3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

Artec 3Dスキャナは、新型コロナウイルスの戦争への呼び出しに答え、使命を果たします

課題:新型コロナウイルスの患者や隔離病棟で働く医師達のニーズに合わせて、病院に必要な医療品を提供する。

ソリューション:Artec Eva、Artec Space Spider、Artec Studio 15

結果: Artec 3Dスキャナとソフトウェア で作成された高精度3Dモデルは、カスタマイズされた保護マスク、ジェル枕、および携帯型の空気ろ過システムを設計するための出発点として機能しました。

ここ数カ月、新型コロナウイルスのパンデミックが医療システムと病院を圧倒し、医療崩壊の危機へ追い込んでいます。疲れ果てた医師や看護師は、利用可能な物資を日々消費しながら、可能な限り最善を尽くしています。

それと同時に、業界のリーダーたちは十分に迅速に対応することが困難な状況にいます。効果的な戦略についての決定や、新しいサプライヤーを見つけること、既存の機械の改造、そしてマスク、換気装置、空気ろ過システムの製造などには、多くの場合数週間もかかってしまいます。

しかし、多くはこの戦いのためにただじっとはしていません。世界中の何千人もの3Dプリント愛好家達が、地域社会やその他の地域の医師、看護師などの第一線の医療従事者達を支援するためのボランティア活動を呼びかけています。

そんなグループの1つであるThe Makers Groupは、5月中旬に感染レベルが世界で2番目に高いロシアにあります。このグループは、患者や医療スタッフ向けのソリューションを設計および作成することにより、全国に支援を提供し始めました。

3Dプリントのオーダーメイドでできたノズルにより、エアフィルターを特定のデザインのシュノーケリングマスクに取り付けて、医療従事者をウイルスから守るよう強化できます。

彼らが最近始めた3つの魅力的なプロジェクトを見てみましょう。

医師や医療従事者向けのシュノーケリングマスク

信頼できるマスクやその他のPPE(個人用保護具)は、危険な状況で働く医療従事者にとって絶対に必要なものです。とは言うものの、パンデミックの期間が初めの数週規模から数ヶ月の規模に拡大したため、多くの病院やクリニックでは、マスクとフェイスシールドがほとんどなくなってきています。

標準の医療用マスクは入手できたとしても、それ自体に欠点があり、たまに失敗して汚染された空気が入り込む傾向があることや、1日に何時間も着用すると不快感が出ることも大きな欠点です。

そのため、ロシアの医師達は、標準のマスクとフェイスシールドの代わりに市販のシュノーケリングマスクを使用し始めました。スポーツ用品チェーンのDecathlonは、これらのマスク10,000枚をロシアの医師達や医療従事者達に惜しみなく寄付しました。

スポーツ用品チェーンのDecathlonから寄贈された、シュノーケリングマスクの1つを開梱している様子

マスクは顔の周りにきつく、ぴったりとフィットする密封を特徴とし、ウイルス粒子が直接着用者の顔に接触するのを防いでくれます。しかし、この既製のソリューションにおける問題は、マスクの上にあるエアチューブコネクタにあります。フィルターがないのです。と言うことは、この経路を介してマスクに入る空気にウイルスが含まれてしまう可能性が十分にあることを意味します。

この脆弱性に対応するため、The Makers Groupはカスタムの3Dプリントがされたノズルを作成して、それをエアチューブコネクタに取り付け、プロ仕様のエアフィルターをマスクに結合できるようにしました。

パーフェクトフィット:黒の3Dプリントがされたノズルは、マスクをエアフィルターにしっかりと接続します

また、体格が大きめな医師達には1つのエアフィルターだけで呼吸するのが難しいことが判明した際に、2つのフィルターを取り付けることができるようにデュアルパイプソリューションが作成されました。

デュアルフィルターシステムを備えた、カスタマイズされたシュノーケリングマスクの1つ

このおかげで、マスクに入るすべての空気がろ過され、呼吸をしても安全になりました。これらのシングルフィルターノズルとダブルフィルターノズルはすでに数千人に3Dプリントされており、全国内で非常に高い需要があります。

出来たてホヤホヤ:マスクの上に取り付ける準備ができている3Dプリントされたデュアルフィルターコネクタのセット

しかし、まだマスクには1つの問題が残っていました。もともと水中で使用するように設計されていたため、マスクの下部には排水バルブが備えられているのです。これは、ダイビング中に水が入った場合にマスクから水を逃がすために設計されました。

