Artec Leoで馬をスキャンし、それをアートとしてデジタルで表示する
「ほとんどの人は馬をスキャンすることなんて、不可能だと言うでしょうね!」と言うスウェーデンのアーティスト、トーベ・キエルマークさんは、次の美術展のために複数の馬をスキャンするという膨大な仕事を引き受けたそうです。
「そんなことはまだ誰もやったことがありませんよ」と彼女は続けました。「だからやろうと決心したんです!」
これはあらゆるサイズの馬のスキャンと3Dデータの処理にフォーカスした、エキサイティングな新しいアートプロジェクトです。
コンセプト
キエルマークさんにとって、彼女のアート心を刺激するのは、動きを捉えるというアイデアそのものです。
「私は長い間、動きのある体をスキャンすることに興味を持っていました。そして、これらは私が最も満足している結果なんです」と彼女は言います。
3Dスキャンと、動き自体が芸術であるというこの哲学の組み合わせにより、2022年4月に予定されているストックホルムでの「馬とロボット、そして計り知れないもの(The horse, the robot and the immeasurable)」というタイトルの展示会の発展に繋がりました。アイデア:可測性の限界に挑戦し、動きのある身体性や人間、馬、ロボットにおける相互作用を調べること。計画: 静止している馬と動いている馬の両方をスキャンし、その結果からアートシリーズを作成すること。
このアーティストはこれまでに10頭の馬をスキャンしてきており、現在、すでに彼女の最終目標に近づいています。これらの馬から作られた彫刻コレクションを展示するために、それらは様々なサイズでできた馬の全体の(又は部分的な)彫刻として3Dプリントされました。それにより、異なる形状をした、壮大な馬たちのさまざまな構成ができあがりました。
キエルマークさんとコラボレーションをしたのは、スウェーデンのArtec 3DパートナーであるScan 3D Innovations ABでした。この会社のCEOであるテディー・ラーソン(TeddyLarsson)氏が、スキャンとトレーニングを支援するために介入したのです。「トーベさんの創造性は、2Dと3Dの彫刻を組み合わせることが基盤にあり、彼女が制作作業に選んだツールは使いやすさと高品質を提供してくれるArtecスキャナでした」と彼は言います。「このスキャナのおかげで、彼女が求める結果を得ることができるんです。これが、私たちのコラボレーションが始まったきっかけでした」
どんなに速くてシームレスであっても、馬をスキャンすることは一人で行える作業ではありません。
馬をスキャンする方法
サイズが大きく、落ち着きがないことが多い生き物を扱う場合にスキャンを成功させるには、いくつかの要因を考慮しなければなりませんでした。
「私たちはいつも馬のたてがみを編んでいるので、スキャンは簡単です」とキエルマークさんは言い、このスキャナはたてがみの細部をキャプチャすることは確実に可能なことは知っているけれども、このプロジェクトではそれは必要不可欠ではなかったと指摘しました。
次の考慮すべき要因は、馬の自然な動きです。尻尾を振り回したり、後ろ足で完全に立ち上がったり、様々な動きがあります。ここでは、馬のトレーナーと緊密に連携することが不可欠です。「私はトレーナーさんに馬をできるだけ動かさないように頼むんです」と彼女は説明し、馬が自分達がスキャン作業に使用するハードウェアに対して安心感をまず持っていることが重要であると強調しました。
「馬はすべてに反応するので、スキャナの匂いを少し嗅がせます」とキエルマークさんは言います。「彼らは点滅するライトに少し反応しますが、これはLeoでは問題になりませんでしたから、とてもうまくいきました」
Leoを使用したワイヤレススキャンにより、馬のスキャンのプロジェクトがはるかに簡単になります。
最初のスキャンは Artec Evaで行い、小さいながらも強力なこの3Dスキャナの点滅ライトは馬をイラつかせてしまいました。その次にArtec Leoを使用したところ、これが理想的なソリューションであることが証明されました。「Leoを使用すると、他のスキャナと同じような「ビーッ、ビー」と繰り返す音や、フラッシュの周波数が高くならないんです」とラーソン氏は説明します。ワイヤレスでオンボード処理を行うことで、Leoはあらゆる角度から馬をすばやく、正確にスキャンできるようになりました。
スキャン自体は、馬の頭の場合はたった数秒で、全身の場合は数分で完了させることができます。また、どんなタスクでも、プロセス自体は非常にシンプルです。
「私はまず馬の片側から始めて、頭までスキャンし、それから前面をキャプチャしてから、反対側に移動します」とキエルマークさんは言います。「すべてが計画通りに進めば、4秒くらいかかるかもしれません。本当に速いです!」
馬の全身ならどうかというと、いくら巨大な獣のような馬だったとしても、 6フィート (高さ170から180cm)近くのスキャンは、1分弱で完了します。「まあ、馬がちゃんと静止してくれていればの話ですけどね!」と彼女は笑いました。
そして、計画どおりにいかない場合、つまり、馬が動いてしまってスキャンを中断せざるを得ない場合には、トラッキングの維持が常にシームレスであることが証明されました。これは、せっかちな馬を扱うときに特に不可欠な要素でした。馬が動いたとしても、スキャナはすでにキャプチャされたポイントを識別し、中断したところから再開することができたのです。
