3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec MicroとSpace Spider、世界初のヒトの骨学のVR授業コースを支援する

課題:とある名の知れた法人類学者は、VR(仮想現実)を利用した画期的なコースのために何百もの骨をキャプチャして、それを解剖学的に正確な3Dモデルに変換しなければならなくなったので、3Dスキャンの採用に目を向けました。

ソリューション:Artec Micro、Artec Space Spider、Artec Studio

結果:数週間にわたって、各骨のすべての表面をほんの数分でスキャンするために、デスクトップのArtec MicroとハンドヘルドのArtec Space Spiderが使用されました。その後スキャンはArtec Studioで処理され、VRでの使用が可能な高解像度の3Dモデルとしてエクスポートされました。

Artec Space Spiderを使用して、「ウルサスアメリカヌス」と呼ばれる黒い熊の大腿骨のスキャンをする大学生のケイトリン・スクーノバー(Kaitlyn Schoonover)さん

カリフォルニア北部にある川から突然腐敗しかけている脚が発見されたその数時間後に、保安官代理(捜査関係者)らは迅速にそれに対処しました。彼らはその遺体を医療病理学者と考古学者、そして獣医の3人の専門家達に確認してもらったのです。医療病理学者と考古学者はその脚が人間のものであると信じていましたが、獣医だけはそれに同意せず、その脚は人間のものではないという結論を出しました。

その骨にあった切断の痕は、脚が強制的に切断されたことを示していました。その点を考慮すると、その遺体は人間のものに違いないということになりました。そこで急遽、保安官の元で働く探偵と代理人、そして捜索救助チームが集まりました。しかし、周囲の川岸を3日間かけてきちんと調査してみましたが、その甲斐もなく無益に終わってしまいました。そこで、この件で4人目の専門家として、とある法人類学者を呼び、意見を聞いてみることにしました。すると、その脚は黒い熊の脚であるとはっきり特定され、しかもそれはおそらく川の上流のどこかでハンターによって捨てられたものだろうと推測されました。

この事件では、法執行官と共に働く関係者らが、ヒトの骨格について実用性のある知識を持っていることが必須であったことが明らかになりました。この件で、もし法人類学者や同等の専門知識を持つ人に一番先に相談していたら、数百時間と数千ドルの費用が節約されていたでしょう。しかしこの種の誤認は実は国中で、そして世界中で毎年数え切れないほど発生しています。

Artec Space Spiderを使用して作成された、黒い熊の大腿骨(上部分)と人間の大腿骨の3Dスキャンの比較

従来、人間の骨格をこのように深く理解するための最も実用的な方法と言えば、より大きな大学でひとつの学期を通して本物の人骨のコレクションを参照したヒトの骨学講義を受け、それにともなう研究も行うことでした。しかし、それは常に実用的であるとは言えませんし、可能でさえもありません。たとえそうであったとしても、そんな研究に適した人骨の適切なコレクションを保持している大学は、現在ほとんどありません。大抵は、それがないのでプラスチックの代替品モデルを使用しています。

そんな中、この広範なニーズに応えるため、 世界をリードする法人類学者の1人はそんな常識を覆すがごとく、最先端の3Dスキャン技術と最新のVRを使用しています。デニス・ダークマート(Dennis C. Dirkmaat)博士は、1991年からペンシルベニア州エリーはマーシーハースト大学にて、世界レベルの法人類学プログラムを運営していて、理事会から認定を受けている法人類学者です。

彼には、全国の100人近くの検死官や監察医、法執行機関および事務所の職員から依頼された、1000件近くの法人類学に関係する事件を個人的に実施してきた経験があります。しかも最近、彼は法人類学の分野で2つの重大な賞を受賞しました。それは、史上初の優秀なメンターに贈られる賞と、法人類学において歴史に残る功績に値する、T.デール・スチュワート賞でした。

Artec Microで歯科用モデルをスキャンするデニス・ダークマート(Dr.Dennis Dirkmaat)博士

ダークマート博士がこれまで関与してきた法人類学の事例には、地面に散らばった遺体や埋もれてしまった体の特徴を取り戻したり、致命的な火災現場の復旧をしたことが挙げられます。さらに、大規模な災害の復旧も手がけてきました。例えば、2001年9月にペンシルバニア州サマセットで起きたユナイテッド航空93便の航空事故や、 2009年のコルガン航空によるバッファローでの大規模な災害などです。

彼はまた、法医学の分野で大規模な検索や被害者の特定、そして骨格の外傷分析も行っています。その上、ダークマート博士は専門家証人として28回も法廷で証言をしてきました。彼の元教え子達の多くは、国内外で独自のプログラムを実行する法医学的死因の調査官や、その線の専門の法人類学者となっています。

HDでの法人類におけるヒトの骨学コースのVR授業を選択できるページ

ダークマート博士が担任となる ヒトの骨学のVRコースは、世界中の誰でも100%気を散らすことのない環境で、自分のペースで勉強ができることで、ヒトの骨格に関する包括的な知識を得ることができます。