排水バルブに強調表示がされたシュノーケリングマスク

しかし、病院の特にウイルスの脅威がある環境では、このバルブにより、感染した空気がマスクに入ってしまう可能性があります。The Maker's Groupはみんなで考え、この問題を解決するさまざまな方法を模索しました。しかし間もなく彼らは、マスクは複雑に出来ているので、 3Dスキャンだけが正しく機能してくれる基盤を与えてくれるだろうという結論が出ました。

Artec 3DのDenis Baev氏が支援を申し出ました。マスクの需要が非常に高かったため、スキャンを実行するのに最大5分しか与えられませんでした。その後、医師が長いシフトを続けるためにマスクを戻す必要があるからです。

Artec 3DのDenis Baev氏によってスキャンされたマスクの排水バルブ部分。

複雑な形状と大量の詳細を備えたオブジェクトをキャプチャするために設計されたプロのハンドヘルド3Dスキャナ であるArtec Space Spiderを使用して、Denis氏はマスク全体を高解像度3Dで1分未満でスキャンしました。マスクの半透明のプラスチックのため、スキャンの前にクリロンのマットスプレーを使用しました。

Space Spiderハンドヘルドの3Dスキャナ

スプレーを使用しても、マスクの表面はまだスキャンを複雑にしていたので、Denis氏はSpace Spiderの滅多に上げないスキャナの感度を上げました。このレベルの感度で、スキャナはマスクをすばやくキャプチャしました。

これに続いて、スキャンは Artec Studio 15 により、3分でSTLファイルとしてGeomagic Design Xにエクスポートされます。Design Xの自動メッシュからCADへの変換機能は、STLファイルを機能的なCADモデルにすばやく変換してくれました。

マスクの下部の排水栓(左)とそのCADモデル(右)を備えたSpace Spider のスキャン

このCADモデルを使用して、他のThe Makers Groupの愛好家たちは、一方向弁のマスクに完全に適合するアタッチメントを作成し、問題を解決しました。

これで、マスク内に過度の圧力が発生すると、一方向弁によって空気が逃げ、その後すぐに密閉されて、汚染された可能性のある空気が入り込むのを防ぎます。

今すぐ使用可能な状態:3Dプリントされた一方向弁のアタッチメントとマスク

現在、ロシア全土の医師は、この排水バルブのアタッチメントが毎日しっかりと装着されているシュノーケリング用の医療用マスクを着用しています。

新型コロナウイルス患者のためのジェル枕

ある医師は、肺炎のある新型コロナウイルス患者を腹臥位(「プロニング」とも呼ばれます)に配置すると、呼吸しやすくなり、機械的換気の助けにもなることをすぐに発見しました。それでも枕やベッドの上にうつぶせになると、患者はたった4〜5時間で激しい痛みを伴う床ずれを発症する可能性があります。

幸いなことに、患者が腹臥位で横たわっている間、患者の顔を快適にサポートするように設計された特別なジェル枕があります。問題は、そのような枕を最近見つけることがほとんど不可能になっていることです。たとえ少量で入手できるとしても、必死にそれらを必要とする病院の手の届かない価格です。

The Makers Groupは、CADデザインや3Dプリントを使用するなど、このようなジェル枕を作成するためにさまざまな方法を試みましたが、枕の独特な有機的で解剖学的に適合する形状と、柔らかく支えてくれる素材のため、満足のいく結果が得られませんでした。

幸いなことに、病院の患者の1人が彼らを支援するためにジェル枕を差し出してくれました。しかしそれは病院から離れることができなかったので、それを患者に戻されなければならない前にほんの2~3分だけでしたが、それで十分でした。

半透明の表面で枕をすばやく捉えるために、Denis氏は最初にシクロドデカンスプレーで枕をコーティングし、白く光沢のない仕上げにして、スキャンしやすくしました。Artec Eva は枕をわずか数秒でスキャンし、そのすべての表面と輪郭を16フレーム/秒でキャプチャしました。

Artec Evaハンドヘルド3Dスキャナでジェル枕をスキャン

Artec Studioソフトウェアを使用すると、わずか2分で、スキャンがSTLファイルに変換されました。処理のワークフローは、グローバル登録、シャープヒュージョン、小型オブジェクトフィルター 、メッシュシンプリフィケーション、そして最後の消しゴムツールで構成されていました。

次に、STLファイルは、枕のデザインについてThe Makers Groupと協力して医師に送信されました。そこから、STLファイルはCADモデルに変換され、枕を作成するための鋳型を作成するために使用されました。

ジェル枕のSTLモデル(左)とCADモデル(右)

