Artec 3D社製品を用いたスキャンを伴う先駆的な研究、法科学的な噛み跡分析の信頼性を確立
課題:性的暴行の裁判で法科学的証拠として使用できるよう、人間が残した噛み跡を測定する、より正確で信頼性の高い手段を見つけること。
ソリューション:Artec Space Spider、Artec Studio、Autodesk 3ds Max
結果:Artecの青色光源を使用したSpace Spiderが噛み跡を素早くかつ正確にデジタル化し、その結果で得られたデータを使用して容疑者を絞り込むというプロセスが改良されました。
Artec 3Dを選ぶべき理由: 法科学の分野ですでに利用されているArtec Space SpiderのスキャナとArtec Studioのソフトウェアを使用すると、噛み跡を1対1のモデルに変換して歯型と比較することができ、比類のない精度と再現性を実現できるため、それらは法科学研究に最適なツールとなります。
研究者のエリカ・フランゼ(Erika Franze)氏がArtec Space Spiderを使用して歯型をデジタル化している様子。画像提供:エリカ・フランゼ氏
あまり明るい話題ではありませんが、噛み跡というのは、性的暴行事件において加害者だけでなく被害者の胸や脚、性器にも見られる傾向があるため、事件の鍵となることが多々あります。
しかし、噛み跡の分析自体は依然として論争の的となっています。人間の歯列の多様性と複雑さから、皮膚の弾力性や圧力、そして死後の変化によって引き起こされる歪みまで、この問題はまだまだ不透明なのが現状です。
こういった事態をさらに複雑にするもう 1つの問題は、噛み跡の記録に関する標準化された手段が未だに存在しない点です。この一貫した手段がまだ確立されていないことは、噛み跡の解釈において主観と偏見を生み、研究結果の妥当性に疑問を投げかけることになっています。
長年にわたり、噛み跡分析は冤罪事件のいくつかの事例にも関係しており、後にDNA鑑定によって判決が覆されたこともあります。噛み跡の不一致に伴う倫理的および法的な問題は、法的信頼性を確保するために歯科的証拠の裏付けが必要であると現在広く認識されています。
噛み跡分析とは
伝統的に、噛み跡は一連の写真によって記録されます。これらを撮影したら、犯人が残したDNAの有無を調べるためにその部分を綿棒で拭きとります。その後、犯罪者と照合するための追加のテストとして、容疑者の歯型が取られます。
噛み跡が写真と比較される前にSpace Spiderで3Dスキャンされている様子。画像提供:エリカ・フランゼ氏
しかし、噛み跡によるあざは、被害者の状態によって変化します。場合によっては、警察歯科医は死後の皮膚の変色が明確になる臍斑段階まで待ってから写真をさらに撮る必要があり、調査が遅れることがあります。
それから噛み跡分析には保存のプロセスも含まれます。死亡した被害者の場合、噛み跡からシリコン製の型を作り、劣化を防ぐために消毒液に入れて保管することができます。被害者が生存していた場合、噛み跡の証拠はアセテートシートを用いて「トレース」されることもありますが、いずれのプロセスも非常に時間がかかります。
こうした欠点や疑問がある中、法科学を専門とする大学院生であるエリカ・フランゼ氏の研究は、この分野に希望の光をもたらしたと言えます。
フランゼ氏は、ハンドヘルド型でサブミリメートルレベルの精度を提供する3Dスキャンのパワーを活用することで、噛み跡の形成に関与する歯の角度すべてを正確にキャプチャする方法を開発しました。これにより、深さや形状、サイズを正確に測定できるだけでなく、容疑者の歯型と比較するための 3Dモデルに変換できるデータも得られます。
従来の3Dの歯科用歯型。画像提供:ユージン・リシオ(Eugene Liscio)氏
数秒で「この上なく素晴らしい」スキャンを
大学教授であり、著名な法科学者でもあるキャロル・リッター(Carol Ritter)氏と共同開発されたフランゼ氏のこの改訂されたプロセスは、主に3Dスキャンを中心に展開されます。ただし、すべてのスキャナが同じように作られているわけではありません。解像度、キャリブレーション、または位置合わせの問題により、エラーやアーティファクトが入り込んでしまう可能性があるため、噛み跡がわずかな場合や、それが歪んでいたり、汚染されていると噛み跡のキャプチャをするのに苦戦する人もいます。
