度、精度と予測性が高くなります。したがって、スキャンを自分達で行うかどうかに関係なく、モデルをより正確で高品質にする必要があるほど、モデルを3Dでキャプチャする費用がより高くなるということになります。
キーポイント:
スキャンを自分達で行うかどうかに関係なく、モデルをより正確で高品質にする必要があるほど、モデルを3Dでキャプチャする費用がより高くなるということになります。
最近の市場には、白や青の構造化光3Dスキャナやレーザースキャナ、写真測量ソリューションなどといった、多くの3Dスキャナやスキャン機器があります。プロのスキャンサービス業者に頼るとなると、どのスキャナがあなたのプロジェクトの要件に最適かを決めるのは、彼らになります。しかし、3Dスキャナをご自身で購入なさる場合は、あらかじめそのスキャナの仕様を確認し、ライブ実演またはオンライン実演のアポイントメントをとり、スキャンが必要なオブジェクトを少なくとも一つそこで試してもらい、結果を事前にご確認ください。
5.色
スキャンのコストに影響するもう1つの要素は、色です。一部のアプリケーションでは、オブジェクトをカラースキャンし、オブジェクトの非常に高い類似度を得ることが求められます。しかし、オブジェクトの測定値を取得する必要があるだけならば、それらは不要です。
Artec Space Spiderでスキャンされたパワードリルの3Dモデル(テクスチャありとテクスチャなしバージョン)
プロジェクトに可能な限り最高級のテクスチャが必要な場合は、プロの照明機器や写真測量ができるような専用のソフトウェアを使用して、別撮りのテクスチャショットをメッシュにはめ込む場合があるので、そうなるとそのプロジェクトの作業にかかる時間とお金の量に大きな影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、出来上がったモデルをオンラインで展示する予定で、ビデオゲームやAR、またはVRアプリケーションで使用する場合は、3Dアーティストがテクスチャの後処理をしたり、あちこち修正をしなければならない可能性が出てきますから、さらに時間が必要になるかもしれません。ただし、色もテクスチャもないオブジェクトの場合はスキャンと処理にかかる時間はほぼ同じになることもあります。所要時間はすべてアプリケーションの種類に依ります。次の要因でさらに詳しくそれについて説明していきます。
6.アプリケーション
多くの場合、3Dスキャンは大きなワークフローの中でそのたった一部にしかすぎません。例えば、研究をする目的でコピー機のスキャナで雑誌の記事をスキャンしたり、ドキュメンタリービデオを作成する目的でインタビューを記録したりすることと同じように、3Dスキャナは特定のプロジェクトで使用できる何かの3D「コピー」を取得する目的で利用されます。
Artec Space Spiderを使用してコンプレッサーの3Dモデルを作成している様子。このモデルは後にリバースエンジニアリングで使用されることになります
スキャンが使用されるのは、修理が必要な壊れた車の部品や、オンラインストアの椅子、またはカスタムの足の装具用など様々な目的があり、すべてのアプリケーションにはそれぞれ独自の要件があります。スキャナでキャプチャされたデータは、それぞれのタスクに最適なものになるよう、さらに処理と準備が必要になります。
生の3Dスキャンデータをお求めならば、独自のスキャナをご利用になっても、プロのサービスをご利用になっても、通常は追加費用はかかりません。ほとんどの3Dスキャンソリューションは、STLやOBJ、PLY、そしてWRLなどの一般的な3D形式をすべてサポートしています。
Artec Microで作成された、クランプの3Dメッシュモデル。このメッシュは数千のポリゴンで構成されています
3Dメッシュモデルから作成されたクランプのフィーチャーベースのCADモデル
たとえば、メッシュではなくパラメトリックモデルを取得する場合、スキャンサービス業者はそのために余分な費用を要するはずです(業者に頼まない場合にはご自身またはその作業を担当するCADスペシャリストに余分な時間がかかるはずです)。もしこのケースが当てはまる場合は、予算の一部をモデリングとCADに割り当てておくべきです。リバースエンジニアリングには1時間あたり100~200ドルの費用が伴い、オブジェクトが複雑になるほど、その時間は長くなります。
7.複雑な素材とスキャン条件
反射性や光沢のある表面は、そのままキャプチャするのは難しい場合があります。その場合、スキャンスプレー(洗い流せるタイプと消えてなくなるタイプがあります)であらかじめコーティングして準備をしておかなければならなかったり、スキャン後に片づけが必要になったりして、そこで余分な時間がかかる場合があります。
キーポイント:
反射性や光沢のある表面は、そのままキャプチャするのは難しい場合があるので、スキャンの準備や特別なスキャンの状況に備えるために余分な時間がかかることがあります。
