Artec EvaとSpace Spiderを使用し、救助活動や映画、監視パトロールなどの目的に使用する装置をヘリコプターに設置する
航空機の中でも、ヘリコプターは特に魅力的です。空を切るように勢い良く回転するブレードが空を舞い、とてもパワフルなヘリコプターのエンジン音が響き渡るときは、捜索救助隊の活動や天然資源の監視パトロール、軍事派遣、防火、または医療輸送が行われていることを示します。誰でもヘリコプターを見かければ、何か重要なことが起こっているに違いないと思うはずです。
しかしTech Strakeのように、日本で航空機のカスタマイズを専門とする企業のおかげで、この素晴らしいヘリコプターをより一層素晴らしくすることは可能です。Tech StrakeのCEOである引地正和(ひきち・まさかず)氏は、彼らの仕事の重要性をこのように強調しました。
「私達が主に焦点を当てていることは航空機のカスタマイズです」と彼は言います。「それは大切な公共事業のために行うことですから、重要な仕事です。例えば救助隊や警察のヘリコプターをカスタマイズしたり、国土地理院による地形スキャンを取り扱ったりします」
ここでのタスクとは、救助活動や環境の監視パトロール用にヘリコプターが見下ろす領域の航空写真をキャプチャできるよう、ヘリコプターに斜め下向きのカメラを装備することでした。
スキャンがされてもよい状態のヘリコプター。(画像提供:Tech Strake)
ヘリコプターにカメラを追加するのは簡単な作業のように思えるかもしれませんが、ヘリコプターの下部構造にしっかりと固定して、効果的な使用を保証するには、高度な詳細とカスタマイズが必要になります。
「さまざまな業界が写真を扱う作業のためにこの種のマウントを必要としていますが、多くの場合、マウントが簡単に手に入らないことがあります」と引地氏は説明します。「それを安全に設置して、飛行に伴う危険や何かが落下してしまうリスクを軽減させるためには、これらの大きなマウントは特注で作成しなければなりません」
そして、ここからが Artec 3Dスキャナの出番になります。
Artecとの出会い
Artec Evaを頻繁に使用し、自社の従業員として8年、その後CEOになってから5年の間に、合計10年以上も3Dスキャンを使用している引地氏にとって、このプロジェクトに3Dスキャンを使用するというアイデアはすぐに思いつきました。
「私は3Dスキャン技術を長年経験してきましたから、このプロジェクトが始動した際にはもうすでにその技術を使えば3Dスキャンから3Dモデルをどれだけ正確に取得できるか想像できていました」と彼は言います。
日本のArtecアンバサダーである株式会社データ・デザインの協力を得て、3Dスキャン計画が策定されました。多くの主要自動車メーカーの本拠地である名古屋に本社を置くこの会社は、Tech Strakeなどの主に自動車関連の顧客ベースを持っています。
このプロジェクトは非常に特殊なパーツと大きな表面積に焦点を置いているため、Artec EvaとArtec Space Spiderの組み合わせを使用することになりました。Evaをヘリコプター全体のキャプチャのために、そしてSpace Spiderを細部にズームインしてキャプチャするために使用するのです。
適切なスキャナさえあれば、どんなミッションでも不可能ではありません。(画像提供:Tech Strake)
「Evaはとても軽く、持ち運びが簡単です」と引地氏は言います。「狭いスペースに入りこむことができ、しかも撮影範囲と距離が広いのです。Space Spiderは、非常に正確なスキャンを生成しながら、小さいパーツの間や非常に狭いスペースのパーツに入りこむことができます」
Artec 3Dにおいて最高峰のスキャナであるArtec Evaは、軽量性やその使いやすさと汎用性により、同社で最も人気のあるスキャナの座に着いています。この構造化光3Dスキャナは、車のエンジンから人体や家具に至るまで、中型のオブジェクトをすばやく、そして正確にスキャンするのに適しています。
プロセス
Tech Strakeが取り扱う仕事では、専攻することが鍵で、正確性が不可欠です。そのような状況で、3Dスキャンはヘリコプター用のマウントやラック、リグなどの1度限りのアイテムの製造など、合理化された処理に不可欠となっています。今回のプロジェクトの場合では、カスタマイズされたカメラマウントが必要でした。
「カスタマイズされたオブジェクトを作成するには、3Dスキャンが不可欠です」と引地氏は言います。
「3Dスキャンの最大の利点は、複雑な表面の測定で得られる精度です。例えば、非常に小さいパーツで正確なフィットを得るには、まず正確な測定が必要ですから」
ひとつの完全な3Dモデルを作成するには、スキャンデータを組み合わせる必要がありました。(画像提供:Tech Strake)
彼は、その正確な測定を3Dスキャンを使用せずに行うのは非常に困難なことであると言います。また、3Dスキャンなしではぴったりきちんとフィットしないパーツの製造に多くの時間を浪費することになってしまう上、手直しも多く必要になると言います。
「こういった類の複雑な表面や、特に許容誤差が非常に厳しい航空機の場合、3Dスキャナから非常に正確な測定値を取得することができれば、時間と労力の大幅な節約になります」