幸いなことにフランゼ氏は、自身の研究の早い段階でArtec Space Spider を発見していました。それは、法科学文書における3D技術において豊富な経験を持つ3D法科学アナリストであるユージン・リシオ(Eugene Liscio)氏の影響のおかげでした。
「私がこのスキャナで気にいっているところは、これを使用する場所がひとつに限定されないことです」とフランゼ氏は説明します。「この製品は持ち運びが簡単なので、サンプル担当のボランティアがどこにいても会いに行くことができます。また、このスキャナは使うのもとても楽しいです。」
Space Spiderは、その高解像度と使いやすさのおかげで、スキャンの全くの初心者にとっても、法科学的結果の鍵となる、見落とされがちな詳細をキャプチャするのに最適なツールとなっています。
「キャプチャされた画像はどれも素晴らしいクオリティです」と彼女は付け加えます。「私にとって、このスキャナが提供するスキャン画像は歯科医院で見る歯列模型のように見えます。大きな欠陥や曖昧な箇所、ノイズ、ランドマークはありません。Space Spiderは、歯の細かい部分まで、私が求めているものをすべてをキャプチャしてくれます。」
「私は当時初心者だったので、3Dスキャンにまず少し慣れることが必要でした。しかし今では、スキャンには1分もかかりませんし、歯の部分を回転させることまでおてのものです。」
法歯科における新たな発想
フランゼ氏が行う非接触型の保存用ワークフローでは、感染や交差感染のリスクを負わずに、噛み跡の3Dモデルを調査パートナーとシームレスに共有できます。これにより、噛み痕の深さをより効果的に視覚化して、形状やサイズ、歯型の比較、さらにはさまざまな噛み傷のシナリオのシミュレーションを行うことができます。
通常の鋳造品は物理的な保管が必要なため、取り扱い中にひび割れや損傷が発生しやすくなりますが、デジタルモデルではそんな問題はありません。
キャプチャに関しては、 Artec Studioもスキャンプロセスを数秒で行うための重要な役割を果たします。フランゼ氏は、このソフトウェアの自動パイロットモードが特にスキャンの位置合わせを効率化し、噛み跡の実際のサイズや向きと一致するようにするのに役立つと感じています。
「Artec Studio の自動化モードはとても素晴らしく、使いやすく、超高速でした」とフランゼ氏は言います。「比較するために、手動でのモデル編集手順も一応学びましたが、さほど大きな違いはありませんでした。これは素晴らしいことです!」
3Dスキャンプロセスの途中で撮影されたArtec Studioのスクリーンショット。画像提供:エリカ・フランゼ氏
整理されたスキャンは、モデリングやレンダリング、およびアニメーションプラットフォームであるAutodesk 3ds Maxにエクスポートされ、必要に応じて2D画像と併用して「仮想的な噛み跡の輪郭」を作成することができます。結果として得られるモデルは非常に正確なので、歯のテクスチャや角度の違いを比較し、最終的に容疑者かどうかの判断材料になります。
法科学における3Dスキャンの未来とは
フランゼ氏のアプローチは、すでに15人のボランティアを対象にテストされ、正確な歯の型と刻印が得られており、法歯科の分野での画期的な変革の途中にあります。
「二つのものは一見同じように見えても、非常に異なる場合があります。「私の研究をできるだけ客観的なものにするために、私は統計を使用して分析を裏付けています」とフランゼ氏は結論付けます。「Space Spiderは、その点で大きな助けになりました。そのスキャンは、まるで人間の目で何かを実際に見ているかのようです。」
編集された歯科用3Dモデル。画像提供:エリカ・フランゼ氏
彼女の研究は依然として歯型の模型と写真の比較に重点を置いていますが、Space Spider の導入により、噛み跡のモデリングを使用する有望なアプローチへの道が開かれました。実際、彼女は現在、高解像度の噛み跡スキャンからのデータだけを使用して結論を導き出す方法の開発を目指しており、これは論争の的となっている分野に精度と信憑性をもたらす可能性があります。
「噛み跡分析がより一般的に受け入れられる時がくるならば、それはある種の3D文書化と幾何学的分析を含む可能性が高いでしょう」とリシオ氏は付け加えました。「3Dスキャンは、客観性を高めるための始点となり得ます。これらの方法や基準の多くはまだ確立されていません。しかし、これは間違いなく適切な出発点であり、我々が正しい方向に向かっているのも確かです。」
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