3Dスキャンソルーション

Artec 3D社のウクライナへの支援内容

ケンブリッジ大学の研究チーム、Artec Space Spiderを用いて古代の共同制作を解読

課題:とある考古学者チームは、最近発掘されたさまざまな陶器製容器を安全にレンダリングしたり、その形状を比較する方法を求めていました。

ソリューション:Artec Space Spider、Artec Studio

結果:REVERSEACTIONプロジェクトの一環で、無国家社会における複雑な古代技術を調査することを目的としていた考古学者チームは、コロンビアの博物館や現地で100点以上のアーティファクトをデジタルでキャプチャすることができました。そこから作成された3Dモデルは、博物館や大学の垣根を超えてさまざまな範囲での研究と保存を促進し、素晴らしい古代のアーティファクトを教室や個人のデバイスに提供します。

Artecを選ぶべき理由REVERSEACTIONプロジェクトでは、高解像度のスキャン機能と使用方法の習得が簡単なArtec Space Spiderが、複雑なジオメトリをすべて保存しながら考古学的なアーティファクトを最高の忠実度でデジタル化できる優れたツールとなりました。

博物館を実際に歩いたり、そのデジタルバージョンの仮想空間の中を歩くと、しばしば私たちは古代の考古学的アーティファクトを目にすることがあります。その際、私達はそれらを作成し、使用していた人々について深く考えるきっかけを得ることがあります。多くの献身的な専門家や科学者、キュレーター、そして保存修復師までが、これらのオブジェクトを解読するために多大な努力をしています。かつてこのプロセスは何年もかかる手間のかかる作業でしたが、現代の技術はこの作業をまったく新しいレベルに引き上げてくれました。

 

REVERSEACTIONのプロジェクトチームもまた、同様の道を歩んでいます。というのは、彼らは強力な政治的リーダーシップのない古代社会において、複雑な技術システムが維持されていた方法について調査しているのです。考古学的証拠を環境学や人類学、社会学、経営学、そして工芸と統合することによって、彼らは集団行動に対する新たな洞察を得ることを目指しています。金細工や織物、陶器などにおける考古学的発見は、人々が意欲的に大規模なプロジェクトに協力しあって取り組んでいたことを示します。そういった背景は、過去の社会がどのように組織され、統治されていたのかについて私達に考えさせます。

トップレベルの研究者が活動中

ケンブリッジ大学を拠点とし、欧州研究評議会 (ERC)から資金提供を受けているこのプロジェクトは、多様なバックグラウンドを持つ優秀な研究者チームを集結させており、そのメンバー全員がプロジェクトの使命に深くコミットしています。彼らの研究活動は多岐にわたりますが、アーティファクトのデジタル化はさまざまな段階で非常に重要な要素となります。彼らはコロンビアに由来するさまざまなアーティファクトに焦点を当て、現地で広範に作業し、様々な発見物の正確なデジタルツインを作成する任務を担いました。その発見物に含まれるのは、考古学的発掘や、現地で処理中のコレクション、そして特にこのプロジェクトの主要パートナーであるボゴタの有名な黄金博物館(Museo del Oro)の所蔵品などが挙げられます。

Cambridge and Museo del Oro collaboration

キャサリン・クレスナー (Catherine Klesner、左)&とアニェーゼ・ベンゾネッリ (Agnese Benzonelli、右)が、陶器製容器の 3Dモデルから抽出された特徴を調べている様子。写真提供:ロージー・クロフォード(Rosie Crawford)

世界的な研究の最前線に立つケンブリッジ大学は、最新の技術を用いてチームをサポートしています。Artec 3Dのゴールド認定パートナーであり、3D技術に関する豊富な経験を持つPatrick Thorn & Co.は、長年にわたり大学のコンサルタントを務めており、次世代のソリューションを導入しながら、さまざまな学術分野で研究成果を向上させるためのアドバイスを提供しています。

Artec Space Spiderは、専門家達に最も推奨されるスキャナであり、侵襲的でない方法で最も微細なジオメトリをレンダリングできるデバイスを求めるユーザーに最適です。