もともとは国際宇宙ステーションでの使用の目的で設計されたSpace Spiderは、サブミリ精度と鮮やかな色で機械部品や複雑なジオメトリを高解像度でキャプチャできる能力で知られています。鍵やコイン、小型機械部品などの複雑なディテールを持つオブジェクトを可能な限り最高の品質でキャプチャすることができるSpace Spiderにとって、鋭いエッジや薄いリブ構造のキャプチャは全く問題ありません。
カメラマウントは上手くリバースモデリングされることができました。(画像提供:Tech Strake)
そのスキャンプロセス全体は10時間もかからず完了しました。このプロセスには、ヘリコプターの内部と外部両方をスキャンするために必要なセットアップが含まれていました。この大規模なタスクの後、Artec Studioを用いてスキャン処理が開始されました。処理には、アラインメントやグローバル位置合わせ、不要なジオメトリの消去にノイズ処理、そしてシャープメッシュ化が含まれていました。
スキャンと初期の処理が完了した後には、そのデータをさらに処理する必要がありました。
「各データセットを合成し、Geomagic Design XでそれをCADデータに変換してから、SOLIDWORKSで特別なギアを設計しました」と彼は詳しく説明します。
SOLIDWORKSでは、ヘリコプターのすべての表面と角を考慮してパーツをリバースモデリングするために、インポートされた3Dモデルを中心にしてカメラマウントの設計とモデル化が行われました。その後、新しく設計されたカメラマウントのモデルは機械加工データに変換されました。
機械加工プロセス中に切削工具は、3Dモデルが導くコンピューター化されたパスに従って、原素材のブロック(この場合はアルミニウム)から素材を除去し、オブジェクトを形成します。この3Dスキャンとリバースモデリングの組み合わせにより、このプロジェクトチームは可能な限り最高にふさわしい結果を得ることができました。
改善の始まり
小~大規模の表面をスキャンできるため、どちらのスキャナもTech Strakeチームのプロセスを大幅に改善することができました。「Artecスキャナを購入する前は、キャリパーを使用して手動で測定し、石膏で成形していました」と引地氏は説明します。「特に石膏を使用した場合は、その能力に限界がありましたし、石膏が滴ってくるせいで綺麗に成形することはできませんでした。それに、手動測定の効率はひどいものでした」
「EvaとSpace Spiderの3Dスキャナは、反復作業を大幅に削減させてくれただけでなく、データ収集の精度も大幅に向上させてくれました」と引地氏は言います。「さらに、これらのスキャナは携帯性が高く、以前は測定が困難であった狭いスペースなど、どこでもスキャンするために使用することができ、優れたパフォーマンスを実現します」
このヘリコプターをあらゆる角度(内側と外側の両方)からスキャンしなければなりませんでした。(画像提供:Tech Strake)
Evaの携帯性、サイズ、軽量性に加えて、Space Spiderの特に細部へのこだわりにより、プロセスは改善され、作業時間は大幅に短縮されました。
「従来の工法に比べ、精度はミリレベルからサブミリレベルに向上しました。そのため、手直しを可能な限り大幅に削減することができ、その結果、従業員の労働時間が大幅に削減されたのです」と引地氏は言います。
以前なら、航空機の特定の部品を完成させて製造するのに数ヶ月かかってしまっただろうと彼は付け加えました。現在では、2週間ですべての準備が整います。これはただ時間を節約するだけではなく、お金の節約にもなります。
機械加工された部品は取りつけができる状態にあります。(画像提供:Tech Strake)
その部品の製造が完了したら、次の2つのテストに合格しなければなりません。それはクライアントの満足度と、航空当局からの安全チェックです。
「どんな設備でも、航空機での使用が認められるには、厳しい制限と厳しい条件を満たさなければなりません」と引地氏は言います。しかし、EvaとSpace Spiderを用いたテスト結果は全てクリアでした。「エンドユーザーからも政府からもなにも苦情はありませんでした」と彼は言います。「初めてのトライで検査に見事一発合格し、すべてが期待どおりでした!」
未来への飛び立ち
Tech Strakeチームはここで立ち止まることはありません。彼らは、Artec 3Dの新しいHDモードとさらに多くのスキャナを将来使用する予定で、これからより多くのスキャンができる機会に目を向けています。
「常に新しいモデルが続々と出てきていますし、新しく異なるタイプの航空機用にそれらを活用するプロセスは現在進行中です」と引地氏は言います。「私達は将来的には、RayとEva、そしてSpace Spiderのデータを統合して利用していきたいと考えています」
株式会社データデザインのジェフ・ボイド(Jeff Boyd )氏のチームは、彼らが提供できるテクノロジーは一体彼らのクライアントはどこまで利用できるのかということに多大な興味を持っています。彼はこのように言います。「Tech Strakeの仕事に貢献できることをとても嬉しく思います。カスタムメイドの製品やカスタマイズの作業は実際の製品に合うように調整するため、そういった場合にはアナログの作業は増える傾向にあります」
「しかし3Dスキャンによるデジタル化で、メンテナンスやさらなるカスタマイズが将来的に可能になります。それはただお客様のビジネスを改善するだけでなく、お客様のサービスを拡大するためにも使用することができるのです」