Artec EvaとCerebraでカスタム3Dプリントの子供用ヘルメットを作成
脳関連の神経学的状態を持つ子供たちを支援する英国の慈善団体は、3Dスキャンと印刷を使用してカスタムの乗馬用ヘルメットを作成する必要がありました。
Imogenは他の子供たちと同じように走ったり遊ぶことができません。でも、馬に乗ることはできます。脳性麻痺の一種である痙攣性沈降症で11週間早く生まれた彼女は、多くの時間を車椅子が座って過ごしています。乗馬はImogenにとって大きな喜びでしたが、水頭症という脳が過度腫脹した状態で生まれたので、彼女の頭は通常よりも広く、正しくフィットした乗馬ヘルメットを見つけることができませんでした。
彼女がつけていたヘルメットは大きすぎて、乗馬中に目の上に落ちたり、小さすぎてつけ心地が悪かったりしました。彼女の母親は、大きなヘルメットの下にクッションをくさび留めしなくてはいけませんでしたが、しばらくするとImogenはずっと頭が痛いと訴えることになるというのが常でした。
快適な乗馬ヘルメットを見つけることはできませんでしたが、Imogenの乗馬への愛と献身は深まり、ドレサージュ(馬場馬術)へと進むことになったため、正しいフィッティングヘルメットを見つけることがより重要になりました。乗馬は危険なスポーツで、負傷した騎手が緊急治療室へと入る割合は、実はオートバイ、サッカー、スキーよりも最大400%も高いのです。
選択肢が無いことに苛立ちを覚えながら、Imogenの母Catherineは Cerebra社に赴きました。通常の製品には足りないニーズを必要とする子供のためのカスタム製品を作成するのに、英国全体で知られている慈善団体です。Wales Trinity Saint Davi大学の Cerebra Innovation Centre (CIC) は、100%の寄付金で設立された組織で、子どもたちを喜びにあふれた人生に返すだけでなく、非常に機能的で革新的な楽しい製品を開発しています。遊び場や学校で同センターの製品を見かけた子どもたちが、しばし同じものがほしいと親に尋ねることがあるほど魅力的な製品を製造しています。
Cerebra Innovation Centreの設計エンジニアは、すでに水頭症の子供のためにカスタムヘルメットを制作したことがありました。 Ross Head 博士が始まりを説明してくれました。「最初のプロセスでは Artec Eva スキャナを使用していましたが、何ができるかがわかると、私の心は、仕事でそれをどのように利用できるかについてのアイデアでいっぱいになりました!オーダーメイドのヘルメットを作るために使えるって。」
「スキャンをすることで、金型の3Dプリント、シェルのファイバーグラス、ポリスチレンライナーのCNC加工のシナジーができるようになり、すぐに最終的な設計/製造プロセスが決まりました」
Ross Head は、 ATiC (Assistive Technologies Innovation Centre) のディレクターであるan Walshとイノベーターのチームによって、Artec Evaを初めに紹介されました。これに先立ち、ATiCはArtecのゴールド認定代理店、Central Scanning社で3Dスキャンの専門家と相談し、Artecのスキャナのプレゼンテーション中に、ATiCはEvaが必要なツールであると確信しました。
ATiCは統合研究センターであり、ユーザー中心のデザイン思考と戦略的イノベーションツールを実践し、Health and Wellbeing内のコラボレーションに重点を置いています。
ATiCは、3Dスキャン、バイオメカニクス、アイトラッキングなどのさまざまなリアリティキャプチャ技術を活用しています。高度なプロトタイピング機能のある機器とともに、最先端の3Dプリンターも活用しています。ATiCはまた、健康と福祉の分野全体で新しい製品、サービス、システムを革新することにより、他の多くの慈善団体や組織をサポートし、支援しています。
ATiCチームはこれまでCerebra社の Rossと協力し、Artec Evaを使用した3Dスキャンを提供。Imogenのヘルメット開発を革新してきました。ATiCとCerebraの両方が設計と製造プロセスをさらに開発し、革新することを目指すこのコラボレーションは、これから続く大きな革新の一歩となります。
ImogenとArtec Eva スキャン中の様子
Artec Evaは100%安全なストラクチャード白色光を使用し、すぐにスキャンが可能な軽量の3Dスキャナであり、子供でもほんの一分間だけ静かにしていればスキャンが可能です。3Dスキャンは、スキャナのソフトウェアであるArtec Studioの画面にリアルタイムで表示されます。スキャンは3D 印刷の前に CAD ソフトウェアに処理され、エクスポートされます。CADソフトウェアでは、子供の頭のオフセットが作成され、正確な3Dモデルを作成するための正確な寸法を取得することが可能になり、完全にフィットするヘルメットを創ることができるようになります。