出来上がってから2年が経過したこのコースは、将来の生物人類学者を対象としています。また、これは15週間のダークマート博士による実際の教室で受ける大学レベルの実験コースと同じくらい徹底しています。毎回の授業中または授業後に注意深く順序が付けられたテストによって、教えられたことをただ暗記したのではなく、長期間記憶にしっかりと残されていることが確認されます。

ヒトの骨学のVRコースを屋外で受講している学生

OculusGoまたはOculusQuest II VRのヘッドセットのいずれかを使用すると、高解像度のカラー3Dで体の206個の骨すべてを入念に操作することができます。各授業ごとに、骨学への理解は最適な順序で段階的に深まっていきます。初めに骨の名前とその(英語のスペルの)綴り方、そしてその発音の方法を学び、体内での骨の位置を理解します。そして次に、解剖学的な方向の用語を学びます。

このコースの残りの部分では、仮想世界で各骨をひとつずつ拾い上げ、ズームインまたはズームアウトをしてあらゆる角度からそれらを調べ、自分のペースで各骨の独特な特徴を観察することができます。

ヒトの骨学のVRコースに含まれる、骨の名前についての授業

ダークマート博士によると、「このコースは、法医学分野で働く人だけでなく、医学や健康関連科学、スポーツ医学、解剖学、または生物科学の分野でのキャリアを検討しているすべての人にとって、非常に有益になります。ヒトの骨学における明確な専門知識は、これらすべての分野はもちろん、他の多くの分野にとっても重要になります」

ヒトの骨学のVRコースで紹介されている、本物そっくりな3Dモデルは全て実際の人骨の、サブミリ精度のスキャンから作成されました。これらの骨をキャプチャするために使用された、2つのメトロロジーグレードのプロフェッショナル3Dスキャナは、ハンドヘルドのArtec Space Spiderと、デスクトップの Artec Microでした。

Artec Microによる大人の第一大臼歯のスキャン

各骨のキャプチャをたった数分でできるSpace Spiderは、頭蓋骨や腕や脚の骨など、体にある大きめの骨の3Dモデルを作成するために使用されました。一方で、最大10ミクロンの精度で小型オブジェクトをスキャンすることができるMicroは、手と足の骨だけでなく、椎骨や歯など、多くの小さな骨をキャプチャしました。

Artec Space Spiderで人間の胸骨をスキャンしている大学院生のアンソニー・ランフランキ(Anthony Lanfranchi)さん

このコースをデザインした1人で、マーシーハースト大学の法人類学で修士課程を専攻している学生のアンソニー・ランフランキさんは、次のように述べています。「数年前、Space Spiderを初めて手にするまでは、3Dスキャナを使用した経験はありませんでした。しかし、それでも使用方法を学ぶのはとても簡単でした。従来は、さまざまな角度から骨やその特徴を写真に撮ったり、最も適切な特徴がある部分の鋳型を歯科用石で作成したりして骨を記録していました。そして実際に骨を測定するためにはキャリパーと巻尺が使用されていました」

さらにランフランキさんは続けます。「しかし、写真は必ずしも骨をうまく表現してくれませんし、特定の痕や色、または他の重要な特性がその過程によって簡単に失われてしまう可能性があります。手動で骨を測定する場合、許容できるレベルを結果でこだわる必要がある場合は、時間がかかる測定を複数回行わなければなりません。しかし、最適な結果を得るにはどうしたら良いでしょう?曲線状の有機的な骨の構造や、その表面を考慮すると、こういった古い技術を使用して正確に測定することは、ほぼ不可能と言えます」

机に向かい、ヒトの骨学のVRコースを受講している学生

「しかし Artec 3Dスキャナはそれらを完全にキャプチャします。大腿骨にある長くて広い表面も、頭蓋骨に沢山ある糸のような縫合や深いくぼみも、そして極小の手足の骨も全て問題ありません。このテクノロジーにまだ慣れていない学生を相手に、私は骨などの解剖学的構造を持つもののスキャン方法をほんの数分で教えることができます。しかも、ミリメートル未満の精度で正確な測定を行うことができます。もし測定をするのが、複数の曲線状の表面だったとしてもそれは可能です。手動での測定は、Artec 3Dスキャンが提供できる測定と全く比べものになりません」とランフランキさんは強調します。

ヒトの骨学のVRコースの一環である特徴を識別する授業で、左橈骨の骨間頂部を強調表示している様子

可能な限り最高の解像度で骨をいくつかスキャンした後、ランフランキさんはそれらをArtec Studio ソフトウェアを用いて処理をします 。彼が行うワークフローは、いたってシンプルです。まず始めに投げ縄ツールをクリックして、スキャンから細かいノイズを取り除きます。次に、シャープメッシュ化を実行して、テクスチャを追加します。これだけで、スキャンをさまざまなファイル形式でエクスポートできるようになります。従来は、それと同じことをするにはもっと長い時間がかかっていました。

