Liverpool School of Art and Design(リバプール美術デザイン学校)での3D可視化プロジェクト用顔スキャン
リバプールを拠点とするFace Lab 3D(フェイス研究所3D)は法医学、考古学的研究、インスタレーションアート、そして新規大学院プログラム「MA Art in Science」にArtec 3Dスキャン技術を使用しています。
フェイス研究所は、Liverpool John Moores University(リバプール・ジョン・ムーアズ大学)内のリバプール美術デザイン学校を拠点とした研究グループです。法医学、考古学的研究並びに、警察、国内や国外の博物館、法医学施設等の機関用コンサルタント業務を実施しています。
この研究所は3Dスキャニングおよび他の最先端技術を使用し、科学捜査で遺体の身元確認や、考古学的描写における歴史的人物を特定する頭蓋顔面分析を行っています。チームは腐乱遺体発見後に法医学ケース用に顔画像を作成し、発見された頭蓋骨と既存の証拠から復元する事により、死亡した人々の外見を再現する作業を考古学者と共同で行います。
死後の腐敗、頭蓋顔面再建、表示の倫理、そして顔面アニメーションに関する研究が、3Dスキャナや3Dプリンタ、3Dモデリング、テクスチャ、アニメーション、そして触覚再現用ソフトウェア等の最新テクノロジーが設置された非常に専門的な研究所で実施されています。また、フェイス研究所は市民参加型活動や世界的展覧会への寄与を通じてその研究を公開しています。
最近行われた市民参加型イベントで、顔のスキャニングをしているフェイス研究所のマーク・ラフリー氏
Artec Spiderをフェイス研究所のツールキットに追加する
フェイス研究所は解像度が低く、色彩を捕らえない旧式のハンドヘルド3Dスキャナの交換のため、Artec Spider高精度3DスキャナとArtecバッテリーパックの購入に関し、Artecの英国のゴールドパートナーであるPatrick Thorn & Co社と連絡を取りました。
フェイス研究所と「MA Art in Science」プログラムの研究・教育助手のマーク・ラフリー氏は「大学のの他学部でパトリックが実演説明をしている時に見た事がありました。」と語ります。
注文後、パトリック自身がARTECシステムのインストールを行い、スキャナの機能とARTEC Studio 3D スキャン・後処理ソフトウェアの使い方に関する包括的な1日トレーニングを提供しました。
「使いやすいArtecシステムは持ち運べて高精度。人骨の顔の3D復元用画像キャプチャにスキャナを使う時、どちらも重要です。Artecバッテリーが必要不可欠な、世界中の様々な現場での撮影では特に。」と、マーク氏。
バクストン博物館で「Liffs Low Man」をその場でスキャニングしているフェイス研究所のチームメンバー
色彩をキャプチャ出来る能力はフェイス研究所チームにとってとても魅力的であり、写真的テクスチャを含む顔の3Dの入手はチームのよりリアルな顔アニメーションの作成を可能にするため、彼らの顔アニメーション研究に非常に有益であると認識されました。またフェイス研究所は、ZBrush等の3Dモデリング用ソフトウェアの3Dの考古学的描写にリアルな皮膚を追加するのに使用可能な写真的テクスチャを用いて、顔の3Dと耳等の顔貌用データベースも作成しています。
Artec Spiderは、以前の3Dスキャンには困難だった素早く正確な頭蓋骨のスキャニングを可能にします。過去に生存していた人々のフェイシャル・デピクションを作成する時に、この機能はフェイス研究所の3Dワークフローに欠かせません。
Artec Spiderを使用してキャプチャされた写真的テクスチャを備えた顔の3Dスキャン
スコットランド王ロバート1世の顔の再現
フェイス研究所は2014年に結成されたにもかかわらず、グループの研究者達は頭蓋顔面分析において大きな成功を収めています。チームの最新のフェイシャル・デピクションであるスコットランド王ロバート1世(1306年から1329年)はグラスゴー大学との共同研究で作成され、ハンタリアン博物館から貸し出されたロバート1世の頭蓋骨型の一つを3Dスキャニングする事から始められました。これはフェイス研究所チームによって用いられている触覚彫刻システムを使用し、顔の3D復元過程を始めるための最初のステップでした。ロバート1世の画像は、2016年12月に発表されると国際的に注目され、BBC Albaで放映された「Ceann an Righ(王の頭)」というドキュメンタリー番組で特集されました。
