3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

絶滅してしまったフクロオオカミの実物大サイズをArtec 3Dスキャナを使用して発見する

何百万年もかかって行われた進化が、フクロオオカミを生き残りのプロにしました。現存する最大の肉食性有袋類として、フクロオオカミは独自の生態的地位(エコロジカルニッチ)を獲得しました。しかしその後、最初の入植者が現れてしまいました。

クイーン・ビクトリアミュージアム&アートギャラリーで、Artec Space Spiderを用いてフクロオオカミの頭蓋骨をスキャンしている主任研究員、ダグラス・ロビンスキー(Douglass Rovinsky )氏

数十年後の1830年代初頭からその次の世紀にかけて、「タタスマニアタイガー」と呼ばれることもある何千匹ものフクロオオカミが、当時広範囲で普及していた報奨金システムのせいで、農家や狩人達によって意図的に殺されていました。それは生き残りがたった1匹になるまで続きました。

生き残った1匹は荒野で捕らえられ、人生最後の3年間を動物園に閉じ込められて過ごしました。その後、ある冬の終わりの朝、タスマニアにいた最後の1匹と言われたフクロオオカミのベンジャミンは、前夜に動物シェルターに閉じ込められた後、亡くなってしまいました。それは、1936年9月でした。そのほんの59日前に、タスマニアがフクロオオカミを保護する令を出したところでした。

研究者であり、またデジタルアーティストでもあるダミール・マーティン(Damir Martin)氏による、デジタル形式のフクロオオカミの再現物

その朝に至るまで何年にもわたり、フクロオオカミについての非常に大げさに誇張された、悪質で偽の噂が発生し、それが山火事のように広がってしまいました。狂戦士並みの強さを持っているという噂もあれば、ショットガンで撃たれても大丈夫などという話や、殺した犠牲者から血を完全に抜いてしまうなどというものまでありました。

しかし当時、フクロオオカミがまだタスマニアの風景を歩き周っていたころ、科学者たちは正確なデータでそれらを深く研究することに失敗してしまいました。ベンジャミンが亡くなってから1世紀も経っていない今現在でも、この動物への関心レベルは高いのにもかかわらず、科学者たちが未だ知らない事実や詳細が存在しています。

ダミール・マーティン氏によるフクロオオカミのデジタルレクリエーション

例えば、フクロオオカミの食事や交尾の習慣、狩猟の方法、移動の仕方、景観との相互作用や体の重さやサイズの詳細などです。動物の体重にいたっては、まずその動物についての研究を始めて科学的理解を得たいかどうかを見極める最も基本的な側面の1つです。これは化学と生理学において、基礎中の基礎の話です。

フクロオオカミはどのくらいのエネルギーを燃やしたのでしょう?保温性は良好だったのでしょうか?どのくらいの速さで食べ物を消化したのでしょう?そしてどれくらいの頻度で食べなければならなかったのでしょう?どのような動物を狩り、その環境でどれだけうまく繁栄したのでしょう?このような項目を高い信頼度で発見するためには、最初にまずフクロオオカミの体重を知る必要があります。

科学とは、常に他の科学の基盤の上に構築されているものです。つまり、「概念A」をまず正確に、本当に理解できなければ、「概念A」を繰り返し誤解してしまうだけでなく、基礎としてその概念に関連するすべてのものに信憑性がなくなり、理解できなくなってしまいます。

ダミール・マーティン氏によるフクロオオカミのデジタルレクリエーション

何十年にもわたるフクロオオカミの研究を通して、何人かの科学者たちは、その動物の正確な推定体重が欠如していると述べています。しかしその後、その状況を正すために何も行われませんでした。フクロオオカミの体重は約25〜29キログラムであるとよく仮定されていました。しかし、誰もそれは確信していませんでした。

定義されなければならないフクロオオカミのもう1つの深刻な要素は、「肉食のコスト」と呼ばれるものに違反しているかどうかでした。これは本質的に、約14 kg以下の肉食動物が必要に応じて自分よりはるかに小さい獲物を食べる傾向があることを定義するエネルギー収支のしきい値です。