また、一部のスキャナはオブジェクトを正常にキャプチャするために、特別なセットアップが必要だったり、ターゲットなどのスキャン用の器具を追加しなければならないことがあります。そのようなターゲットには余分なコストがかかり、使用も面倒な上、オブジェクトに貼り付けるにはかなりの時間がかかります。また、各フレームにそれらが十分にあることを確認しなければなりません。しかも、スキャンセッションが終了したら、それらのターゲットをオブジェクトから取り除き、オブジェクトを綺麗な状態に戻すために、さらに時間がかかるでしょう。
場合によっては、大型オブジェクトが離れた場所にあったり、スキャナのユーザーが一人ではオブジェクトの近くまで行けないことがあり、そうなるとスキャンに余分な機材(はしごやクレーンなど)が必要になったり、誰か他の手を借りなければならなくなります。
3Dスキャン価格の例
それでは、さまざまなオブジェクトを扱う実際の例と、それらをスキャンするためにかかる費用を見てみましょう。
注)表記されている価格は、米国のArtec 3Dのスキャンサービスチームによる見積もりに基づいています。他のスキャンサービス業者が他のスキャン技術やソフトウェアを使用している場合や、業者が他の国で営業している場合、価格に誤差があるかもしれません。
例1車のリム
私達がまず始めに推定コストを出したのは、この車のリムです。こちらは、多くの自動車メーカーでとてもよくスキャンされるアイテムです。 車の修理やチューニングを行う整備工場などのアフターマーケットでは、3Dスキャナを使用してリバースエンジニアリングを行い、リムを始めとしたさまざまな自動車部品の測定を行います
車のリムのジオメトリは最小限ですが、そこにはキャプチャが必要な細かい要素がいくらかあります。
このリムは、この後さらに検証していく他のオブジェクトと比較すると、そこまで複雑なジオメトリは持っていませんが、センターディスクやボア、スポーク、そしてキャップなど、キャプチャを困難する複雑で薄い要素を持っています。テクスチャが全くなかったため、スキャナのトラッキングをより安定させるために、リムの周りに印をいくつかランダムにつけておく必要がありました。
このオブジェクトを担当したスキャンテクニシャンは、HDモードを備えたArtecの構造化光を使用するEvaスキャナを選びました。リムの内側のすべての細かい要素をキャプチャし、よりクリーンでシャープな3Dデータを取得するためです。スキャンには約5分かかり、再配置にはそれからさらに1分かかりました。HDの再構築は約7.5分で、処理は合計25分で完了しました。トータルでは約40分の作業になりました。
最小限の処理を要するこのような中型オブジェクトのスキャンに伴う基本価格は800ドルからになります。しかし、EvaだけでなくSpace Spiderのような、より正確で高解像度の3Dスキャナも必要になるほどの詳細部分がある場合には1200ドルほどまで費用が高くなる可能性があります。
例2: デュアルクラッチトランスミッション
このデュアルクラッチトランスミッションは、複雑なジオメトリを持つオブジェクトの理想的な例です。
2番目の例では、より大きく、より複雑なオブジェクトを使用するべきだと私達は感じたので、デュアルクラッチトランスミッションが選ばれました。ご覧のとおり、こちらには細かいディテールが沢山あります。そんなわけで、この記事の最初に述べたように、このオブジェクトは複雑なジオメトリを持つオブジェクトの完璧な例になります。
スキャンテクニシャンがこのオブジェクトをEvaのHDモードでスキャンするのに約20分かかり、それからそれを再構築するのに約50分かかりました。Artec Studioソフトウェアでの処理時間は合計110分でした。そして全体のプロセスは2.5時間で完了し、すべての作業のコストは1200ドルでした。
例3ラジエーターグリル
ここで私達がスキャンのコストを予測する最後のオブジェクトはまたも自動車部品ですが、今回は複雑なジオメトリを持っていて、しかも黒く光沢のあるまた別の部品です(それは多くの3Dスキャナにとって、なんとも恐ろしい特性です!)その部品とは、ラジエーターグリルです。
黒く光沢のある表面でも、適切なハードウェアとソフトウェアさえあれば、キャプチャは可能です
プロセスをスピードアップして簡単にするために、スキャンテクニシャンはまず最初にスキャンの準備として、グリルの光沢のある部分を特別なスキャンスプレーでコーティングする必要がありました。その後、LeoスキャナのHDモードでスキャンを開始しました。今回もまた、スキャン完了後にラジエーターに付着したコーティングを取り除くためにかかる時間もきちんとカウントします。
今回のスキャンにはわずか7分、HD再構成にはさらに13分かかりました。それからこのモデルはArtec Studioソフトウェアで約35分かけて最終的なメッシュになるまで処理されました。
スプレーの準備が必要になるこのようなオブジェクトのスキャンには、約800ドルかかります。スキャンスプレーの缶は1つで大体10ドルから50ドルかかり、このラジエーターグリルの場合のように、スプレーが不要な部分を隠す作業にも時間と忍耐が必要になります。
スキャナを購入すべきか、プロのスキャンサービスを利用すべきか
それでは、費用効果を高くするためには独自の3Dスキャナを購入もしくはレンタルすべきなのでしょうか?それとも、この作業を業者にお任せすべきなのでしょうか?