ImogenとArtec Eva スキャン中の様子
「顔と頭のスキャンで、ImogenはEvaに興味を持ち何度も覗き込みましたが全く安全性に問題はありません。スキャンの間じっとしているのも問題なく、終わったことに気が付かなかったくらいです」と、Ross Headは振り返ります。
Artec Eva での Imogen のスキャン Artec Studio softwareの画面
スキャンして CAD に書き出した後、2 部に別れたモデルが作成されます。Rossはその後、ヘルメットの作成の物理的なプロセスを説明してくれました。「内側のポリスチレン保護層はCNC加工用に書き出され、シェルモデルを使用して3Dプリント(メス)金型を作成します。金型の内面が滑らかになると、繊維ガラスとケブラーの層がエポキシ樹脂を使用して非常に強い外殻を作るために敷かれます。」
Ross Head 市販されているるLサイズのヘルメットとCerebra 社のMサイズヘルメットを手に
その後、ヘルメットはBSI(英国規格協会)によって完全に承認認定され、その高いレベルの保護と品質を証明されました。これまでに3つのヘルメットが作られており、2人の子供(Imogenを含む)がATiCのArtec Evaでスキャンされました。より多くのヘルメットが製作中であり、 Cerebra Innovation Centre には、ヘルメットへの関心がいろいろなところから集まり始めています。
Ross Headは結果に非常に満足しています。「私たちは本当にEvaスキャナとともに歩み始めたばかりです...子供たちひとりひとりのためにカスタマイズされた製品を作成しているのですから。Evaは、子供の正確な測定値を使用して物事を作ることができるので、子供がそれを置いたり、その上にまた中に座ったりしたときに、まるで手袋のようにフィットしたら、これまでそうではないことに慣れてしまっていた子供にとっては、こういった完璧なフィット感は、まさに夢がかなった状態なのです。」
Ross Head とImogen 新しいヘルメットを着用しての乗馬前
「今回はヘルメットですが、Eva を使っての様々な用途を考えています。私たちに必要な正確さがあることがわかっているので、子供たちの生き生きとした生活を取り戻すという夢を制限するものはもう何もありません。」
カスタムヘルメットに加えて、Cerebraはまた、障害を持つ子供のための他のカスタム製品の一覧表を作成しました。これにはスイングハーネスが含まれるので、子供たちは落ちる危険なしに安全に公園のブランコに行くことができるようになります。年長の子供のための弾力のある椅子は、彼らが安全に遊び、体を自由に使うことができるようにするものです。障害のある子供のための安全シートを備えて、雪の上を滑ることも可能です。お馬さんやロッキングチェア、身体的な問題を抱える小さな子供たちが外出先で健康的な姿勢を保つことができるGoTo姿勢サポートシートなど、その他にも多くの製品です!
Cerebraの確固たる信念は、子供たちが夢見ることができるものは何でも受け入れて作ってみる、ということです。だれかが無理だと言っても、それを受け入れる必要はありません。このモットーを胸に、Cerebraはトライアスロン、サーフィン、さらには登山などのイベントに参加する子供のため、あらゆる種類の特別な機器を設計してきました!例えば、昨年の秋、Cerebraは、Imogenが南ウェールズの最高峰の頂上に登ったとき、彼女のために特別に設計したカスタム四輪マウンテンバイクに座ったImogenに同行もしています。
CICチームと Imogen サウスウェールズ最高峰Pen y Fan頂上にて
Imogenの母親は「登頂に成功して、Imogenはとても興奮していました。彼女がこの冒険をすることができたのは、Cerebraのチームのおかげです。脳性麻痺なのでこういったことはできなかったのですから。何度も身体活動に参加できず、気持ちが落ち込んでいたんです。こういうことができるというは、彼女の自信と自尊心を大きく後押しします。」
Imogen 新しいヘルメットとカバー そして大親友と!
「Imogenは本当に新しいヘルメットが大好きです!とても快適で、素晴らしいようで、私たちがOKすれば、ずっと馬に乗り続けるでしょう! Cerebra Innovation Centre は、彼女が愛するスポーツで競うことを可能にしてくれる素晴らしい超快適なヘルメットを作ってくれました!Cerebraは、Imogenのヘルメットのシルク部分を(乗馬用ヘルメットカバー)大好きなピンク色にまでしてくれたんです!」