その一方で、オオカミやジャガーなどの約21 kg以上の肉食動物は、通常、自分達と同じサイズの獲物またはそれ以上の獲物を追いかけます。キツネやヤマネコなど、14〜21 kgの範囲に入る肉食動物の場合、彼らは通常、より小さな獲物をターゲットにしますが、時折、より大きな動物を獲物にすることもできます。

ダミール・マーティン氏によるフクロオオカミのデジタルレクリエーション

フクロオオカミの真の体重の範囲を正確に理解しないと、この側面は、他の少数の人々と同様に、ある程度の自信を持って科学的に定義することはできませんでした。

モナッシュ大学にて、時期に博士号を取得するダグラス・ロビンスキー(Douglass Rovinsky)氏とジャスティン・アダムス(Justin W. Adams)博士を含む他3人の研究者チームは、これに対する大きな需要を認識し、それを変えてしまうプロジェクトに取り掛かりました。

このプロジェクトの詳細は、科学雑誌「Proceedings of the Royal Society B」に「フクロオオカミは肉食のコストに反するのか?オーストラリアの象徴的な有袋類の体重と性的二型性」というタイトルで記載されています。

ロビンスキー氏はこのプロジェクトの重要性をこう説明しました。「すべての絶滅した動物と同じように、フクロオオカミについて知れば知るほど、現存している動物が環境の変化にどのように反応するかを理解できるようになります。その環境の変化というものは、世界的なレベルでも、地域的なレベルで見ても、驚異的な勢いで起きています。

彼らが行う研究は、彼らを世界中に連れて行き、スミソニアン博物館のような様々な国にある多くの博物館や美術館の施設で、未だに残っている数少ないフクロオオカミの標本をその場で直接扱い、研究に使用します。

ロビンスキー氏と彼のチームは、動物の歯の測定に基づいて行われる従来の線形回帰の体重推定法にだけに頼ってしまうと、絶滅した動物のケースでは非常に不正確であることが多いことを早い段階で理解していました。

この推定法を適切に行うには、その対象動物に非常に似ていて、今でも現存している親類が必要です。フクロオオカミの場合、それに最も近い親類で今でも現存している動物は、シロアリを食し、1ポンド(0.5 kg)の毛皮で覆われた小型動物である、フクロアリクイです。この2種類の動物を比例的に比較することは、もちろん不可能ですが。

ロビンスキー氏と彼のチームは、複数の体重推定方法の結果を組み合わせることにしました。歯と上腕/上脚の骨による線形回帰は、そのうちの一つでした。また、3Dスキャンされたフクロオオカミの骨格の周りに凸包を作成し、デジタルスキャンを用いて実物そっくりの模型を作成したりしました。そして最後に、スキャンされた剥製マウントと、凸包が作成されたのと同じ骨格のスキャンを用いたフクロオオカミの模型の両方をデジタルで計量しました。

左から上列:Artec Leoを使用したフクロオオカミの骨格のスキャン、およびデジタル計量用に骨格上に構築された凸包体積モデル
下列:デジタル計量の目的で使用される骨格(テクスチャありとなし)を使用して作成された
3D体積のフクロオオカミの模型

この巨大なプロジェクトを適切に実行するには、多段階に及ぶスペクトル分析を行う前に、何百ものフクロオオカミの標本を3Dスキャンをして、間違いなく正確な測定が行える、非常に実物に近い3Dモデル に変換する必要があります。

ロビンスキー氏と彼のチームが直面した課題に、ロジスティクスによるものがありました。というのも、存在するすべての標本は世界中にある18箇所の博物館や研究所のあちこちに広がっているからです。メルボルンにある博物館や、オーストラリアとタスマニアにいくつかある博物館、そして海の向こうの米国にもいくつかありますし、イギリスなどのヨーロッパ全体にもあります。

この滞在中にフクロオオカミの標本をデジタルでキャプチャして体重分析をするために、ロビンスキー氏とアダムス氏は軽量でサブミリメートル精度を誇る、 ハンドヘルド3DスキャナのArtec Space Spiderを使用しました。この2人の研究者はこれらの博物館や研究所を別々に訪問し、保存された全身のフクロオオカミに加えて、骨や頭蓋骨、完全な骨格、全身の剥製、そして数百の標本をスキャンしました。

ジャスティンW.アダムス博士がスウェーデン自然史博物館にて保存されたメスのフクロオオカミの標本をArtec Space Spiderを用いてスキャンをしている様子