上記したようなオブジェクトを週または月に数回、定期的にスキャンする必要があるならば、3Dスキャナのひとつやふたつを独自で入手する方が費用効果が高くなります。一度のスキャンで平均1000ドルがかかるとすれば、月に2~3個のパーツのスキャンを1年するだけでArtecスキャナ購入費用の元がとれる計算になります。
Artec Leoによるスキャン用トレーニングのセッション
一方で、まれにしかスキャンの必要がなく、果たしてスキャナを購入する方が良いのかわからないという方は、スキャナを1週間か1か月程まずレンタルしてみて、どういう風な結果が得られるのかを体験し、レンタルでお望みの要件が満たせるかどうか確認してみることをお勧めします。 3Dスキャナを販売する多くの業者は、機材のレンタルサービスも提供していますので、ご要望にお応えできる最適な技術についてアドバイスすることができるはずです。また、新品・中古の3Dスキャナを購入する前に試してみることもお勧めします。レンタル価格は会社によって異なりますが、参考までにおおよそのケースをご紹介いたしますと、EvaやSpace Spiderを1日レンタルすると、1日あたり約250〜 375ドルになり、Leoをレンタルすると1日あたり475ドルになります。
キーポイント:
一度のスキャンで平均1000ドルかかるとすれば、月に2~3個のパーツのスキャンを1年するだけでArtecスキャナ購入費用の元がとれる計算になります。
たった1度だけしかオブジェクトのスキャンの必要がない場合は、専門のスキャンサービス業者を利用する方が、はるかに安価で済みます。そうすれば、プロの機材に投資する必要がなくなりますし、3Dの専門家にスキャンの仕事を全てお任せすることができます。スキャナを入手するよりもはるかに速くスキャンができますし、費用効果も高いでしょう。
結論
あなたのプロジェクトがいかなるタイプのものであれ、どういったものが3Dスキャンのコストに影響するのかということをご理解いただけたならば幸いです。この記事をお読みになった後、もしあなたのプロジェクト用に3Dスキャナを購入したいという方、またはArtec 3Dスキャナについてもう少し詳しく知りたいという方がいらしたら こちらеまでお問い合わせください。 喜んで対応させていただきます。
こちらを次にお読み下さい
ラーニングセンターに
さらに詳細が記載されています
プロフェッショナル向け3Dスキャナを新たにお探しですか? 要求に合ったソリューションを見つけることの難しさは、当社も承知しております。そのため、ここに皆様のご要望を正確に満たす製品を見出していただくためにお役に立つ、仕様から実務上で配慮する点に至るまでにおける、比較評価すべきすべての項目のチェックリストを作成いたしました。
こちらのガイドでは、最も人気のある3Dスキャンテクノロジーの1つである「3Dレーザースキャン」について詳しく説明いたします。このガイドを読むことで、「レーザー」と呼ばれるスキャナの種類についてや、それらがどのように機能するのか、どこで最も役に立つのか、そしてそれらが何に対して使用されるのかをお学びいただけます。
世界最先端の3Dスキャナの数種が、どんな大きさの、かつどのような複雑さを持つオブジェクトもキャプチャしていく過程を本当の意味で充分に把握するには、まず、構造化光の役割について詳しく知ることが必要です。この簡単に読める記事では上記の点に加え、CMM機器やCGIフォトグラメトリなどの他のテクノロジーよりも、構造化光を利用する方が優れている点についても学んでいただけると考えています。また、構造化光3Dスキャナを扱う際の課題となる面についても、一部ご説明します。