最終的に3Dプリントされた鋳型は3つの別々の部品で構成されており、待望の結果を得るにはかなりの作業が必要でした。フィリングにいたっては、柔らかく医療グレードのシリコンを見つけることはほぼ不可能でした。多くの調査の後、Artec のゴールド・リセラーである Globatek社のGeorgy Serezhkin氏が救助に来ました。彼はジェル枕のデザイナー達に枕にふさわしい材料の供給業者を紹介しました。その材料とは、必要な形状を保持するソフトジェルで、長期的な患者に対して安全で低刺激性を提供するものです。

これですべての準備が整い、最初のテスト枕がすでに作成され、現在使用されています。できるだけ多くの患者に供給するために、生産量を増やし、枕をより広範囲に展開する計画です。

ジェル枕のフォームの原型

即席の個人用空気ろ過システム

ポータブルでアクティブな空気ろ過システムを持つことは、今日の何千人もの医師や医療専門家にとってまれな可能性です。しかしそれでもそれは非常に効果的なものです。フィルター付きの最高のマスクでさえ、特に体を良く動かし、呼吸がいつもより増して必要があるときは、1日に何時間も着用するのが難しい場合があります。

言うまでもなく、医療グレードを含むマスクは時々機能しないことが知られています。業務用エアフィルターによる抵抗の増加により、マスクの端、またはフェイスシールのいずれかで漏れが発生してしまう可能性があることが証明されています。同様に、時間の経過とともに、標準のマスクフィルターはしばしばブロックされ、汚染されてしまいます。

ポータブル空気ろ過システムは、ウイルスやバクテリアの空気を清浄し、浄化された空気を着用者に直接送ります。しかし、そのようなデバイスがローカルでもし入手できたとしても(できませんが)、それらは医療専門家の価格帯を十分に超えており、そのほとんどは自分のマスクと保護具の費用は自己負担になるでしょう。

即席の個人用空気ろ過システム

The Makers Groupがこの差し迫った必要性について知った途端に、彼らは即仕事に行きました。全国中でも最も優秀な技術者たちがいるこのグループは、余剰部品を使用する即席の空気ろ過システムを考案しました。それは驚くほど効果的で、すばやく作成して配布できるものです。

The Makers Groupが設計した即席の空気ろ過システム

プラスチック製のサンドイッチボックスに収められたシステムの中身は、掃除機のフィルター、ウイルスやバクテリアを殺すためのUVランプ、そして浄化された空気を着用者に吹き付けるためのパソコンのファンで構成されています。このデバイスの電源は、充電マウント付きの内蔵された充電式バッテリーです。

しかし、混雑し非常に忙しい病院で働く忙しい医師にとって、バッテリーボックスのサイズはかさばって扱いにくいものでした。そこで、The Makers Groupは、同じ機能を維持しながら、ボックスのサイズを小さくすることに焦点を当てて作業に戻りました。

充電式バッテリーボックスの拡大図

彼らはDenis氏にSpace Spiderで3Dモデルを作るために小さなデバイスをスキャンするように頼みました。一見、オブジェクトは非常にシンプルに見えますが、3Dスキャンの観点から見ると、それは難しいものです。充電プロングの両側に窪んだ領域がある黒いプラスチック製で、これらの内壁はキャプチャするのが大変手のかかることがわかりました。

数回の試行の後、右の内壁がキャプチャされましたが、左の内壁はまだスキャンされませんでした。これは、スキャナの視界を遮っていた充電プロングに近接しているためです。

ソリューションは果たして?Denis氏は、Artec Studio 15の正確な位置決めツールとミラーリングツールを使用して、右側の内壁を左側に簡単にコピーし、完全に所定の位置に合わせました。

数分後、スキャンは非常に正確な3Dモデルに処理されました。

これはその後、The Makers Groupに送信され、この手頃な価格でありながら非常に効果的な空気ろ過装置の継続的な開発とテストに使用されました。

今回もまた、 Artec 3Dスキャナ は現実に起こっている重要な問題を迅速かつ簡単に解決するのに役立つ貴重なツールであることが証明されました。マスクやジェル枕をスキャンする場合でも、人工呼吸器コンポーネントの最初の製造工程をデジタルでキャプチャして検査する場合でも、またその他の沢山の仕事を行う場合でも、Artec 3Dはあらゆるニーズに対応するスキャナを備えています。

(Artec Microで)ミツバチをデジタルで完全に捕獲し、その空気孔を数えることから、(Artec Rayで)エアバスA380をとあるのんびりとした午後にスキャンして、各ホイールのトレッドの深さまで正確に測定できるほどの3Dモデルを手に入れることまで、全ておまかせ下さい。オブジェクトやアプリケーションが何であれ、私たちはあなたのお力になります。

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