プロジェクトが始まる前から、ロビンスキー氏とアダムス氏は、キャリパーと測定ツールを用いた従来の測定方法だけでなく、GDIや写真測量法などの、より現代的な方法にも反対していました。訪問した各博物館では時間的に制限がありましたし、過度の取り扱いによって標本へ不要なダメージを与えてしまうかもしれない可能性があったこともその要因です。

それらの従来の方法は、実行するのに長い時間が必要となってしまいます。まず言うまでもなく、博物館を監督するスタッフを滞在中に毎日何時間も拘束してしまうことになってしまいます。Artec Space Spiderによる3Dスキャンを用いれば、面倒を省いても結果はその従来の方法と間違いなく一致します。

従来の方法を使用する際に起こりうる標本の損傷リスクは、測定プロセス中に標本を繰り返し手にとって置き換えなければならないので発生します。Artec Space Spiderを使用すると、データキャプチャは.05mmまで正確で、これらの従来の他の方法よりも数十倍速く、後処理はほとんど必要ありません。

ジャスティンW.アダムス博士は、スウェーデン自然史博物館にてArtec Space Spiderを使用して、保存されたメスのフクロオオカミの標本をサブミリ3Dで撮影している様子

ロビンスキー氏によると、博物館のスタッフは、この新しい方法は従来の方法が行われた時の経験とあまりに対照的なので、彼らは「大喜び」したそうです。スキャン時間は短いし、その上、標本にダメージが与えられるリスクが低いことも高ポイントだったようです。この2点のおかげで、通常作業を行うためのスケジュールにほとんど変更は要らず、たった数分だけ通常外のちょっとした業務が増えただけで済んだのです。それでも、好奇心旺盛な博物館のスタッフたちは、Space Spiderが使用される様子を頻繁に見学しにやってきました。

彼らは、Space Spiderがいかに速く、そして簡単に機能するかを目にして感動していました。なぜなら、Space Spiderを使用しなかった他の訪問してきた研究者たちと比較すると、私達の作業は実に簡単だからです。まず、大きなスペースはいりませんし、制御された照明もいりませんからね」ロビンスキー氏は言います。

ロビンスキー氏によると、Space Spiderが動作するのを見る前に、博物館のスタッフは大変驚いたそうです。「スタッフさんが、12個の標本はこちらの箱にありますと言うから、それじゃあ大体2時間くらいでそれは終わるから、次の12個はいつもらえますか?と私達が聞いたからですよ。まあ、彼らはきっとデータ収集にかなり時間がかかることに慣れていたのでしょうね」

ロビンスキー氏がSpace Spiderで動物の標本をキャプチャするにあたって、彼は時間をかけてその実行プロセスを洗練してきました。オオカミやフクロオオカミの上腕の骨など、単純なものをスキャンしているときは、彼はこう言います。「それは他と比べて簡単で速いし、標本1つに対してほんの数分しかかかりませんよ。通常、私は3回のスキャンですべてをキャプチャします。それから、携帯用の小型ターンテーブルにオブジェクトを置いて2、3回転分のスキャンをします。私はひとつのスキャンパスにつき、400フレーム程度を目指しています。その後、オブジェクトを裏返してもう一度やります」

クイーン・ビクトリアミュージアム&アートギャラリーで、Artec Space Spiderを用いてフクロオオカミの頭蓋骨をスキャンしている主任研究員、ダグラス・ロビンスキー(Douglass Rovinsky )氏

頭蓋骨のスキャンなら、非常に単純なものもあれば、全体を捉えるのが難しいものもあります。「特に大きな頭蓋骨の場合、すべてを取得するには最大9回のスキャンが必要です。その場合の課題は、届きにくい頭蓋骨の内部であり、多くの場合は顎骨、頬骨、眼窩などのすべてを完全にキャプチャするにはスキャンを幾度かしなければなりません」とロビンスキー氏は言います。

Artec Studioでスキャンを処理する作業は、ロビンスキー氏が美術館を去った後にいつも担当します。「編集やメッシュ化など、すべては後で行うことです。博物館のスタッフにご迷惑をおかけするのを最小限に抑えるために、私はそうする方針でいます。標本コレクションを手にしたら、必要なものをすべてスキャンします。終わったら、すぐ帰ります。スキャン処理などは全て私が後に行います」