"これは素晴らしいです。このスキャナは本当にインテリジェントでスマートです。本当に最高です - こんなに速くスキャンができるなんて、思ってもみませんでした!」とキエルマークさんは言いました。
馬が動いてしまっても、トラッキングのおかげでスキャンプロセスは速くなります。
彼女の展覧会のために、キエルマークさんは様々な馬の動きやポーズ、そして位置から構成された彫刻を展示したいそうです。これには完全で、完璧な形のものが少なくとも1つ必要になります。 この馬の全体を完璧にとらえたデータキャプチャは、特に動く形態の作品で使用されます。
「私は1頭の特定の馬を完璧にキャプチャしたかったんです」と彼女は言います。「このために、私は一頭の馬を2回スキャンしました。1つのスキャンでは頭以外のすべてを含むようにし、頭はまた別にスキャンしました」
スキャンが完了すると、すぐにデータの転送と処理が開始されます。
馬のスキャンを処理する方法
彼女が行ったプロセスを私達に教えてくれたとき、キエルマークさんはまず最初にすべてのデータをArtec Studioで見るのだと言いました。「スキャンデータを表示させて、さまざまなフレームをすべて確認します。たとえば、馬の片側だけで1,524フレームもあります。それから、それがまるでアニメーションであるかのようにシーケンスを見ます。重要でない部分もあるので、それらは最初のうちに削除できます」
さまざまなスキャンと馬のさまざまな部分に対してこのプロセスを続け、次にそれらを位置合わせします。
Artec Studioの位置合わせだけでなく、「シャープメッシュ化」ツールもこのプロジェクトで活躍したツールだったことが証明されました。「シャープメッシュ化ツールを使えば、本当にすべてを見ることができるんです」と彼女は言います。「たとえ短くても馬の柔らかい毛皮や筋肉など、すべてです」
キャプチャされた3DスキャンデータにArtec Studioのさまざまな機能を適用することで、キエルマークさんが求めていた結果が得られました。
「シャープメッシュ化」に加えて、キエルマークさんは「高速メッシュ化」もデータに適用します。Artec Studioの使いやすさは、アートに意外な機会をもたらしてくれたと彼女はいいます。 自分でパーツの位置合わせができることで、 1つのスキャンから多数のモデルを作成できるのです。これは、馬のスキャンデータの芸術的な使用には特に有益であることが証明されました。
「データの準備ができたら、馬のモデルで2~3種類のことができます」とキエルマークさんは言います。「まず、馬全体の小型バージョンを3Dプリントして、実際にその完璧なモデルの状態を確認します」
それが完了すると、今度は完全な3Dモデルをスライスしたり拡大したり、より大きくプリントします。それと同時に、モーションキャプチャソフトQualysisを使用して作業をする同僚達に完全なモデルが送信されます。それにより、彼らは記録されたモーションキャプチャのデータで馬の3Dデータを操作します。次に、Mayaというソフトウェアを使用します。この3Dモデルはモーションキャプチャのポイント上に配置されているので、モーションキャプチャのデータをスキャンデータとマージさせます。
モーションキャプチャのデータは、最終モデルの3Dスキャンデータと組み合わされます。
馬を動かします
このスウェーデンの馬はArtec Leoをよく知っています。
ほとんどの3Dスキャンプロジェクトは、オブジェクトをできるだけ元の状態に近づけようとするものですが、この近いうちに開催される展示会では、スキャンデータをクリエイティブな目的で使用するので、それとは異なります。今回使用されたこのソフトウェアの組み合わせは馬が自由に動いたり、後ろ足で立ち上がったり、走ることができる空間を現実とデジタルの世界両方で持たせてくれます。
このデータは、処理をしてからそれを動作させるか、もしくは、等身大の巨大な馬の彫刻を作成するために重ね合わされます。それは馬が後ろ足で立ちあがったり、速足で駆けたり走ったりする段階全てに対して行えます。
スキャンが行われた後、馬はフレームごとにアニメーション化され、動き始めました。
今のところ、馬のスキャンはもう終わりましたが、キエルマークさんが2022年4月のショーに向けて、作業は再び続行されます。そして彼女には、まだまだ3Dメディアが可能にさせてくれるアイデアがたくさんあります。
また別の展覧会を開催する可能性はあるのでしょうか?馬全体の3Dモデルを室内でホログラフィック・イメージとして投影するなんて、どうでしょうか。「それは試したことがないわ。でも、私は実は今まで何年もそれを検討してきたのよ」と野心的なアーティストであるキエルマークさんは言います。
ラーソン氏にとって、このプロジェクトはArtecのハードウェアとソフトウェアの最高のデモンストレーションとなりました。
「Artec Studioのアルゴリズムを用いたエンジニアリングで、しかもハードウェアを実にうまく利用した、このパワフルなコンビネーションときたらですよ?」と彼は言います。「それはもう、Artec 3Dの魔法としか言いようがありません」