ロバート1世:フェイシャル・デピクションの段階写真提供:フェイス研究所LJMUとグラスゴー大学
フェイス研究所のArtec Spiderは人骨をスキャンするため、現在ヨーロッパとイギリスの各地を移動しています。そのポータビリティは制限された博物館のコレクション内やその場でのフェイス研究所による人骨のスキャンを可能にしています。現在、Spiderからの3Dスキャンを第一段階に使用した最終的フェイシャル・デピクションはノルウェーのブリッゲン博物館、バクストン博物館、そしてダブリン大学トリニティ・カレッジにてご覧頂けます。
インスタレーションアート用スキャン
フェイス研究所は2015年に、バイオアーティストのジーナ・クザーネッキー氏とジョン・ハント教授と協力し、「Heirloom(家宝)」プロジェクトに取り組みました。開始以来、このプロジェクトは世界中で展示され、最近ではリバプールのFACT (Foundation for Art and Creative Technology)で開催された「No Such Thing as Gravity(重力など存在しない)」という展示会の一部として出展されました。フェイス研究所はArtec Spiderを使用してジーナ氏の娘達の顔を3Dスキャンしました。これはスキャン画像をバイオガラスに3Dプリントし、その後2人の娘達の口から採取された細胞を、繊細なガラスの顔に増殖させる事により生きた3D肖像画を作成するという、アーティストの意向を反映するために行われました。
ジーナ・クザーネッキー氏とジョン・ハント教授、「Heirloom(家宝)」2017年写真提供:FACT
2016年には、MIMA (Middlesbrough Institute of Modern Art)で開催された、ターナー賞にノミネートされた事もあるジェーン・ウィルソンとルイーズ・ウィルソンの「Undead Sun: We Put the World before You(死なない太陽:私達が世界をあなたの前に置く)」の展示会に協力しました。フェイス研究所はアーティスト達の顔(ジェーンとルイーズは一卵性双生児)をスキャンし、そしてこの3Dデータを使用して彼女達の顔がお互いにモーフィングし、最終的にジェーンとルイーズの平均的な顔が作成されるアニメーションを制作しました。このビデオは、第一次世界大戦の兵士達が負った傷を象徴した、醜い傷で覆われた平均的顔の3Dプリントと一緒に、彼女達のインスタレーションに組み込まれました。
ジェーン・ウィルソンとルイーズ・ウィルソン、「Undead Sun: We Put the World before You(死なない太陽:私達が世界をあなたの前に置く)」2016年から現在写真提供:アーティスト
リバプール美術デザイン学校の「MA Art in Science」大学院プログラムの開始
フェイス研究所チームに在籍するキャロライン・ウィルキンソン氏、マーク・ラフリー氏、そしてキャサリン・スミス氏は2016年にリバプール美術デザイン学校で「MA Art in Science」という大学院学習プログラムを開設しました。このプログラムはアーティストにとって、公衆衛生、天体物理学、スポーツ科学、テクノロジー、博物館実習、コンピューティング、医学、そして法医学の分野と協力するユニークな機会です。このプログラムの一環として、学生はフェイス研究所にて3D業務に触れ、Artec Spiderとソフトウェアのトレーニングセッションを受けます。現在、2人の学生がArtecのソリューションを用いたプロジェクトを仕上げています。
「ソリューションを購入して以来、パトリック・ソーン氏とArtecは素晴らしいサポートを提供してくれています。」と、マーク氏。「全てのスキャンを最終モデルに非常に簡単に変換してくれるArtec Studioソフトウェアにアップグレードしました。オートパイロットモードを含むアップデートは処理を更に簡略化してくれます。学生やあらゆる種類のユーザーに必要不可欠です。」
耳の3Dスキャンのデータベース作成用に「MA Art in Science」の学生プロジェクトの一環としてArtec Spiderを用いてキャプチャされた3Dスキャン
さらにマーク氏は「Artec Spiderはフェイス研究所と「MA Art in Science」の学生に芸術・科学研究の新しい分野 を調べさせ、アーティストや博物館との新しく興味深い方法による交流を可能にしています。」と、語ります。「Artecとパトリック・ソーン氏との連携はこのソリューションを簡単に統合させ、私達のプロセスにとってかけがえのない存在にしました。さらにスキャナが必要になった時には、迷わず彼らに連絡します。」