また、彼はこう続けます。「私は半日かけてSpace Spiderを使用するだけで、20個または30個の標本を完全にスキャンできました。つまり、データ収集の旅行へ旅立って数週間後には、実際に数百もの標本スキャンを持って帰ってきますし、それらは全て信じられないほど素晴らしい見た目で、しかも正確ですし、私達がそれから作業を行うのに十分な詳細を備えています」

ロビンスキー氏はArtec Studioで行う彼のプロセスをこう説明しました。「最初にスキャンを手動で位置合わせし、次にジオメトリのみを使用してグローバル位置合わせをします。その後、シャープメッシュ化を行います。選択する解像度は、オブジェクトのサイズによって異なります。基本的に犬の頭のサイズ以下のオブジェクトなら0.1でメッシュ化しますが、それよりも大きい場合は大体0.2でメッシュ化します」

彼は続けました。「それからスムースアルゴリズムを1、2回適用します。これに続いて、高速メッシュ単純化を行い、60万個の三角形にします。それはこのプロジェクトには十分すぎる個数ですよ。確かに、60万個の三角形から成る頭蓋骨を150万個のものと比べれば解像度に違いはありますが、それらの違いがはたして古生物学の目的において何か意味のある違いをもたらすかどうかはまた別の話です」

このプロジェクトの次の段階では、ロビンスキー氏はArtec 3Dのゴールド認定パートナーで、メルボルンに立地する Thinglab社と協力し、完全にワイヤレスで、タッチスクリーンを内蔵した3DスキャナであるArtec Leoを使用して、タスマニア博物館&美術館にあるフクロオオカミの標本全体をスキャン しました。これらのスキャンで、博物館にあるフクロオオカミの骨格と全身の剥製マウントを複数キャプチャしました。次に、デジタルの骨格を使用して、凸包モデルの両方を作成し、デジタル模型の開始点として使用しました。

タスマニア博物館&美術館で、Thinglab社のベン・マイヤーズ氏がArtec Leoでフクロオオカミの骨格をスキャンしている様子

Thinglab社の3Dスキャニングディレクターであるベン・マイヤーズ(Ben Myers)氏は、次のように述べています。「私達はLeoが非常に気に入っています。私達だけでなく、私達のお客様たちも様々なプロジェクトでLeoを使用してきました。Leoには、私達Thinglabを感激させた多くの機能があります。VCSELライトテクノロジーは、過去に問題が起こりやすかったサーフェスの位置合わせに、大きな違いをもたらしました」

タスマニア博物館&美術館にてArtec Leoでスキャンがされたフクロオオカミの3Dモデル

彼はまた、こう続けました。「トラッキング機能に非常に感激しました。これにより、難しいジオメトリのオブジェクトでも、その周りを移動できますし、ひとつひとつの全てのサーフェスを簡単にキャプチャすることが可能になりました。もちろん、ワイヤレスでディスプレイが内蔵されているおかげで、スキャンプロセス全体がはるかに簡単で効率的になりました」

タスマニア博物館&美術館で、Thinglab社のベン・マイヤーズ氏が剥製のフクロオオカミの標本をArtec Leoでスキャンをしている様子

プロジェクトの最終段階の話になると、ロビンスキー氏は彼らのチームにいるメンバーで、デジタルアーティストのダミール・マーティン氏に話を振りました。古来の世界を細心の注意を払って描くことが得意なマーティン氏は、これまでに作成されたフクロオオカミの中で最もリアルな3Dモデルの作成を手がけました。

マーティン氏はこのプロジェクトを手掛ける前にもうすでにフクロオオカミについて深く研究をしていて、実はタスマニアの自然環境に属する生き物の素晴らしい画像を多数、過去に作成していました。

マーティン氏は自分の作品の基礎として、Leoでスキャンをし、マウントされた骨格と、剥製マウントを使用しました。そして、彼のフクロオオカミに関する完全な理解と、ロビンスキー氏やアダムス氏らからのインプットを基に、1つずつ段階を追いながらZBrushでそれぞれの生物の筋肉と外観をデジタルのモデルに作成していきました。モデルの準備ができたら、その重量をデジタルで計量し、これらの測定データを他の推定体重値と一緒に次の段階へ持っていきました。