アーティファクトの正確なキャプチャに適切なツール

様々な大きさの台座が付いたボウルや、織物を紡ぐ際に使用される石の紡錘車、そして立体的な彫刻が施された母岩などの歴史的なオブジェクトの形状や機能を把握するために、研究者はその角や縁のすべてを記録する必要がありました。Space Spiderは、最大0.05mmの高精度と、複雑な詳細やジオメトリを非常に高精度でキャプチャする機能を備えており、理想的な製品でした。

しかし、なぜここでそのように高い精度が重要となるのでしょうか?その答えはすべて詳細から見ることができます。陶器製容器の極めて詳細な3Dモデルを作成することで、壁の厚さや曲率、そして全体的な形状の微妙な変化が明らかになりました。これは、無国家社会における洗練された技術の証となり、この容器の製造方法の絶妙な特徴を明らかにすることができます。

Cambridge and Museo del Oro collaboration

構造化光3DスキャナのArtec Space Spiderを使用して、ボゴタの黄金博物館のコレクションのオブジェクトを調査している様子。写真提供:ロージー・クロフォード

「多くのオブジェクトをスキャンし、その後その処理をすることで、現場での時間を最大限に活用することができました」と、ケンブリッジ大学の博士研究員であるケイト・クレスナー(Kate Klesner)氏は説明します。「その結果、100点以上の陶器や多数の紡錘車、そして8つの母岩が記録されました」

現場で使用されたツール(ポータブル XRFとハンドヘルド型3Dスキャナ)は、オブジェクト全体の非破壊分析を可能にし、断片的または破壊的にサンプリングされた材質からは得られないデータを提供するため、非常に重宝されました。さらに、デジタル製のポータブル顕微鏡とカメラが文書作成と分析をサポートしました。

「3Dスキャンは私にとって初めての経験でした。この種のオブジェクトのスキャン方法は学んでいたのですが、状況によっては非常に困難であると感じていました。たとえば、これらのオープンスタイルのボウルやマグカップをスキャンする場合、最も困難だったのはそれらの縁をキャプチャすることでした」とクレスナー氏は付け加えます。

挑戦から得た自信

発掘現場から出てきたばかりの貴重なアーティファクトや、博物館環境にあるアーティファクトを扱う場合には特にそうですが、考古学的なオブジェクトをキャプチャするには多くの課題を伴うものです。

しかし、このプロジェクトが進行するにつれ、彼らはそのテクノロジーを扱う上での自信を深めていき、そのスピードにもますます感動するようになりました。「陶器製容器の場合、このプロジェクトの終盤では1つのオブジェクトにつき約20分という速度でスキャンをしていました」とクレスナー氏は当時の状況を思い出しながら言います。「つまりこれにより、1日で約20点のオブジェクトを徹底的に記録し、後でそれらをきちんとつなぎ合わせる確信も持てるということです」

Cambridge and Museo del Oro collaboration

キャサリン・クレスナー氏が構造化光 3DスキャナのArtec Space Spiderを用いてボゴタの黄金博物館のコレクションからの陶器製容器をスキャンしている様子。写真提供:ロージー・クロフォード

次のステップは処理の簡素化

このプロジェクトの後の段階で、主にケンブリッジ大学で行われるデータ処理もまた、楽めるプロセスであることが判明しました。チームは、Artec Studioがスキャンの処理やモデルの作成、そしてエクスポートをする上で使いやすいことを発見したのです。さらに研究者らは、3Dモデル上の幾何学的形態測定を利用して容器の形状を評価するために、Pottery 3Dや GigaMeshなどの専用ソフトウェアを使用しました。

ケンブリッジ大学の研究助手であるロージー・クロフォード氏は、古人類学的遺産に対して同様のアプローチをとっている、同大学の古生物学研究室の技術者からこのソフトウェアの使い方を学んだことを思い出しました。チームメンバーにその使用方法を教えるにはその経験だけで十分でした。「それを学ぶのは簡単で、とにかくやってみれば一体何が最も効果的で、何がそうでないかを理解できます」とクロフォード氏は語ります。

Cambridge and Museo del Oro collaboration

ロージー・クロフォード氏が構造化光 3DスキャナのArtec Space Spiderを用いてボゴタの黄金博物館のコレクションから母岩をキャプチャしている様子。写真提供:キャサリン・クレスナー