ランフランキさんが言うには、「以前なら、大規模なスキャンにテクスチャを追加するとなれば、私はそこから一旦離れて別のタスクに取り掛かり、1時間ほどしたらスキャンをエクスポートするためにまた戻って来る、というようなことをしていました。しかし今Artec Studio 15を使用すれば、スキャン全体とそのスキャンの処理を完全にすべて終わらせるのに、約30分しかかかりません。これは本当に驚異的ですよ

ランフランキさんは2020年の初めにArtec Microを使用し始めました。彼は、自動のデスクトップスキャナが直感的に使えて、とても使いやすいことを発見しました。「そのたった数時間後に、私は自分達のコレクションにある小型の骨や歯をキャプチャするための最適な設定を見つけることができました。その後数週間で、人間の小型の骨や動物の骨、そして人間の歯の集合体など、400個以上の要素を簡単にスキャンすることができました」

ヒトの骨学のVRコースの一環である骨を識別する授業で、左側の寛骨を描いている様子

ヒトの骨学のVRコースでの使用に加え、MicroとSpace Spiderから得たスキャンは医学生や歯科生、法医学者や生物人類学者などをトレーニングするためのVRコースを作成するために使用されています。

このVRコースを始めるのに、これ以上素晴らしいタイミングはなかったでしょう。ランフランキさんによると、「今年はコロナ禍があって、私たちの人骨コレクションへのアクセスにも制限がありましたから、今年のVRコースは格別に有益でした。Artec MicroとSpace Spiderの高速スキャン機能と、Artec Studio 15の高速処理機能がなければ、仮想の人骨コレクションを作成するにあたって、私達の豊富な人骨コレクションすべてを自信を持って即VRに対応できる3Dモデルに変換させる方法は他にありませんでした」

Artec Microでスキャンをした、アライグマローターと呼ばれる動物の大腿骨をとらえたArtec Studio 15でのスクリーンショット

現在ダークマート氏のチームは、Space SpiderとMicroから得た3Dモデルを活用する、さまざまなアプリ制作に取り組んでいます。それには、現場の警官による人間と人間以外の遺体の誤認を防ぐために役立つ、法執行官専用のアプリが含まれています。そのアプリには本物の人骨にそっくりな3Dモデルが登場し、シカやクマ、アライグマ、ウシ、ブタなどの人間以外の死骸のサイズが調節された3Dモデルと並べて比較することができます。

Artec Microでスキャンをした、幼いクロクマの足首の骨をとらえたArtec Studio15のスクリーンショット

ランフランキさんによれば、「全国規模で毎日警察は法人類学者に連絡を取り、彼らが見つけた骨が人間であるかどうか尋ねています。通常、人間のものではないという答えになりますが、その見つかった骨はどの種類の動物のものである可能性が一番高いのかも判明します。しかし、警官にこのアプリさえあれば、骨が人間であるかどうか、すぐに自分で確認できるようになります」

ランフランキさんの通う大学が今年の初めにオンライン授業に変更したため、ランフランキさんと彼のクラスメートたちはヒトの骨学のクラスもオンラインで受講しなければなりませんでした。そんな状況の中、授業の実験・実習の部分では、学生達が研究のために実物は参照することができないので、当時は骨の写真しか使用できませんでした。ランフランキさんはそれはとても厄介な経験だったと振り返ります。「これは私達全員にとって非常に困難な体験でした。私達の中では、最終的に大学の実験室に戻って授業ができるようになったときに、写真から学んだはずのことを目の前にある実物の骨では答えられなかった生徒もいました」

Artec Space Spiderでスキャンされてから、Artec Studioで処理された人間の頭蓋骨

ランフランキさんは法医学教育における3Dスキャンの重要性をこのように強調します。「全国の法医学コースでは、パンデミックが発生していない時期でも、骨を直接扱うのではなく、骨の写真が記載された教科書だけが渡されます。Space SpiderMicroのような3Dスキャンは、教科書のページ上にある2次元の写真よりもはるかに優れた学習ツールであることは間違いありません。私達のVRコースで見れたようなスキャンは、実際の骨自体を研究するのと同じくらい、上手く機能すると言って良いでしょう。しかも、限られた実験時間によって観察を制限されることはありません。そのおかげで必要なだけ、自分のペースでじっくり勉強をすることができます」

ランフランキさんは続けます。「VRコースでは、生徒ひとりひとりが自分達だけの骨のセットを24時間、年中無休で利用することができ、誰にも邪魔されずに好きなだけ調べることができます。しかも、骨の現物に損傷を与えるリスクはありません。このおかげで、生徒達は人間の骨格の学び方を熟知している教師から学ぶことができます。ダークマート博士は生徒達が最も効果的に学べるようにコースをまとめて下さいました。それには究極の価値があります」

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