ダミール・マーティン氏によって作成された、フクロオオカミの解剖学的に正確な3Dモデル

マーティンは彼の作品にこのようにコメントしました。「私は常に絶滅してしまった生物に深い関心を持っています。フクロオオカミは非常に多くの点で特別な動物ですし、とても神秘的でユニークな外観を持っています。残念ながら、芸術的な観点で行われたフクロオオカミのほとんどの修復と再構築は、生きていた当時の絶妙なニュアンスを捉えることができませんでした」

「しかし、私達は生き残ってくれたいくつかの貴重な写真と映像のおかげで、実際に生きていた当時のフクロオオカミの外観を知ることができました。ですから、このプロジェクトが非常に困難であったことは、実は私にとって魅力的な要素でした」

ロビンスキー氏と彼のチームは、93匹のフクロオオカミの207個のスキャンを使用して行われた体重推定計算からのすべてのデータを取得してまとめてみたら、フクロオオカミの実際の重量はオスで約19 kg(41.9ポンド)、メスで14 kg( 30.9ポンド)であると決定しました。つまり、オスはメスよりも約30%大きかったということです。

フクロオオカミの推定体重に関する数十年に亘って仮定されてきたものと比較して、ロビンスキー氏と彼の研究者達によるオス・メス両方の推定体重は、初期の結論の約55%になりました。その結果、フクロオオカミは「肉食のコスト」であるという理論に反しないことが明らかになりました。彼らは通常、小型動物を捕食し、たまに自分達よりも大型の獲物を得る、14〜21 kg(30.9〜46.3 lb)範囲内に属する中型の肉食動物だったからです。

この成功したプロジェクトは、フクロオオカミの進化生物学に焦点を当てた、大きな研究の1つの切り口でした。他の大きな研究には、彼らの体重に関する現在の研究を始め、世界各国から収集された3Dデータのサンプルを使用して、彼らの食事や運動、また全体的な生物学としての、より詳細な調査にまで及んでいます。

アダムス氏は、そんな作業において3Dスキャンがいかに重要であるか、こう説明しました。「古生物学者らは、全体的に見てはるかに3次元の方法が正確な推定体重が得られると、やっと認識し始めてきました。これをコンピュータでデジタル測定をする際には、回帰直線上に2つの変数をプロットするのではなく、オブジェクトの形状の質量を測定しているので、3Dスキャンの方が適切に機能するのです」

3Dテクノロジー は、絶滅した動物のサイズの推定を行うにあたって、今までの私達にとって当たり前だった見解に革命を起こしています。今後このようなテクノロジーは、より頻繁に使用されるようになると思います。そして、Artec Space SpiderやLeoがこういった正確なデータをいかに簡単に、しかも速く収集させてくれるかを考慮すると、十分なほどにあり得る話です」

ロビンスキー氏は、そのデータがもたらしてくれる極めて重要な役割についてコメントしました。「難しい点は、生物の決定的な3Dモデルを生成するためには十分なデータが絶対に必要だということです。ほとんどの古生物学者はそれが手に入らないからです。

「もし測定する標本の数が限られていて、作業をするための完全な骨格にアクセスできなかったら、私はここまでの精度を得られなかったでしょうね。ほとんどの古生物学者は、完全な骨格はもちろん、完全な骨さえも持っていません。とはいえ、 Artecスキャナのおかげで私達に必要だった、大量の標本データを簡単に収集できました

ロビンスキー氏はこのプロジェクトの重要性について、最後にもう一度強調してこう述べました。「実際のフクロオオカミに対しての理解を深めるほど、彼らがいかに素晴らしい生物であったかが見えてきます。それでも結局、やはり残念ながらもうフクロオオカミは絶滅してしまったので、すべてのデータ、観察結果、そして私達の思うところはすべて研究者がベストを尽くした結果での推測にすぎませんからね」

彼はこう続けます。「私たちの研究とデータはすべて、観察、解釈、測定などによってフィルターにかけられています。そのため、体重のような基本的なデータを知ることは様々な研究の中でも特別に重要なのです。無数の他の研究が、このフクロオオカミの一見さほど重要でないように見えるデータを基に研究を進めるので、その影響力は実は大きいのです。