3Dデータが無国家社会における共同制作に対する理解を深める要素に

ほとんどの考古学的研究が、階層構造や強制的な権力が存在する国家形成における社会的ダイナミクスに焦点を当てているのにに対し、REVERSEACTIONチームは、現代の政府構造が存在しない社会における自発的な協力とコラボレーションについて探求しています。

この研究が本当にユニークな点は、材質の比較と技術習得、そして知識移転の調査を開発し、時間の経過に伴う工芸の相互作用とレジリエンスを持つ生産方法に関する仮説を検証している点です。

それについての説明はまだ十分とは言えないものの、そこから結果として得られたモデルは、さまざまなオブジェクトの製造技術(成形から焼成、表面装飾まで)と寿命に関する情報の収集に役立ち、現在アーティファクトとなったものを作成し、使用した人々の技術の進歩と日常の習慣についての洞察を提供します。これらの進歩には、均一な形状や複雑なデザインの作成が含まれ、器の機能的または儀式的な使用といった日常的な慣習は、職人達の間の協力的な努力や共有された知識を示唆し、これらの古代コミュニティにおける革新とレジリエンスを支えた社会的および経済的構造を明らかにしています。

 

研究チームは陶芸技術と工芸間の相互作用の調査を継続し、技術的伝統や工芸組織、知識伝達のメカニズム、そして無国家社会における協力的相互作用の程度についての理解を深めることを目指しています。

使用法の習得が簡単な3Dスキャンで詳細を明らかに

3Dスキャンのおかげで、このチームはアーティファクトを何度も再調査することができ、それはさまざまな可能性を探るのに役立っています。そして陶器の場合、これはより長いプロセスの最初のステップにすぎません。

「私たちは3Dスキャンとそのスキャンデータを使用して、形状を評価するためのコンピューターモデリングを含む幾何学的ジオメトリの測定分析を行っています」とクロフォード氏は言います。「私たちは個々の器の中での差異や異なる器間の差異を調査しています。特にこれらの陶器がこの地域の埋葬地で発見されていることから、異なる技術レベルや複数の職人の関与を示している可能性があります。このプロセスは私たちの継続的な研究にとって不可欠です」

「3Dスキャン技術は、これらのオブジェクトがどのように作られ、その寿命までどのように使われてきたかを理解するのに極めて重要な要素です」とクレスナー氏は付け加えます。「例えば陶芸では、予想外にさまざまな装飾層を研究することを可能にし、プロジェクトに貴重な視点を加えています。その一方で、私たちの石岩や紡錘車についての研究では、それらがどのように作られ、使用され、そして廃棄されたかについての歴史を調べ、さまざまな工芸の実践における共通点を見つけ出しています」

Cambridge and Museo del Oro collaboration

アンジェラ・マリア・ルセロ・ベルナル (Angela Maria Lucero Bernal、左)とアナ・ミレーナ・メロ (Ana Milena Melo、右)が、構造化光3DスキャナのArtec Space Spiderとポータブルデジタル顕微鏡を使用して、ウニオン・デル・スール・ルミチャカ-パスト(Union del Sur Rumichaca-Pasto)道路プロジェクトの陶器容器を研究しています。写真提供:キャサリン・クレスナー。

その研究成果に大きく貢献することに加えて、アーティファクトから正確なデータを取得することは、歴史的なオブジェクトを広く利用できるようにするという、もう1つの大きな目的にも役立ちます。

「これらの多くは博物館に展示されておらず、一般社会が容易にアクセスできない考古学コレクションの一部です。これらのスキャンを公開してアクセスしやすくすることで、人々はこれらの複雑で素晴らしいオブジェクトを直接見ることができるようになります」とクレスナー氏は結論付けました。

階層ではなく、自発的な共同行動を模索することで、古いパラダイムを転換しようとするREVERSACTIONプロジェクトは真に革命的であると言えます。古代のアーティファクトやその製作方法が明らかになれば、これまでもそうであったように、協力する意欲こそが世界のほとんどの問題に対処するための鍵となるという考えも明らかになるのかもしれません。そう考えると、その答えを照らす光の一部は、Artec Space Spiderから文字通り投影されていることは、実に素晴らしいことです。

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